表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/61

三十一話 複雑

 

 *****


 私は何をやっていたのかしら、とふと疑問に思った。


 いくらあんな顔をされたからって、あんなに親切に探してあげる必要なんてなかったのかもしれない。だって私は、あの男に殺されたんだもの。

 しかも香水の香りから察するに、夫は私が必死になって探している間、愛人に会いに行っていたみたいだし……本当に、馬鹿らしくなってしまう。


 それでも、本当に困っている人を目の前で見かけたら、つい放っておけなくなるのが人間というものだと思うのよ。それが、過去に愛した人間ならなおさらね。


 しかも見つけた後で渡したら、「ありがとう、親の形見なんだ」……なんて言われてしまったし……。そんな大事なことは一番最初に言いなさいよと、正直思ってしまった。


 私が夫を再び愛することはない。けれども……。両親が亡くなっていたのは知っていたけど、いつ亡くなったのか、なぜ亡くなったのか……それを聞いたのも、一度目の人生を含めて昨日が初めてだった。


 まさか、十代で両親を馬車の事故で亡くしていたなんて、初めて知った。

 そういえば、アレク様によると……私は一度目の人生で、馬車の事故で亡くなったことになっていたのだっけ。


 今思えば、両親と重ねられたのかもしれないわね。そう思うと、夫も愛に飢えていたのかもしれない、私と同じで……。


「はぁ……」


 これ以上は、不毛ね。起きてしまったことは変えられない。覆らない。私が夫を好きになることは、二度とない。

 それでも……やっぱり、夫に歩み寄ることは、できたのかもしれない。


「……アレク様に、お会いしたいわ」


 こんな時、浮かんでしまうのは顔も知らない彼のこと。


 ねぇ、アレク様。今の私を見たら、あなたは私を笑うのかしらね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ