三十四話 突撃
イザベラ様と、父のおかげでメルローズ男爵の不正を暴くことができた今。
私は、メルローズ男爵邸に一人で来ている。無謀かもしれないけれど、きっとサラ達にバレたら止められてしまうから。
それに、モタモタなんてしていられない。私はメルローズ男爵が逮捕される前に、キャロラインの話を聞き出さなければならないのだから。
書状を送ることもせず、いきなり訪問してしまったから、門前払いされることも覚悟の上だったけれど……。
メルローズ男爵は、客人がクラウゼン侯爵夫人である私だとわかった途端、底知れない笑みを浮かべて私を屋敷へと招き入れた。
それから応接室に通されて、今はメルローズ男爵と二人きりで対峙している。
「それで……美しい貴婦人、一体本日は何の御用ですかな?」
下卑た視線で、私の全身を舐め回す。
……気持ちが悪い。
「……何の用でしたら、あなたは納得してくださるの?」
「そうですな、たまには侯爵以外の男に抱かれたい……なんてご要望でしたら、喜んでお受けいたしますよ。もちろん、侯爵には内緒で……」
あぁ、吐き気がするわ。キャロラインさんは、本当にこんな男の養子になろうとしているの?
もう、本題に入ろう。付き合っていられない。
「単刀直入にお聞きします。あなたは、キャロラインという平民の女性をご存知ですか?」
「……キャロライン? いいえ、そんな女性は我が家では取り扱っておりませんが……」
「……そうですか」
やはり今世では、キャロラインはまだメルローズ男爵と接触していない。それはきっと、あの舞踏会で夫が話を切り上げたからだわ。
それなら、焦る必要はなかったのかも知れな____待って、今この男は、何といったの?
「……取り扱って……いないだなんて……どういうことですか? まるで、商品みたいな……」
私が震える声で訊ねると、メルローズ男爵は二チャリと笑いながら、顎髭を撫でた。
「おやおや、てっきり一人でこの屋敷に来たものですから、あなたも商品が目当てなのかと思いましたが……違ったようですな?」
「商品!? それってまさか____」
「衛兵! この女を取り押さえろ!」
私がまずいと思った瞬間。外で待機していたらしい兵士達が一斉に部屋に侵入してきて、私を床に押し潰した。
「っ……あなた、まさか……」
「えぇ、そうですよ。我が男爵家では裏で人身売買を行っておりましてね……これが中々好評で、私はここまで成り上がることが出来たのです」
「なぜ、それを私に言うのっ……!?」
私が必死にそう問いかけると、メルローズ男爵は不気味な笑みを浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。
「簡単な話です。あなたも今から『商品』になるからですよ。ふふ、美しい侯爵夫人だなんて、高値で売れそうだ……!!」
「う、ぐっ……!」
兵士達に髪の毛を掴まれ、無理やり担がれる、そして、どこかへ連れて行かれると確信した、その時だった。
____バン!
「その男を捕えよ!!!」
勢いよく応接室の扉が開き、凛とした男性の声が部屋中に響き渡ったのである。




