07-05 ググググ。三下魔物に見下されてる!?
火の街、城塞都市コーフ(現世気相:山梨)、奈落ダンジョンの五階層。
体育館のような巨大な空間に悠々と舞うB級魔物、ドラゴン・エレメント。
半精神体の魔物は半透明になったり現れたり。
「事前打ち合わせの通りだ。体が半透明の時は物理攻撃も魔法攻撃も効かない。攻撃時に体が現われた時に一気に決めてくれ」
解の合図で、人狼ガルムと鬼女ベニ、永久の三人は散る。ドラキュラ伯爵と解は繭の護衛。
雷、炎、溶岩、光、毒と五つのエレメト球を口から吐き出し、剣のような突起の付いた尻尾と爪で攻撃してくるB級魔物。
人狼ガルムは狼耳と尻尾を展開、鬼女ベニの額から二本の角が伸びる。二人は既に戦闘形態に移行。
「っ……。こいつ本当にB級かよ」
人狼ガルムは雷球を避けて、振るわれる尻尾の剣を妖刀『鬼神邪』で受ける。
ぶっとい尻尾の圧倒的な質量が人狼ガルムの発達した筋肉を軋ませる。受けるだけで精一杯といったところだ。
その隙を狙って鬼女ベニがドラゴン・エレメントの腕に妖刀『鬼神瘴』を振るうがガチンコで受けられ、逆に溶岩球の的となって飛びのく。
二人がドラゴン・エレメントを引き付けている隙を狙って永久のターン。
「全式神、緊急召喚!変化、属性ビーム砲」
その瞬間、一本の尻尾を残した八本の尻尾が射出され、ドラゴン・エレメントを囲むように飛翔する。
「包囲飽和攻撃!」
木属性式神、蝶花が放つ毒霧ビームが、
土属性式神、豊花が放つ炸薬ビームが、
水属性式神、翡花が放つ高圧水ビームが、
金属性式神、月花が放つ水銀ビームが、
火属性式神、焔花が放つ獄炎ビームが、
雷属性式神、雷花が放つ電撃ビームが、
風属性式神、風花が放つ真空ビームが、
氷属性式神、雪花が放つ冷凍ビームが、
ドラゴン・エレメントの体を突き抜ける。
無駄に圧倒的な火力で、もうこれでもというくらいのめった刺しビーム。
のハズだったが、その時にはドラゴン・エレメントの体は半透明。物理攻撃無効である。
「グググッ。デカいくせに……」
ドラゴン・エレメントは体を顕在化させてお返しとばかりに雷、炎、溶岩、光、毒と五つのエレメト球を次々と口から吐き出して永久を狙う。
ビリビリ!
「ひえっ」
ボワッ!
「うわっ」
ドゴン!
「あらよ」
ビシュ!
「ぴょーん」
モワッ!
「おっとと」
それを避ける永久の動きはまるで阿波踊り。
「あれで避けれるのか。面白いやつだな」
解は苦笑い。
「師匠、聞こえてますよ。私、地獄耳なんですからね。笑ってないでどうにかしてくださいよ」
永久の狐耳がぴくぴく。
「でもなー。A級冒険者、三人がかりでB級魔物を虐めているのに参加したらパワハラだろ」
「っ……。師匠、見てわかりません。苦戦しているんですよ」
攻撃を終えたドラゴン・エレメントは体を瞬時に半透明にして、魔力を高めている。
人狼ガルムの妖刀『鬼神邪』も鬼女ベニの前足に妖刀『鬼神瘴』も空振り。
知性があるとは思えないが、本能的にドラゴン・エレメントは半透明の顔で魔物のクセにどや顔でニンマリ。
「ググググ。三下魔物に見下されてる!?」
永久の額に青筋が走る。
「ゴラァ。カス、クソが!千年妖狐をなめたらあかんで。魂ごと食らったるわ」
永久は狐の姿に変身しして巨大化。半透明のドラゴン・エレメントに牙をたて食らいつく。
「「へっ!?」」
人狼ガルムと鬼女ベニは巻き込まれないように飛びのく。
首を妖狐に噛まれたドラゴン・エレメントは実態を表して転げまわり、やがて動きを止めて光の粒に変わって小石大の魔石となる。
「気合ですよ、師匠」
人型に戻った永久はニンマリ、Vサイン。
「いや、たまたまだな。ドラゴン・エレメントが半透明でいられるのは一分もないからな。姿を現すタイミングだっただけだ」
解は冷静に分析。
「師匠、身もふたもないことを言わないでくださいよ。城塞都市コーフの冒険者の誰一人攻略できなかった難敵ですよ」
永久はため息を吐いて気を落ちつける。
ドラゴン・エレメントを討伐した永久と人狼ガルムと鬼女ベニは火傷と擦り傷だらけ。
繭に癒してもらって、六階層に向かう階段を下りる一行だった。




