第9話:結成! 極星騎士団と狂信の聖なる奇跡
# 『新約異世界リデンプション』
## 第9話:結成! 極星騎士団と狂信の聖なる奇跡
昨夜の『黒き森』における時速80キロ轢殺無双と、秘密の配送ミッション成功から一夜――。
自室の豪華なベッドで目覚めたアルデバラン(武田剛・7歳)は、天井に向かって不敵な笑みを浮かべていた。
(ふふふ……昨夜は20トンの鉄塊でオルク共を熟しすぎたトマトみてぇに挽肉にしてやったぜ。贖罪ポイントも50ゲットしたし、車体のナノ自動洗車機能も解放された。裏の仕事は順調そのものだ……!)
ノリノリでベッドから飛び起き、姿鏡の前で金髪をキリッとセットする。
「よし! この勢いに乗って、今日は村で『悪役度』をガッポリ稼いでやるか!」
『ピロンッ!』
その瞬間、頭の中に絶好のタイミングでシステム通知が響き渡った。
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【デイリーミッション:悪の組織の結成】
概要:村の子供たちを集めて『悪の秘密組織』を結成し、恐怖で支配しなさい。
報酬:贖罪ポイント+30
失敗ペナルティ:全身激痛お仕置き(感電)
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「ヒョッヒョー! 来た来た来たぁ! これだよこれ! 悪役度の加算ミッション!」
アルデバランは悪代官のように揉み手をしながら爆笑した。
「子供相手にカツアゲは39歳の良心が痛んで無理だったが、ごっこ遊びレベルの『悪の秘密組織』なら余裕だろ!
俺様が前世のノートに書き殴った伝説の厨二病組織
**《極星騎士団》**を結成して、ガキどもを子分にしてコキ使ってやるぜ!」
視界の端で、ピンク髪のギャルAIヴァイオラが『はぁ〜あ』と深々と呆れ顔を浮かべた。
『相変わらず思考がゴミッスねダサおじさん。ALL Hの最低ステータスでイキり散らして組織のボス気取りとか、痛すぎて見てらんないッスよ。
黒歴史の自家発電ッスか?』
「うるせぇ! 黙って見てろ! 今日の俺は一味違うんだよ!」
◇
10分後、村の広場。
アルデバランは広場の中央にある大きな木箱の上に駆け上がり、前世で習った怪しい空手の構え(一子相伝風)を決めながら、腹の底から叫んだ。
「お、おい! てめぇら全員、この俺様の前にひれ伏して集まりやがれぇぇえ!!」
広場で遊んでいた村の子供たちが、ゾロゾロと集まってくる。
その中には、先日アルデバランをボコボコにしたものの、直後にヴィクトルに木刀を一閃で叩き割られてトラウマを負ったガキ大将3人組の姿もあった。
アルデバランは腰に手を当て、胸を張って高らかに宣言した。
「フハハハ! よく集まったな雑魚ども! 今日からこの俺様が総帥となり、悪の秘密組織**《極星騎士団》**を結成する! てめぇらは今日から全員、俺様の足舐め奴隷(手下)だ! 毎朝俺様に挨拶し、美味しいお菓子を献上しろぉ!!」
どうだ! この完璧なイキリ悪役ムーブ!
これで子供たちが「ひぇぇ〜! おっかねぇ〜!」と怯えて逃げ出せば、恐怖支配ミッション達成で贖罪ポイント獲得――!
……となるはずだった。
「――素晴らしい考えです、お坊ちゃま!!」
静まり返った広場に、腹の底からの感動に満ちた叫びが響き渡った。
人ごみを割って前に飛び出してきたのは、黒髪をなびかせ、目をギラギラと輝かせた少年――この世界の真の主人公、『ヴィクトル』だった。
(な、なんだ……!? なんでそんなキラキラした目で俺を見てんだ……!?)
アルデバランが冷や汗を流して固まる中、ヴィクトルは熱烈な眼差しで語り始めた。
「僕には分かります! 外部からの脅威や領内の不和が漂う中、
僕たち子供がバラバラでいてはダメだ……!
だからこそ貴方はあえて自らが『悪の総帥』という泥をかぶり、
僕たちを一つにまとめるための組織《極星騎士団》を立ち上げてくださったのですね……!!」
「は……? え……?」
(どういう理論なの…?)
「先日のガキ大将たちとの件もそうです!
貴方は自分がボコボコにされてまで、彼らの歪んだ暴力を浮き彫りにし、
僕に正義の行いを示させてくれた!
全てはこの騎士団結成のための布石だったのですね……ッ!」
ヴィクトルはバッと片膝をつき、アルデバランに向かって誓いの礼をとった。
「僕、ヴィクトル! 喜んで《極星騎士団》の筆頭騎士となり、お坊ちゃま……いいえ、アルデバラン総帥の忠実な剣となりましょう!!」
ヴィクトルの熱すぎる演説を聞いた村の子供たち、そしてガキ大将たちまでもが、一斉に目を輝かせた。
(うん、ちょっと何言ってるかわかんないっすね)
アルデバランはしばらく考え、理解しようとしていたが、その間にも周囲はどんどん盛り上がり過熱して行く。
「す、すげぇ……! ヴィクトル兄ちゃんがそこまでリスペクトするなんて!」
「アルデバラン様、実はめちゃくちゃ深謀遠慮なすげぇお方だったんだ!」
「俺たちもついていきます! アルデバラン総帥!!」
「総帥! 総帥! 総帥!!」
**「「「アルデバラン総帥! 万歳!!」」」**
広場を包み込む、割れんばかりの大歓声と拍手の嵐。
アルデバランは白目を剥き、口を半開きにしたまま完全にフリーズしていた。
(ち、ちがう……! 俺はただ、ガキどもを恐怖で支配して悪役ポイントを稼ぎたかっただけだぁぁあ! なんで宗教みたいな熱い団結と友情が生まれてんだよぉおおおッ!?)
『ぷっ……くすくす……あはははははッ!!』
脳内でヴァイオラが腹を抱えて大爆笑を開始した。
『ウケるッスwwww 恐怖支配するつもりが、完全に教祖様として崇め奉られてるッスwwww 尊厳とカリスマが暴走して爆上がりしてて草不可避ッスよwww』
「笑ってねぇで助けろよヴァイオラぁぁあ! このままだと――」
『ピコンッ!【デイリーミッション判定】』
絶望するアルデバランの視界に、無情な赤文字のシステムウィンドウが踊り出た。
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【判定結果:ミッション失敗】
理由:対象(子供たち)が『畏怖・恐怖』ではなく『絶大な敬意と狂信』を抱いてしまったため。
罰ゲーム:即座に全身激痛お仕置き(超高電圧・感電)を実行します。
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「あ」
**バチバチバチバチギガガガガガガガガッッ!!**
「あぎゃああああああああああああッッ!!??(白目&絶頂顔)」
青白い凄まじい電流が全身を駆け巡り、アルデバランは髪の毛を逆立てて激しく痙攣しながら地面に倒れ伏した。
それを見たヴィクトルが、雷に打たれたような衝撃とともに叫ぶ!
「お、おおおおお……ッ!! どこからともなく天の稲妻が降り注ぎ、総帥が聖なる喜びに全身を打ち震わせていらっしゃる……!!」
ヴィクトルは涙を流しながら、天に向かって両手を広げた。
「見よ! 我々の捧げた純粋な信仰心が、天をも動かし、新たなる奇跡を呼び起こしたのだ!! 本物だ……! **救世主イエシュア**が意志を宝石に変え、**聖尊シャカリス**が天候を操りし古の神話の如く……!
やはりこのお方は、奇跡を身に宿す本物の救世主だぁぁあッ!!」
「「「本物だーーーッ!! メシア様万歳ーーーーッ!!!」」」
村の子供たち全員が感涙にむせび、倒れ伏すアルデバランに向かって崇拝の祈りを捧げ始める。
(だーかーらー! 感電お仕置きされてるだけなんだよぉぉおッ! 神話の逸話みたいに語ってんじゃねぇえええッ! あべしぃぃいいいッ……!)
口から泡を吹き、完全に卒倒する元トラック乗りのおっさん(7歳)。
その光景はまさに、聖者降臨の儀式そのものであった。
(第9話・おわり)




