第15話 旅は続く
俺たちはマッチョなお兄さんに連れられ、冒険者ギルドの奥へとやって来ていた。
通されたのは、“ギルド長室”と書かれた重厚な扉の前。
……いや、何で新人冒険者の俺たちがギルド長室なんて場所に呼ばれるんだ?
嫌な予感しかしない。
「入るぞ」
マッチョなお兄さんは軽くノックすると、そのまま扉を開けた。
部屋の中には、大きな机に座る四十代前半くらいの男性がいた。
短く整えられた髪に、頬には古傷。
いかにも歴戦の冒険者という雰囲気だが、不思議と威圧感より頼もしさを感じる。
俗に言う“イケオジ”ってやつだ。
「その坊主らどうした? 何か問題でも起こしたか、副ギルド長」
……え?
今、副ギルド長って言った?
俺は思わず隣のロベルトと顔を見合わせる。
このマッチョなお兄さん、副ギルド長だったのか。
そりゃ受付嬢さん達からの信頼も厚いわけだ。
「問題というか、こっちの従魔契約してるレオルドなんですが……どうやらテイムと召喚魔法、その両方を持っているようで」
「何?」
ギルド長の目がわずかに見開かれる。
「そいつはまた……何年振りだ?」
「五十年振りくらいかと」
そんなに珍しいのか?
俺は首を傾げながら口を開く。
「あのー……テイムと召喚魔法を両方持ってると、何かまずいんですか?」
「まずいというか、超レアだ」
ギルド長は腕を組みながら俺を見る。
「お前、他にも魔眼と空間魔法持ってるだろ?」
「え? 何で分かったんですか? 一応、適性はありますけど」
するとギルド長は深いため息を吐いた。
「なるほどな。やっぱりか」
そう呟くと、“超レア”の理由を説明してくれた。
何でも――魔眼、空間、テイム、召喚。
この四つの適性魔法を同時に持つ者は、数十年から数百年に一度しか現れないらしい。
しかも、その人物が訪れた土地には特殊な影響が出るという。
悪い印象を持てば不作。
良い印象を持てば豊作。
その影響は、次に同じ適性を持つ者が現れるまで続くらしい。
……いや、待て。
「それ、不作になった土地って滅びたりしません?」
俺が恐る恐る聞くと、ギルド長は肩を竦めた。
「まあ、不作だった場合の対策はどの国でも用意してる。不毛の大地になるほどじゃねぇよ。ちょっと領主や国の上層部の懐事情が寂しくなるくらいだ」
「……そうですか」
俺は微妙な表情で頷いた。
いやでも、絶対ちょっとじゃ済まないよな?
というか、俺が嫌な印象を持っただけで不作になるとか責任重大すぎる。
「因みにお前、ランハード公爵家の子どもだろ?」
「あれ? 俺、家名まで名乗りましたっけ?」
「顔が現当主にそっくりだ。一度会ったことがある」
ギルド長は懐かしそうに笑う。
「それと、その四つの適性魔法は何故かランハード公爵家の血を引く者にしか現れない」
「へぇー……不思議ですね」
本当に不思議だ。
父上も詳しく知らなかったし、公爵家の書庫にも資料はほとんどなかった。
「理由が知りたきゃ自分で調べな。俺は興味ねぇ」
ギルド長はそこで話を切ると、椅子にもたれかかった。
「で、一応決まりがあってな」
「決まり?」
「ああ。四つの適性魔法を持つ奴が現れたら、高難度依頼を受けてもらうことになってる」
「えぇ……?」
思わず変な声が漏れる。
「俺たち、最近登録したばっかの新人ですよ?」
「新人って言ってもなぁ」
ギルド長は呆れたように笑った。
「お前、契約してる魔獣二体もどうせ希少種とか伝説級なんだろ?」
「…………」
否定できない。
ルナはアルヴェルグの希少種。
そしてノアは、伝説上の魔獣とも呼ばれているヴェルノクス。
まだ幼体だから実力は未知数だけど、普通の魔獣より遥かに強いのは間違いない。
「まあ、強さはこれから検証ですけど……普通に生活してたらまず見ない魔獣ですね」
「因みに種族は?」
「アルヴェルグの希少種とヴェルノクスです」
その瞬間、ギルド長と副ギルド長が同時に黙った。
そして数秒後。
「……はぁ」
ギルド長が頭を抱える。
「見かけたら幸運ってレベルの希少種と、存在してるかも怪しい伝説級か……」
呆れ半分、諦め半分って感じの声だった。
「じゃあ行く先々のギルドで、手が付けられない依頼を受けろ。その二体がいればどうにかなる依頼も多いだろ」
「……はい」
圧が凄すぎて断れなかった。
「因みにそっちの坊主は?」
ギルド長が今度はロベルトを見る。
「隠してるスキルとかないのか?」
「えー、俺は身体強化しか持ってないですよ。レオルドと一緒にしないでください」
さらっと酷いことを言われた気がする。
「そうか」
ギルド長は苦笑すると、ふと思い出したように口を開いた。
「そういや王都でギルドカード作った時、面倒事に巻き込まれそうだったんだろ? ランハード公爵には伝えたのか?」
「ああ。それなら門番に父上宛の手紙を託しました。届いていれば調べてる最中だと思います」
「公爵家が動くなら、そのうち終わるだろ」
どこかの子爵家か伯爵家が絡んでるのか知らないが、公爵家が本気で動けば大抵の問題は片付く。
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