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大震災の元凶、地龍を倒して日本を救ったのに異界に追放されたので我流六気操術で無双します。  作者: 坂井ひいろ
第7章 城塞都市コーフ編

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07-06 師匠、やっぱり人間捨ててますよね

奈落ダンジョンの下層、六階層目からは未攻略。


中ボスフロアの五階層を下りると一気に様子が変わる。


溶岩は影を潜め、巨大な水晶(クリスタル)が上下左右にニョキニョキ生えた幻想的な空間。


「魔力の切れた魔石の原石みたいだな。セイレーンの塔(タワー)の最上階の部屋の中央に据えられた巨大な水晶玉はこれで作ったのかな」


解が手を添えると生体エネルギーが少しずつ吸い取られている気がする。


「師匠、これがあれば土蜘蛛の目が無くてもセイレーンさんが使っていた覗き見水晶玉が作れるんですかね」


永久はアータミの洋上に隠れ伸びる巨大図書館といえる知識の集積を思い出す。


「ああ、それだけじゃない。うまくいけば魔石の魔力を貯めこむ大型魔力電池だって作れるかもな。長く触れすぎると魂ごと吸われるかもしれないぞ」


解はパーティーメンバーに警告を発する。


水は高いところから低いところに流れる性質があるように、エネルギーも濃い方から低い方へと流れ込む。


「お師匠、マジですか!?」


人狼ガルムは飛びのく。


ズサッ!


解の持つ、妖刀『鬼神解(きじんかい)』が閃(ひらめ)いた。


ドスン。


両断された巨大な水晶(クリスタル)地面に転がる。


ジジー。


解は水晶に触れすぎないように、素早く無限収納ファスナーの摘まみを引いて、時空の狭間へサンプルを放り込む。


異物の侵入を察知したのか、紫色の霧が辺り一帯を満たし始める。


意志があるのか、先導する鬼女ベニの体に纏わりつき始める。


「っ……。この霧、生きていみたいです」


鬼女ベニの顔が引きつる。


横にいる人狼ガルムは妖刀『鬼神邪(きじんじゃ)』で斬り付けるわけにもいかずオロオロ。


鬼女ベニの体に絡まる紫色の霧は、集束して人の手みたいになってモニュ、モニュ。


「なんかやらしいんですけど」


鬼女ベニは払いのけようとするが、その度に霧になって払えない。


「ドラキュラ伯爵みたいなタイプかな」


解は蝙蝠になって体を分散できる能力を言ったつもりが、ドラキュラ伯爵は別の意味でとらえたようだ。


「解さん、その言い方はちょっと……」


ドラキュラ伯爵は顔をしかめる。


「日頃、ハーレムなんか作っているからですよ。グフフ」


永久は悪びれずに追い打ち。


「ちょっと、緊張感持ってくださいよ。こいつ毒っぽいですよ。まあ、私は鬼族だから毒には強いですけどね」


鬼女ベニが抗議の声を上げる。


すると赤や黄、青、黒。毒々しい霧が次々と発生。


「差し詰めポイズン・フォグってとこかな。ランクはA級魔物、けっこうな猛毒だそ。なるほど、色ごとに毒の特性が違うのか」


解は指先を色々な色の霧の中に平気で突っ込む。


「たっぷり瘴気に満ちているから、気の補充でもしとくか。俺の六気操術(ろくきそうじゅつ)ってのはな、『気』を操る我流の技だ」


解がへその下、丹田に力を込めると、目の前の空間に金色の光が走った。


『妖・創・闘・瘴・解・邪』


六つの文字を頂点に持つ六芒星。


「『気』は万物のエネルギー。なら、瘴気も同じ。気体の方が回収しやすくて助かる」


六芒星の中央に『人』の文字が灯った瞬間、『瘴』の文字が巨大化し、鬼女ベニに纏わりつく紫の霧と新たに現れた色様々な霧を吸い込み始めた。


「「「え……」」」


鬼女ベニと人狼ガルム、ドラキュラ伯爵は目を見張る。


瘴気は光へと変換され、奔流(ほんりゅう)となって解のヘソのあたりから体の中の丹田へと流れ込む。


残ったのは瘴気を吸いつくされて核だけが実体化して残った長い針金細工みたいなチャチなボディ。


ポキッ!


永久が摘まんで爪楊枝を摘まむみたいに胴体を折ると、残念なそいつは光の粒となって鶏卵大の魔石にとなる。


「ポッキーかよ。師匠、やっぱり人間捨ててますよね」


永久は人外の我流六気操術(がりゅうろくきそうじゅつ)の技を久しぶりに見てあきれ顔。


「瘴気神、病(やみ)建立(こんりゅう)に使った気の補充にピッタリだな」


解はほくほく顔。


「病(やみ)ちゃん。メッチャかわいかったです。解君、それ私にも教えてください」


繭は楽しそう。


A級魔物のポイズン・フォグはもはや単なるエネルギー扱い。……この時点で、このダンジョンはすでに攻略されたも同然だった。


未攻略ダンジョンの下層域だというのに、ワチャワチャ、ガヤガヤのピクニック気分の一行。


「俺らが手こずったドラゴン・エレメントがB級の中ボスなのに、このダンジョンおかしくないか?」


人狼ガルムは不満顔。


「いやでも、しかし。広範囲の毒霧のモンスターなんてダンジョンごと焼き尽くすくらいしか普通攻略できないからな。刀も魔法弾も効かないし、五種類も特性があるとなるとA級と言えばそうなのかもしれない」


全く活躍しないドラキュラ伯爵はまっとうな分析。


ポキッ!


ポキッ!


「そんなこと言ってないで、手伝ってよ。A級魔石は金貨千枚だってこと忘れてない」


巨大水晶の陰に隠れようとする小枝みたいなポイズン・フォグを折って回る鬼女ベニ。


気が付けば九階層を攻略し、ボス部屋につながる階段前に到達するパーティーメンバー、一行だった。


「さてと行くか。次は十階層。火(カ)の街、城塞都市コーフダンジョン『奈落』のボス戦だぞ」


「「「「「了解」」」」」


九尾永久、人狼ガルム、鬼女ベニ、ドラキュラ伯爵、繭は気合を入れなおした。


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