五十話 はじまり
「お嬢様、緊張されていますか?」
「正直に言うと……かなりしてるわよ」
「まぁ、そうですよねぇ……こんな豪華な舞踏会に、王家から直々に招待状が届くなんて何事!?って私も思いましたから」
そう、私……シャーリン・エルフィナードは、見覚えのある王家の豪華な紋章で封がされてある、大袈裟な招待状を受け取ったのである。
国王に挨拶だなんて、それこそデビュタント以来じゃないかしら……。
「まぁ、お嬢様なら大丈夫ですよ。だってほら! 今日のドレスを身にまとったお嬢様は、まるで太陽のように明るくて美しいですもの」
「ふふ……私を太陽と呼ぶなんて、あなたくらいのものよ」
「そんなこと言って~……お嬢様が離縁されてから、縁談を捌くのすごい大変だったんですからね?」
「あら、ごめんなさい。でも、きっとそれも今日で終わりだから……」
「え?」
「じゃあ、行ってくるわね」
私は父にエスコートされながら、会場へと入場する。
そして王族の皆様の前まで歩いて挨拶をしに行くと、その中の一人の青年が立ち上がった。
この国の王太子、アレクシス・レイン・フォルティス殿下だ。
会場がざわつく。
しかし王太子殿下はそんな周りの反応など一切気にしない様子で、私に跪いてあるものを差し出してきた。
____よく見覚えのある、白いハンカチだった。
私は思わず笑いながら、殿下に話しかける。
「やっぱり、あなただったのですね……アレクシス王太子殿下。……いえ、アレク様」
「シャーリン嬢。随分お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。このハンカチを受け取っていただけますか?」
「…………はい、喜んで」
手と手が触れ合う。
会場からわぁ、と大きな歓声があがった。
父は驚き、国王陛下と王妃様は笑っている。母は、会場の隅で泣いていた。
「よろしければ、私と一曲踊ってくださらないでしょうか」
「えぇ、もちろんですわ」
会場のダンスホールの中心まで歩くと、オーケストラの生演奏が始まった。
きっと、私の幸せな日々はここから始まる。
そんな予感がしていた。




