表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
跡取りになれなかった公爵嫡男は、前世の夢だった“自由な旅”を選ぶ  作者: みのり
二章 海風の街

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/46

幕間 また会うその時まで(セレナ公爵令嬢視点)

 騒がしい人たちが急にいなくなると、こんなにも静かなものなのですわね。

 つい先ほどまで賑やかだったカナルア公爵邸の前庭は、今では潮風の音だけが静かに響いていた。

 レオルド様たちは転移魔法で王都へ戻られた。

 本当に一瞬でしたわね。

 最後まで慌ただしい方々でした。


「行ってしまわれたか。数十年に一度生まれるランハード公爵家の秘宝は」


 隣でお父様――現カナルア公爵であるアルス・カナルアが、どこか寂しそうに呟く。


「秘宝、ですか」


「ああ。聞いているだろう?」


 もちろんですわ。

 ランハード公爵家には、数十年から数百年に一度。

 魔眼、空間魔法、テイム、召喚魔法。

 その四つ全てを持って生まれる者が現れると言われています。

 そして今回は、レオルド様がその存在。

 前回現れたのは、彼の大叔父にあたる方だったとか。

 その方もまた、レオルド様と同じように各地を旅し、多くの従魔と共に世界を巡ったと伝えられています。

 その人物が訪れ、手助けをした土地は豊かになった。

 逆に、悪意を向けた土地は衰退したとも。

 まるで神話のような話ですが、実際にランハード公爵領は他領と比べて異常なほど安定しています。

 近年、各地では干ばつや洪水、魔物被害など様々な災害が起きています。

 ですがランハード公爵領では大きな災害はほとんど起きていない。

 民も飢えず、領地も豊か。

 それは、あの四つの適正魔法を持つ者が定期的に現れているからではないか――そう考える貴族も少なくありません。


「だからこそ、鑑定の儀で四つの適正が確認された時、ランハード公爵家に連なる家々は総出で彼を守る」


「ええ。お聞きしておりますわ」


 従魔となった魔獣たちもまた異常でした。

 アルヴェルグの希少種。

 伝説級魔獣ヴェルノクス。

 蒼海獣レヴィアンシール。

 海の主ノクティルカ。


 王国騎士団でも単独討伐が困難と言われる存在ばかり。

 そんな魔獣たちに慕われている時点で、レオルド様がただの公爵家子息ではないことくらい誰にでも分かります。

 だからでしょう。

 彼の能力を知る者たちは、彼をこう呼ぶ。


《ランハード公爵家の秘宝》


 民を守り、繁栄をもたらす守護神。

 その呼び名は決して大袈裟ではないのでしょう。


「彼らがこの街を訪れたのも、神のお導きだったのかもしれないな」


「そうかもしれませんね」


 もし彼らが来ていなければ。

 密輸組織《黒蛇》の存在も。

 海へ流されていた麻薬も。

 暴走させられた海の主も。

 全て手遅れになっていた可能性があります。

 港は壊滅し、多くの死者が出ていたかもしれない。

 そう思うと、自然と背筋が冷えました。


「どのくらいで再び旅立つのかは分かりませんが……もう一度お会いしたいものですわ」


「ああ。私もランハード公爵には礼を言わねばならんな」


「そうですわ。お父様にはまだ紹介しておりませんでしたね」


 少し後ろへ振り返る。


「ラナ」


「は、はいっ!」


 緊張した様子でラナが駆け寄ってきた。


「こちら、私の父であるアルス・カナルアですわ」


「ラ、ラナと言います! 以後、お見知り置きを!」


 まだ慣れないながらも、一生懸命淑女の礼をする。

 覚えたばかりなので少しぎこちないですが、とても可愛らしいですわね。

 お父様も目を細めていました。


「彼女が、彼らの?」


「ええ。孤児のようで、保護したそうですわ」


「なるほど」


 お父様は優しく頷く。


「ラナと言ったね。これから色々大変だろうが頑張りなさい」


「は、はい!」


「君を保護した彼らが驚くくらい立派になるといい」


「頑張ります!」


 ラナの尻尾が嬉しそうに揺れている。

 本当に分かりやすい子ですわね。


「さて、私は戻るとしよう。密輸船に乗っていた者たちの取り調べもあるのでな」


 そう言い残し、お父様は護衛を連れて収容所の方へ向かわれた。

 捕らえた者たちからは、まだ多くの情報を引き出さねばなりません。

《黒蛇》の支部。

 関与している貴族。

 転移魔道具の入手経路。

 問題は山積みです。

 ですが、少なくとも港街最大の危機は去った。

 それだけでも十分すぎる成果でしょう。

 私は隣に立つラナを見る。

 この子もまた、不思議な縁で彼らと出会った。

 レオルド様たちがわざわざ保護したのです。

 きっと何か特別なものを持っているのでしょう。


 二年後。

 ラナが鑑定の儀を受ける頃には、何か分かるかもしれませんね。


「ラナ」


「はい!」


「次に彼らと会った時、がっかりされないよう励みましょう」


「はい! お兄さんたちが驚くくらい頑張ります!」


 元気よく返事をするラナを見て、自然と笑みが零れる。

 私も負けていられませんわね。

 次に彼らと再会した時。

 少しでもカナルア公爵家次期当主として相応しい姿でいたい。

 知識も。

 威厳も。

 覚悟も。

 今よりもっと身につけておかなければ。

 潮風が静かに吹き抜ける。

 視線の先には、青く広がる海。

 あの人たちは、今頃王都へ着いた頃でしょうか。


「……またお会いしましょう。レオルド様」


 いつになるかは分かりません。

 ですが、その日を楽しみにしておりますわ。

読んでいただきありがとうございます!

面白いと思ったら⭐︎を押していただけたら投稿の励みになります☆彡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ