表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/61

三十二話 お茶会、再び

 

「誘っていただけて、嬉しいわ!」

「いえ、そんな……! 私こそ、自分からお誘いすると申し出ておいて……こんなに遅くなってしまい、申し訳ありません」

「ふふ、でもこうして誘ってくれたじゃない。だからね、いいのよ」


 そういって、イザベラ様は優雅な所作でカップを手に取ってから、ゆっくりと紅茶を口に含んだ。




 ____今日は、イザベラ様との二度目のお茶会だ。

「今度は私から誘う」という約束を、ようやく果たすことができた。随分、時間がかかってしまったけれど……。


 イザベラ様はカップをソーサラーに置いて、内緒話でもするように小さな声で語りかけた。


「本当はね? 私、嫌われちゃったかしら〜って、ちょっと心配してたの」

「そんな! 私はイザベラ様に、すごく感謝しているんです。最近はちょっと……色々ありすぎて、ご連絡ができていませんでしたが……」

「色々っていうのは……クラウゼン侯爵のこと?」

「……はい、そうです」


 イザベラ様が眉間に皺を寄せる。それから更に声を潜めて、私に耳打ちした。


「……まさかまだ、夜の営みがないの?」

「ありませんね」

「信じられない、こんなに綺麗な女性を目の前にして、何もしないなんて……」

「仕方ないです。実際、夫には本当に平民の愛人がいるようですから」

「まぁ……!!」


 イザベラ様が絶句する。そういう反応になるわよね。貴婦人の間の噂話が、まさか事実だなんて思っていなかったでしょうし。


「ですから、今は……実は、離縁に向けて動いています。こんなこと、イザベラ様にしか話せませんけれど……」

「……随分、思い切るのね」

「不貞されて黙っていられるほど、私は殊勝な妻じゃなかったみたいですわ」


 イザベラ様は「確かに、私も主人に浮気されたら許せなくなっちゃうわ」と悲しげに俯いた。

 あぁ、あなたにそんな顔をさせたいわけじゃなかったのに。



 これ以上イザベラ様を悲しませるのは、なんだか申し訳ない。早速だけど、本題に入らせてもらおう。


「イザベラ様は、メルローズ男爵をご存知ですか?」

「……メルローズ男爵と、何かあったの?」

「いえ……まぁ、なかったといえば嘘となります」

「そう…………」


 イザベラ様は険しい顔つきになって黙ってしまった。が、それから少しして、「あなたにだけ教えるわね」と小さな声で呟いた。


「実は……主人がね、『メルローズ男爵の動向が怪しい』と話していて……というのも、横領の疑いがあるみたいなの」

「横領……ですか」

「えぇ……でも、メルローズ男爵は中々用心深い方のようで、上手く接触ができなくて困っているのよ」

「それでしたら、私の実家に頼るのが良いかもしれません。父はメルローズ男爵と事業で関わりがあるようでしたから」


 私がそう言うと、イザベラ様はパッと目を見開いた。


「本当……!? それなら、私の家も力を貸すから……メルローズ男爵について、調査をお願いできないかしら? 証拠が集まれば、ヴァイス公爵家から王家に報告させていただくわ」

「それは、私にとってもありがたい話です。父に急いで書状を送りますね。なにかわかり次第、すぐに連絡します」

「助かるわ、ありがとう…………。と、まぁ、難しい話はここまでにして……この後は、楽しいお茶会の時間にしましょうか」

「ふふ、そうですね、そういたしましょう」



 ____こうして私は、メルローズ男爵について大きく情報を得ることが出来たのだった。


 一歩ずつ着実に、離縁へ近付いているのがわかる。



 ……強い女性になれるよう、頑張らなくちゃ、ね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ