二話 幸せな結婚式
その日の夜。私が求婚されたことを知った両親は、それはそれは喜んでくれた。
「ようやくあなたの魅力をわかってくれる人と出会えたのね」
「それもあのクラウゼン侯爵だなんて! やっぱりお前は、私たちの自慢の娘だよ」
そう言いながら涙を流す両親を見て、私は心底安心した。
よかった、求婚を受け入れるという私の判断は間違っていなかったのだわ、と。
それからはあっという間だった。
顔合わせを行い、書状を送りあい、正式に婚約を果たして……
気付けば、結婚式の当日になっていた。
「緊張なされていますか?」
控え室で侍女に問いかけられて、私はいつも通りの冷たい表情で返す。
「えぇ、少し……」
「大丈夫ですよ。クラウゼン侯爵はとてもお優しく素晴らしい方だと評判ですもの。きっと、シャーリンお嬢様のことも幸せにしてくださると思いますよ」
「そう、よね……こんな私と結婚してくれる方なんだもの」
「お嬢様ったら、またそんな風に卑下なさって……。そろそろ入場のお時間ですよ、いってらっしゃいませ」
「ありがとう、いってくるわ」
まさか私にこんな日が訪れるなんて、思ってもみなかった。
涙目の父と腕を組んで、会場に入場する。ウェディングドレスはこんなに重いのに、バージンロードを一歩ずつ歩くたび、心が軽くなる気がした。
そして、先に待ってくれていたクラウゼン侯爵……いいえ、ヴィクトル様と目が合う。彼の優しい微笑みで、心の中の氷が解けていく。
父から離れて、ヴィクトル様に腕を絡ませる。
祭壇の前に着いた私たちに、神父が問いかけた。
「汝、ヴィクトル・クラウゼンはシャーリン・エルフィナードを妻とし、神の教えに従い、死がふたりを分かつまで共に生きることを誓いますか?」
「誓おう。どんな過酷な運命が待っていようとも、私は生涯シャーリンを愛し続ける」
「汝、シャーリン・エルフィナードはヴィクトル・クラウゼンを夫とし、病めると時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、愛し敬い、慈しむことを誓いますか?」
「……はい、誓います」
わぁ、と会場に拍手と歓声が沸き起こる。
今から私は結婚する。
____私のことを愛してくれる男性と。
誓いのキスは、ドキドキしてあまり覚えていない。
けれどもこの瞬間、私はシャーリン・クラウゼンになった。




