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自称世界一の魔術師  作者: サバ太郎
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魔術馬鹿

この学園に入学してから数日がたった。


結局俺たちがクラスリーダーになり、ベルクとは一緒に行動することが増えた。


放課後はベルクと模擬戦などをしているが、朝は各々別々に鍛錬している。


今日も朝の鍛錬を終えた後、朝食のため食堂へ向かった。


その途中の曲がり角で、どんっと誰かとぶつかった。


見ると、しりもちをついている黒髪の少女がいた。


「悪いな。大丈夫か」


少女に手を差し伸べる。


が、少女は俺の手を取らず、さっと立ち上がった。


「大丈夫です。ごめんなさい」


少女は俺のことを睨んでいるようだった。


そして少女はすぐ立ち去って行った。


まあ嫌われるのには慣れてるしな。


気を取り直して俺は食堂に向かった。







「この学園では実地訓練の一環として、月に一回学園が保有している修練山という山で魔獣討伐をすることになっている」


ホームルームでアリア先生がそう告げた。


「お前たち一年生は修練山の麓から始めることになる。まあ三年になっても山頂までたどり着けるのはほとんどいないんだがな。それと、どこまで行けたかがそのまま成績に直結する」


「この訓練ではパーティーを組んでいいことになっている。上限は五人までだ。クラスの制限はないから、他のクラスの人とパーティーを組んでもいいぞ」


「訓練は一週間後を予定している。パーティー編成について相談があったら聞きに来い」


アリア先生が出ていった後、クラスでは誰とパーティーを組むかということで盛り上がっていた。


俺は前衛だから後衛の人を探さないと、治療師を確保しないと、など皆必死である。


もちろん俺たちに声はかからないが。


「うーん、どうする?ベルクは俺とパーティー組むだろ」


ベルクが肯定したので、とりあえずは大丈夫そうだ。


「だが二人だけってのはどうなんだ。五人まで行けるんだろ」


「俺とベルクは後衛と前衛で役割が分かれてるし十分な気もするが、せっかくだし誰かパーティーに入れたいな」


ベルクの風魔術を使えば森の中でも十分立ち回れるし、そもそも獣人なのだから森は自分の庭みたいなものだろう。


俺も森での戦闘はある程度慣れているから、この二人でも問題ないだろう。


それでも他のやつと知り合える丁度いい機会だし、何人かは声をかけてみるつもりだ。


「よし、じゃあ行くか」


そう言ってベルクはのっそりと立ち上がった。


「ん?どこに行くんだよ」


「まずはDクラスから始めようぜ」


教室から出ていくベルクを、俺は追いかけた。




「じゃまするぜ」


Dクラスの人たちは、突如入ってきた大男に動揺しているようだ。


皆がうろたえる中、赤い髪の女が近づいてきた。


「あんた達誰よ。一体何の用なの」


赤い女は警戒心むき出しで話し掛けてきた。女は成熟した体をしているので、俺より年齢が上であろう。


「俺はEクラスのグレイ、こいつはベルクだ。実地訓練でのパーティーメンバーを募集している。誰かパーティーに入りたい人はいないか」


俺がそういうと赤い女がくすくすと笑い始めた。


それにつられて他の人たちも笑い始める。


「何を考えてるの。Eクラスの人とパーティーなんて組むわけないでしょ」


「じゃあ他に誰か俺たちと組みたい奴はいねーのか」


ベルクが聞くが、返ってくる反応は嘲笑だけだ。


なるほど。これがアリア先生が言っていたクラス格差か。Dクラスでこれとは、先が思いやられるな。


声をかけるベルクを赤い女が止めた。


「いい加減にしてよ。自分より弱いクラスの人とパーティー組む訳ないわ」


ここには俺たちが思うような人はいないみたいだな。


「もういい、次行くぞ」


俺がベルクを連れて部屋を出ようとすると、急にベルクが立ち止まった。


そして赤い女に向かって口を開く。


「名前はなんだ」


急に聞かれた女は驚きながらも、ちゃんと答えた。


「カレンよ」


「そうか。じゃあなカレン。気が変わったらいつでも声かけてきていいぜ」


ぽかんとするカレンをほっといて俺とベルクは教室を出た。



「お前は女に優しいんだな」


俺がそういうとベルクは笑い始めた。


「そんなことねーよ。ただ、カレンには何か感じたぜ」


「・・・そうだな」


ベルクの言う通り、カレンからは何か普通とは違うものを感じた。


が、違和感の正体はわからなかった。


まあとりあえずは大丈夫だろう。カレンはDクラスのリーダーであろうし、話す機会もまた来るはずだ。


次はCクラスか。




先ほど同様に教室に入る。


入ると、またも全員がこっちを見てきた。その中に見知った顔を見つけた。


「お、エルじゃないか」


少年に声をかけると、苦笑いをして返事をしてきた。


「お久しぶりです、グレイさん。一体どうしたんですか」


「実地訓練でパーティーを組みたいんだが、俺とこのベルクしかいなくてな。エル、俺たちのパーティーに入らないか」


そう言ってエルを勧誘していると、体格のいい男が割って入ってきた。


「ちょっと待て。お前たちは誰なんだ」


その男はいかにも剣士という格好をしていた。


剣士の疑問はもっともだ。


「俺はEクラスのリーダーだ。パーティーの勧誘に来た」


それを聞いた騎士は怒ったように声を荒げた。


「Eクラスのパーティーになんか入るわけないだろ!この訓練の成績次第で、Bクラスになれるかもしれないんだ。遊びに付き合う暇はない!」


そんな剣士を上から下まで眺めて、ベルクはうんうんと頷いている。


「じゃあ、俺と勝負しようぜ。俺が勝ったら誰引き抜いてもいいだろ」


にやにやしながらベルクがそう提案した。


「なんだと!」


剣士はベルクに詰め寄ろうとするが、ベルクの威圧感にあてられて足を止めた。


一触即発な二人を見かねたエルが割って入る。


「落ち着いてください、シオン。ここで喧嘩しても、クラスリーダーのあなたの立場が悪くなるだけですよ」


エルにそう言われた剣士、シオンというらしい、は悔しそうに顔を背けた。


相手がいなくなったベルクはつまらなそうな顔で腕を組んでいる。


どうやらエルはクラスの中心にいるらしい。


まあ、エルの意見に賛同しているのは女子生徒ばかりに見えるが。


見るからに貴族とわかるし、顔も整っているからな。女子人気が高いのだろう。


「グレイさんはなぜかEクラスですけど、実力は本物です。下手をして負けたらCクラス自体の立場も悪くなるんですよ」


なるほど。クラスのリーダーはシオンだが、発言権はエルの方があるみたいだな。


「グレイさんたちも、あまり僕のクラスを荒らさないでください」


俺たちにも責めるような視線を向けてきた。


「わかったわかった。エルはもうパーティー組んでるのか」


「はい。僕はシオン達と組んでます。彼はああ見えても、剣術に関しては一流ですからね」


そう言っていじけているシオンに目を向けた。


一流という言葉にベルクがぴくっと反応したが、そこは触れないでおこう。


「なんだ。エルたちはもう決めてたのか。誰かパーティーからあぶれた奴はいないのか」


俺がそう聞くと、エルはふるふると首を横に振った。


だめだったか。


俺たちはエルに別れを告げて、Cクラスを出た。


「しかし、ピンとくる奴はすくねえなあ」


ベルクが飽きたようにそういった。


確かにそうだ。どうにもクラスが実力を表していないように感じた。


「カレン、エル、シオンあたりは他の人より優秀そうだったな」


「そーゆーやつらはもうチームを組んでそうだな」


クラスリーダーなのにクラス中から敬遠されているは俺くらいなもんだろう。


人望がない自分の現状を嘆きながら、Bクラスを目指した。




Bクラスは殺伐としていた。


身なりのいい人が何人かいて、その人たちを中心にいくつかのグループがあるようだ。


おそらく貴族と、その利にあやかろうとするものだろう。取り巻きには愛想笑いを浮かべている人も多い。


俺たちに無反応だったので、俺は全員に聞こえるように大きな声をだした。


「俺たちはEクラスからきた。誰か俺たちとパーティーを組まないか」


俺の声は全員に聞こえたようで、時が止まったように静寂が訪れた。


その静寂を破るように一人の女の声が聞こえた。


「あなたたちとパーティーを組みたい人なんていないわよ」


そう言ったのは金髪の女だ。手には黒い扇子を持っている。


彼女の周りには四人の男がいるが、その男たちも彼女に同調するように頷いている。


彼女がクラスリーダーなのだろう。Bクラスの他の人は彼女の発言を待っているようだ。


まるで女王だな。


皆が彼女の顔色を窺っている。


彼女の周りにいる4人の男はさしずめ女王を守る騎士ってとこか。


俺が観察していると、女王が口を開く。


「あなたたちがEクラスの問題児ね。教室で大暴れしたとか、血まみれで走っていたとか、うわさは聞いているわ」


そういうと女王は冷たい笑みを浮かべた。


「なんて野蛮なのかしら。しかも平民に獣人だなんて。私のクラスだったら、真っ先に潰して差し上げたのに」


ぞわり、と悪寒が走った。


なるほど。確かにこれだけ大きい態度なのもうなずける。


なにか底知れない雰囲気を感じたが俺とベルクはその視線を真っ向から受け止めた。


この緊張感はたまらないな。


俺とベルクが獰猛な笑みを浮かべると、女王は感心したように目を見開いた。


「ふうん・・・。調子に乗るだけはあるようね」


女王の呟きに騎士たちが動揺した。


「なっ!?リーゼ様、あのような汚らわしい男たちにそんなことを言うなんて!」


進言する騎士を、女王は目線だけで封じた。


その視線を向けられた騎士は、びくっと震え顔を真っ青にしている。


彼女は少しの間悩んでいるような素振りを見せたが、やがて何か思いついたように顔を上げた。


「たしかパーティーメンバーを探しているのよね。なら彼女なんてどうかしら」


そう言ってリーゼは扇子を教室の角に向けた。


扇子に従って目を向けるとそこには黒髪の少女がいた。


「彼女はミラ。誰ともパーティーを組んでいないようだから、あなたたちにあげるわ。いや、組めないというべきかしら」


ミラと言われた少女が顔を俺の方に向けた。


ミラは俺を睨むように見てきた。


ん?この顔はどこかで見た気がするぞ。


「ああ、朝ぶつかってきたやつか」


あの不愛想な少女がBクラスだったとはな。わからないものだ。


「つーか、組めないってのはどういうことだ」


「彼女はわけありなのよ」


ベルクの問いにリーゼがうんざりしたように答えた。


確かにミラの周りには誰もいない。他の人も関わりたくないといった感じに距離を置いている。


ここまで避けるとは、いったい何があるんだろうか。


俺はミラに近づき、声をかけた。


「俺はグレイだ。俺とパーティーを組んでくれないか」


問いかけつつ少女を観察する。


睨むような目つきに黒く長い髪、右手に手袋をしているな。腰に提げている武器は刀か?


「ごめんなさい。私に関わらない方がいいわ」


彼女は顔を背けた。


「なんでだ」


俺が引き下がらなかったので、彼女は嫌そうに手袋を外した。


これは・・・。


手袋の下のミラの手は、青紫色をしていた。


表面はざらざらししていて、硬い皮膚であることがわかる。


それにミラが手袋を外した瞬間から、ミラの右手を中心にとてつもない魔力を感じるのだ。


その魔力は俺より魔力感知力の低い人でも感じれるようで、Bクラスの人たちは顔を青ざめ、ベルクは目を見開いていた。


魔障だ。


話は聞いたことがあったが、この目で見るとは。


魔障は先天性であるので、魔獣憑き、呪われた体などと言われている。


魔獣のような莫大な力を持っている代わりに制御が難しく、制御を失って暴走したなどの話がある。


俺が固まっているのを見てミラは、ため息をついた。


「・・・ほら、わかったでしょ。私には関わらない方が」


「すばらしい!すばらしいぞ!」


ミラが言い終わる前に俺はその右手を取った。


「なんという魔力だ!これ程とは、いったいどうなってるんだ!」


大声で叫びながら興奮している俺を見て、周囲の人々が完全に引いている。


「グレイは魔術馬鹿でな、魔術関係になると性格が変わるみたいなんだ」


豹変した俺に目を丸くするミラに対してベルクが苦笑いで説明した。


「お前にはこのすばらしさがわからないのか!俺がこんな力をどれだけ夢見たことか・・・」


ぐっと拳を握りしめ力説する。


「その夢の力が目の前にあるんだぞ!我慢できるわけないだろ!」


中はどうなっているのだろうか、と表面をペタペタと触りながら考える。


「あ、あのー・・・」


ミラが困ったような顔で聞いてきた。このような状況は初めてなのだろう、どうしたらいいかわからないようだった。


「放課後!放課後に修練場に来てくれ。そこでパーティーの打ち合わせをしようじゃないか!」


俺の勢いに流されるままに、ミラはこくこくと首を縦に振った。


くっくっく。打ち合わせという名の魔術実験だがな!


約束を取り付けて浮かれてる内に授業開始時刻に近づいたようだ。他のクラスが移動を開始したのが見えた。


俺のそんな様子を見ていたリーゼが、とうとう我慢できないといった感じで扇子で口元を隠し笑い始めた。


ひとしきり笑うと、目じりに涙を浮かべてベルクに話し掛けた。


「あなたの友達はどうなってるのよ。頭がおかしいとしか思えないわ。あの子をパーティーに勧めたのだって、あなたたちを帰らせる為だったのに」


「ここまでわけわからんのは俺も初めてなんだけどな」


ベルクが教室を出ようとすると、リーゼは急に真顔になった。


「あなたたち、Aクラスにも行く気でしょ?忠告してあげるわ。Aクラスに近づくのはやめときなさい」


ただならぬ雰囲気を感じたベルクは、なぜだと聞いた。


「今年のAクラスは異質よ。第一王子や宮廷騎士団長の子息、魔術の名門貴族の令嬢に国内最大の商会の息子、エルフのお姫様、他にもいるわ」


「権力者の子が狙ったように今年に集中しているの。Aクラス内はもう勝負云々の話ではない。勝負したいだけならやめた方がいいわ」


真剣な顔でリーゼが告げた。


「どうして俺にそんなこと教えてくれるんだ」


ベルクがそういうとリーゼはふっ、と表情を緩めた。


「権力に潰されるのが勿体ないと思っただけよ。あなたたちは陰謀とかにはめっきりでしょうしね。・・・それに遊び道具は多い方が楽しいでしょう?」


「そうなのか。わかった」


遊び道具と言われても、特に気を悪くしなかったのだろう。ベルクは素直に感謝を告げ教室を出ていった。


俺もそろそろ行かなくては。


「放課後来いよ、絶対だぞ!」


ミラの手を握り、念押しして俺もベルクのあとを追った。

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