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跡取りになれなかった公爵嫡男は、前世の夢だった“自由な旅”を選ぶ  作者: みのり
一章 目覚めと旅立ち

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第13話 初仕事

 翌朝、朝食を済ませた俺たちは再び街道を歩き、昼少し前にカナルア公爵領最初の街へ到着した。


 石造りの門は王都ほど大きくないが、人の出入りは多い。

 商人らしき馬車や旅人の姿も目立つ。


 門番へ昨日王都で発行されたギルドカードを見せると、案の定困ったような顔をされた。


「あー、これはこの街じゃ使えねぇな」


「やっぱりですか……」


「街に入るなら一人銀貨三枚だ」


 地味に痛い出費だ。


 ロベルトも少し嫌そうな顔をしている。


「高ぇなぁ」


「まあ、不正登録扱いだからしょうがないよ」


 ちなみにルナは金を取られなかった。

 その代わり、街中を歩かせるなら従魔用の首輪をつけるよう言われ、簡素な革製の首輪を渡された。


 だが――。


『……やだ』


 門を通ってからずっとルナが不機嫌だった。

 耳は伏せられ、尻尾も下がっている。


「そんなに嫌なの?」


『なんか変』


 どうやらお気に召さないらしい。


 門番に聞くと、冒険者ギルドで別の従魔用首輪も売っているとのことだった。


 気に入る物があればいいのだが。


 街へ入った俺たちは、そのまま冒険者ギルドへ向かった。

 王都のギルドより少し小さいが、中はかなり賑わっている。

 依頼掲示板の前には冒険者たちが集まり、酒を飲んでいる者までいた。


 俺は軽く周囲を見渡し、信頼度が最も高い受付へ向かう。

 信頼度九十。

 しかも筋骨隆々のマッチョなお兄さんだった。


「すみません、ちょっとお聞きしたいんですが」


「ん? どうした坊主ども」


 坊主ども。

 いや、年齢的には確かにそうなのかもしれないけど。


(もう少し言い方ないかな……)


 内心で思いつつ、苦笑いする。


「王都で作ったギルドカード、この街では使えないみたいで。切り替えってできますか?」


「んー?」


 男はカードを受け取り、数秒後に顔をしかめた。


「あー……お前ら、よく無事でここまで来れたな」


「え?」


「これ持ってるやつ、大体途中で消えるぞ」


 さらっと怖いことを言われた。

 つまり、人身売買の被害者ということだろう。

 俺は苦笑いを浮かべる。


「なんか受付のお姉さん信用できないなって思って、登録したその日に王都を出たんですよ」


「勘がいいな」


 男は感心したように笑う。


「その勘、大事にしろ。ギルド上層部も調べてるらしいが、後ろに貴族がいるとかでな。なかなか尻尾を掴めねぇらしい」


 やはり貴族絡みか。

 どこの貴族かは知らないが、父上へ手紙は送ってある。

 今頃、ランハード公爵家でも動いているだろう。


「切り替えはすぐできる。ちょっと待ってろ」


「お願いします」


 男が奥へ行こうとしたところで、俺はルナを抱き上げた。


「あと、この子の首輪も見たいんですが」


「従魔用か?」


「はい。門でもらったやつが気に入らないみたいで」


『変なの』


 ルナが不満そうに耳を動かす。


「あー、なるほどな」


 ルナの声は聞こえていないだろうが耳と尻尾で分かるのだろう。受付の男は笑いながらカウンター下から三種類の首輪を取り出した。


「今あるのはこれだ」


 黒革。

 青革。

 そして――。


 ピンクベージュっぽい色合いに、白いハートと青い星型チャームのついた可愛らしい首輪。


「ルナ、どれがいい?」


『……真ん中』


 即答だった。


 よかった。

 気に入ったらしい。

 ……それにしても、可愛い趣味してるな。

 そういえば、まだルナがオスかメスか聞いていなかった。

 後で聞いてみよう。


「この真ん中のでお願いします」


「おう。可愛いの選んだな。銀貨二枚だ」


「はい」


 銀貨を渡すと、男は新しいギルドカードも返してくれた。


「これが正式なやつだ。無くすなよ」


「ありがとうございます」


「依頼は受けてくか?」


「採取系で何かあります? 明日か明後日には次の街へ移動したくて」


「なら解熱草と傷病草だな。数もそこまで多くねぇ」


「それでお願いします」


 依頼書を受け取り、ついでに宿の場所も聞く。


「この街初めてなんですけど、おすすめの宿あります?」


「従魔連れならウォレス亭だな。ここから十分くらい。飯もうまいぞ」


「ありがとうございます」


 ギルドを出て十分ほど歩くと、狼とベッドの絵が描かれた看板を見つけた。


 その下には“ウォレス亭”の文字。


「ここかな」


 扉を開けると、中では女将らしき女性が帳簿を書いていた。


「いらっしゃい」


「一泊お願いできますか?」


「二人部屋かい?」


「はい。それと、この子も一緒で」


 ルナを見せると、女将は目を丸くする。


「綺麗な魔獣だねぇ。大丈夫だよ」


 そう言いながら料金を計算する。


「一泊二人で銀貨六枚。魔獣込みで七枚だよ」


「はい」


「食事は食堂か部屋、どっちにする?」


「部屋でお願いします」


 俺たちだけ先に食べるとルナが絶対拗ねる。

 それはもう目に見えていた。


 部屋へ盗られても困らない荷物を置いたあと、俺たちは依頼達成のため再び街の外へ向かった。


 解熱草と傷病草。

 普通の冒険者なら数時間から半日かかる採取依頼らしい。


 だが――。


「解熱草、あった」


「またか!?」


 魔眼で場所も品質も丸分かりだった。

 さらに空間魔法のおかげで荷物にもならない。


 結果。

 依頼分の薬草は一時間ほどで集まり終わった。


「レオルドの魔眼、マジで便利すぎるだろ……」


 ロベルトが疲れたように呟く。


「薬草採取ってもっと面倒だって聞いてたぞ」


「普通はそうなんじゃない?」


「草探して歩き回る必要ないもんな……」


 ロベルトが遠い目をしている。


 いや、本当に便利なんだよな、この魔眼。


 ちなみにルナはその間ずっと虫を追いかけ回していた。

 草むらへ飛び込み、小さな蝶を追いかけ、時々転がっている。

 完全に子犬だった。


「……幼獣だからかな」


『捕まえられない』


 悔しそうに耳を伏せるルナ。


 そんな様子を見て、俺とロベルトは思わず笑ってしまった。


読んでいただきありがとうございます!

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