07-09 赤富士を見ただろ?
「無駄だってわかっているだろ。お前らじゃ、俺のパーティーには勝てないんだよ」
如月創は妖刀『鬼神解』の柄に手をかける天乃解を諭す。
創の横に立つ大聖女マユの精神体。
そして玉座の後ろの白い大理石の柱の陰から姿を現す人魚族の黒魔術師セイレーン。
帝都トキオの地下ダンジョンで大魔王プロト二を倒した元勇者のパーティーメンバーが並び立つ。
黒魔術師セイレーンは自分の首にぶら下がる勾玉を手にする。
「解君、これはね。八尺瓊勾玉。皇居『剣璽の間』にあるものは形代よ」
黒魔術師セイレーンは語る。
「三種の神器は大戦後の混乱の中、進駐軍の略奪を恐れた影の組織、陰陽師によって全て形代に置き換えられたわ。そして現世におもむき、当時の陰陽師の統領から、それを受け取ったのは私」
セイレーンの顔はどこか物悲しい。
「妖刀『鬼神』は、草薙剣の影。解ならわかるだろ。妖刀鬼神解、妖刀鬼神邪、妖刀鬼神瘴、妖刀鬼神妖、妖刀鬼神闘、そしてここにある妖刀鬼神創を持って、最後の神器、草薙剣を完成させる。だから返してもらおうか」
如月創は妖刀鬼神創を鞘から抜きはらった。
「解、このダンジョンに入る前に異界の富士山、赤富士を見ただろ?」
「っ……」
解は創の質問に答えない。
「現世の富士山は、もう直ぐ大噴火を起こす。セイレーン、現世の富士山の現状を見せてやってくれ」
創の指示に従って黒魔術師セイレーンは自分の首にぶら下がる勾玉を強く握る。すると、部屋全体に映像が浮かぶ。
「「「「「「っ……」」」」」」
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現世の富士山の地下大空洞。
解が倒した関東大震災の元凶、地龍の倍はある巨大な神獣火龍。
それを必死の形相で抑え込もうと結界を張る陰陽師たちの集団。
「無理だ。富士山が吹っ飛ぶ。日本は終わりだ……」
陰陽師の統領村井健はとっくに気力を失い、膝をついて涙と鼻水を垂れ流しながら項垂れていた。
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「彼らじゃ、未曽有の大噴火は抑えられない。現世は体験したことのない大災害で大量の死者と被害が出るだろう。その『怨嗟』が異界に流れ込み、帝都トキオの地下に眠る魔都トキオが復活する。それに抗う力が必要なんだよ。これは変えられない運命さ。時間がないんだ」
創の言葉に初めて力がこもる。その言葉には創なりの、異界を救うという硬い意志を感じる。
「そうだな……」
解は一言つぶやき、妖刀鬼神解を握りしめて後ろを振り返り、パーティーメンバーの顔を順に眺める。
安倍晴明の娘、千年妖狐、半妖怪の九尾永久。エルフ族特性の回復ポーションの効果が表れて妖気が戻りつつあるが万全には程遠い。
大聖女マユとキビ村マユの記憶を持つ吉澤繭。回復ポーションの効果はガン細胞と拮抗し、もとより無理はさせられない。
トランシルヴァニア公国ドラキュラ伯爵。……っ!戦力になるのだろうか?
現世で陰陽師の統領村井健をボコった、人狼ガルム、鬼女ベニ。成長待ち要員。
ため息を一つして再び如月創に向き直り、尋ねる。
「城塞都市ミートのホテル・フロンティアのドワーフ族の女支配人メリナ・アーキアのことを覚えているかい」
解の言葉に創の横に立つ大聖女マユの精神体の頬がピクリとなる。
「何のことだ」
創の返答に解の中で全てがつながる。
「一つ、聞いていいか。お前は元勇者の如月創か?それとも……大魔王プロトニ……。どっちなんだ?」
解は創に尋ねる。
「っ……」
創の顔に一瞬動揺の色が浮かんで消える。
「今だ!六神、六柱建立。六神融合、須佐之男」
創の動揺の刹那をついて我流六気操術の究極奥義を発動する解。
足元に六芒星の光が走る。
立ち上る、薄桃色、白、赤、赤黒、黒、紫の光の柱。
妖気神、月夜の桜の着物を纏ったショートカットの女児、化が、
創気神、純白のレースドレスを纏ったストレートヘアの女、児天が、
闘気神、深紅のチャイナドレスを纏った二つ団子ヘアの女児、仙が、
瘴気神、赤黒いローブを纏ったカーリーヘアの女児、病が、
解気神、漆黒のワンピースを纏った前髪パッツンの女、児凪が、
邪気神、紫のゴスロリ衣装を纏った縦巻き髪の女児、狂が、
解の丹田へ取り込まれて全身にみなぎる。
黄金色に輝く気を纏った須佐之男、天乃解。
シュン!
一瞬、解のブレる。
いつのまにか解の左手に如月創がさっきまで握っていた鬼神創。
「瞬間移動……、なのか……?」
如月創は信じられないという顔で自分の手を見詰める。
「悪りぃ、ちょっと借りるわ」
ジジー。
後方で控えるドラキュラ伯爵が無限収納ファスナーの摘まみを引く。
時空の狭間へとつながる歪んだ空間へ飛び込む、永久、繭、人狼ガルム、鬼女ベニ、ドラキュラ伯爵。
最後に須佐之男と化した天乃解が飛び込む。
ジジー。
カッン。
無限収納ファスナーが引きあがり内から閉じられて、六人は跡形もなく消えた。




