四十話 空虚な人生
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久しぶりに、外の光を感じる。目は布で覆われているけれど、その隙間から、微かな光が差し込んでくるのだ。
私は処刑人に連れられて、処刑台があるであろう場所までゆっくりと歩く。自分の足で。
鳴りやまない野次が鼓膜を揺らす。
いつから、こうなってしまったんだろう。私の人生、どこで狂っちゃったんだろう。
私は、とある伯爵家に生まれた。一人娘だった。
両親は私を大層かわいがってくれたし、私もその愛情を疑ったことはなかった。特に父は私のことが大好きだった。あれがほしいと一言いえば、なんでも好きなものが手に入った。私は、確かにあの頃プリンセスだった。
ヴィクトルとはその頃出会った。きっと、婚約者候補だったのだと思う。でもそんなことは当時何も知らず、私は毎日ヴィクトルと遊んでいた。
ヴィクトルは私の赤い瞳を褒めてくれて、私も自身の瞳が大好きになった。
けれど、私が十歳を迎えてすぐのころ。両親が亡くなった。馬車の事故だった。
そしてその日から、私の幸せな日々は全て狂ってしまった。
私はいとこの家に養子として引き取られた。叔父は私をとても可愛がってくれた。それも、異常なほどに。
そしていつの日か、自分の子や妻より私を優先するようになった。でも当然、そんなことを叔母やいとこが許してくれるわけがなかった。私は毎日いじめられた。叔父だけが味方だった。
でも、ある日気付いた。叔父が私に優しい理由を。
私の瞳だ。私の瞳に見つめられた男性は、みんな私に夢中になって、従順になる。そのことに気付いた時、私は心の底から絶望した。
だって、父も、ヴィクトルも私のことを好きだと言っていたけれど、それは私自身を好きなのではなかったのかもしれないからだ。私の瞳が、彼らを狂わせてしまっただけだったのかもしれない。
そのことに気付いてからは、全てのことがどうでもよくなった。そしてちょうどそのころ、私は叔母に家を追い出された。
運よく街のパン屋の店主に拾ってもらえた。……いえ、これもきっと、魅了したのかもしれない。けれど、もうそんなことはどうでもよかった。
わたしはこの力を使って、生きて生きて生き抜いて、必ず貴族社会に舞い戻ってやると決意した。
そんなある日のことだった。私は、ヴィクトルと再会した。運命だと思った。だから、私はヴィクトルのことを魅了した。私に溺れさせた。
ヴィクトルは結婚をしなかった。私のことを深く愛してくれていたから。
でも、私はヴィクトルと結婚したかった。侯爵夫人の座を手に入れたかったから。
でも、今のままヴィクトルと結婚することは不可能なことくらい、私にもわかっていた。だから、私はある作戦を立てた。それが、子供のいない貴族の養子になることだった。
私はそこで、ヴィクトルから『氷の令嬢』の話を聞いた。丁度よいと思った。
誰にも愛されず、冷たくて、でも地位がある独身の伯爵令嬢。利用しない手はないと思った。私は、ヴィクトルにその女と結婚するように誘導した。彼も、周りから「結婚しろ」とうるさく言われていたのを煩わしく思っていたから。利害の一致だった。
それからすぐに、ヴィクトルはその女と結婚した。馬鹿な女だと思った。騙されて、何も知らずに生きている。どうせ殺されるのにと。
でも、馬鹿な女はどうやら私だったみたい。
「あーあ、つまんない人生だったなぁ」
次の瞬間、ギロチンの刃が降ってくる音が聴こえた。
私の……キャロラインの人生は、こうして、幕を閉じた。
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