三十三話 家族
「これでよし……と」
イザベラ様とのお茶会を終えた私は、早速メルローズ男爵の横領の証拠を掴むため、父への手紙を書いた。
内容は、エルフィナード伯爵家とも関わりがあるメルローズ男爵に横領の疑惑があること。そのため、帳簿を確認して欲しいという依頼。
そしてこのことには、ヴァイス公爵家も協力してくださるということも。
あとは……連絡を取るのが久しぶりになってしまったうえ、その連絡がこんなお願いで申し訳ないと綴った。
最後に、身体に気をつけてほしいこと、私は強く生きているということも添えて……。
「……私って、親不孝者かしら」
一度目の人生では、行き遅れてやっと結婚したと思ったら、たった一年で夫に殺されて……。
二度目の人生では、両親にろくに連絡も寄越さず、白い結婚を続けている。
きっと、私の幸せを誰よりも願ってくれているのに、私は離縁しようとしているなんて……とてもじゃないけど、今は言えない。
でもきっと、全てが終わったあと……両親に事情を打ち明けたら、ゆるして、くれるかしら。
……「辛かったわね」と、抱きしめてくれるのかしら。
ダメね、感傷に浸るのはまだ早い。
とりあえず今は、メルローズ男爵の横領の証拠を掴まないと……。
「父が、私の言葉を信じてくれますように……」
そんな願いを込めて、私は書状を送ったのだった。
それから、十日程度経った頃だろうか。
エルフィナード伯爵家から、私宛に一通の手紙が届いた。
その内容は、私の書状を見た父がすぐに調査に動いてくれたおかげで、無事メルローズ男爵の横領の証拠を掴むことが出来たこと。
そして、その証拠をヴァイス公爵家に送ったこと。
それから、手紙の後半……いえ、半分以上は、私の身を案じるものだった。
「楽しく過ごせているか」
「友人はできたか」
「なにか辛いことはないか」
「いつでも会いに来ていい」
「幸せになれているか」
そんな言葉が、たくさん並んでいた。
____ごめんなさい、お父様。私、今ちっとも幸せではないの。
夫は不倫しているし、使用人に敵が混じっているし、子供だってできる気配なんてない。
でもね、そんな中でもいいことはちゃんとあった。
私、初めて友人ができたの。ヴァイス公爵夫人のイザベラ様よ、私から声をかけたの。すごいでしょう?
それに、笑えるようになったし、社交の場でも話せるようになった。
あと、侍女のサラや、護衛騎士のアントニーの掛け合いはいつも面白いのよ。
そして、そのことを教えてくれた方がいるの。アレク様といって、王都で私を助けてくれた、すごい方なのよ。
伝えたいことが沢山ある。
でも、今はまだ言えない。きっと心配をかけてしまうから。
けれど、でも、全てが終わったその時は、きっと会いに行くから。
「……それまで、こんな私をゆるしてね」
握りしめていた手紙は、いつの間にか私の涙で文字が滲んでいた。




