二十四話 返事
【アレク様へ
シャーリンです。お返事をしてくださって、ありがとうございます。
私はあなたの正体は聞きません。きっとあなたには、私に正体を明かせないほど尊いお方なのでしょう。
ですが、もしできるなら、あなたにお会いしたいのです。そして、お礼が言いたいと思います。
時を巻き戻してくださって、どうもありがとうございますと、どうか直接言わせてください。
そして、一度目の人生で……私が亡くなった後、私の死の真相を暴いてくださったこと、嬉しく思います。私なんて、誰にも気にされていないのだと……そう思っていましたから。
あなたの本のおかげで、私は夫の愛人の名前を知ることができました。そして、二人の計画についても……。
あとは自分の力で、どうにかかんばってみようと思います。
お返事、お待ちしております。
追伸.もう怪我は治りましたので、ハンカチはお返しいたします。このハンカチは前の人生で私があなたに渡したものですから、あなたが持っていてくださるとうれしいです。お心遣いいただきありがとうございます】
「こんな感じかしら……」
私は紙を四つ折りにして、ハンカチの中にくるんだ。そして彼と同じように、本にハンカチを挟む。
……読んでくれるかしら。いえ、きっと読んでくれるわよね。
「行きましょうか」
「もうお帰りになるのですか?」
「えぇ、目的は果たせたから……」
馬車に乗り込んで、窓の外を見る。
昨日の夜もこんな風に、空を見上げて帰った。
____メルローズ男爵、嫌な感じはしたけれど……まさか、私の死因に関係があったなんて。
あの本には、「キャロラインは男爵の養子になった」と書いかれていた。恐らく、その男爵というのがメルローズ男爵なのだろう。
だとしたら、昨日メルローズ男爵に話しかけられた瞬間の夫の反応にも納得がいく。キャロラインを養子にするための大事なコマですものね。
前の人生では見たことがなかったから、私がいないときに接触していたのでしょう。けれど、今の人生では私の評判が変わったみたいだから……あの下卑た視線を思い出す限りは、私を狙ってきていたわね。
けれど、だとしたら不自然なのは夫の対応だ。メルローズ男爵は、キャロラインと結婚するための重要な存在のはず。
それなのに、あんな風に私を……庇うような真似をして、男爵を蔑ろにするなんてどういうつもり?
____もしかして、私が行動を変えたことで……少しずつ何かがズレ始めてきている?
「……悪い方向に変わっていなければいいのだけれど」
そんなことを考えながら、私はアレク様からいただいたメモを大事に握りしめるのだった。




