07-04 最初から使えよ!
「ぐふふ。結果的に全部、ガンダール伯爵に押し付けてしまう師匠の荒業に感服です」
永久は悪い顔いっぱい。
「才能のある人が普通の生活を望んじゃダメってことだな。人には役割ってものがあるんだ」
解は笑う。
「じゃ、師匠も永遠にのんびりライフは無理ですね」
永久はちょっと思案顔に。
「俺の役割を終えに行こう。永久、みんな。行くぞ」
解と永久、繭とドラキュラ伯爵、人狼ガルムと鬼女ベニの六人は火の街、城塞都市コーフ(現世気相:山梨)、奈落ダンジョン入り口前に立つ。
遠くに北斎の書いたようなとんがった富士山が見える。
「赤富士だな。吉と出るか凶と出るか」
解は独り言を言って踏み出した。
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奈落ダンジョンは所々に赤く輝く灼熱の溶岩が沸々とわき、そばを流れる場所だった。
黒く冷え固まった溶岩石の地下道は卵が腐ったような悪臭に満たされている。
猛毒の火山ガスで、ガスマスクなしでは数分で呼吸中枢が麻痺して意識を失ってしまうようなおそろしい場所である。
「繭の結界と毒耐性の強いメンバーでたすかった」
解は仲間の状態を確認する。
「でも師匠、毒が蓄積するので、あんまり長く戦えないですね」
永久は狐耳をピンとさせ、九本の尻尾を広げて臨戦態勢。
「そうだな。このダンジョンの魔物自体は弱いが、この環境こそが奈落の本当の脅威だからな」
解はいたって冷静。
襲ってくるのはE級魔物のパンプキン・ヘッド。名前の通りハロウィンのカボチャのお化け。
攻撃は単純で体当たりのみ。問題は少しでもバランスを崩したら溶岩の川にダイブ。
ズサッ!
「この程度なら俺らでも大丈夫ですよ」
前衛で妖刀『鬼神邪』を振るう人狼ガルム。
シュビッ!
「さすが妖刀ですね。半精神体の魔物でも魂ごとぶった切れます」
同じく前衛で妖刀『鬼神瘴』を振るう鬼女ベニ。
そこへD級魔物のエクト・プラズムが参戦。
近づくものに纏わりついて動きを止める厄介な魔物で、対毒性を持たない冒険者ならガスマスクの寿命でじわじわ死に絶える。
ズサッ!
シュビッ!
「お師匠、これも楽勝です」
人狼ガルムと鬼女ベニは斬って、斬って、斬りまくる。
今回の魔石の回収は蝙蝠になったドラキュラ伯爵。
ケッケッケッ!
しかし、さらにD級魔物のチキン・ハートが参戦。
魔力のこもった奇妙な鳴き声で、臆病風に吹かれるという精神攻撃をしてくる。
「攻撃がねちっこくて面倒だな」
しかも、前方にまとまって行く手を塞ぐ。
前に進みたい解はイライラが募る。
「五大都市、最後のダンジョンだから、出し惜しみなしで行くか」
解は足を止める。
「瘴気神 一柱建立、病」
解が丹田に力を込めると、足元に六芒星が浮かび上がり「瘴」の文字が光る。
その文字から赤黒い光の柱が立ち上がり、消えた後に赤黒いローブを纏ったカーリーヘアの女児。
女児が手に持つオカリナを奏でると、ダンジョンの魔物が同士討ちを始める。
「半精神体の魔物は心が剥き出しだからな。案外、精神錯乱には弱いんだ」
テトテトと歩くカーリーヘアの女児のマントの下から赤黒い霧が発生。
「ついでに病は毒のプロフェッショナルだから、メンバーの体内に侵入した毒で毒を制する無毒化結界も張れる」
どや顔の解。コクコクと頷く瘴気神、病
「「「っ……」」」
最初から使えよ!って、思う戦闘系メンバー、永久、人狼ガルムと鬼女ベニ。
「ほわー。かわいいです」
繭の声にそろそろ現世の繭に戻ってほしくもあり、キビ村の『マユ』も捨てがたいと思う解だった。
ドラキュラ伯爵の蝙蝠は、魔石回収が急に忙しくなっててんやわんや。
ダンジョンの三階層からは火球を放つC級魔物のフレイム・ゴーストや雷を放つサンダー・ゴーストが加わり派手な空中戦となる。
左右を灼熱の溶岩に囲まれた細い一本道を進む冒険者にとっては難所であるが、病のお陰で魔物同士の自滅してくれるので難なく進める。
オカリナを奏でながら進む赤黒いローブを纏ったカーリーヘアの女児。
精神錯乱して狂ったように火球や雷を打ち合って消滅する魔物たち。
「師匠のチートは相変わらずですね」
永久はあきれ顔。
こうしてダンジョンの低階層、一階層から四階層まで、順調に攻略が進む。
「病の精神錯乱は、精神攻撃耐性の高い上位魔物には効かないだろうな。コーフ冒険者ギルドの情報では五階層は中ボスフロアだ」
解は五階層に向かう階段前で病を我流六気操術の六芒星の中に戻すことにする。
「病、ありがとう。またな」
解が頭をなでると病はコクコクと頷き、手を振りながら消えていった。
解、永久、繭、ドラキュラ伯爵、人狼ガルム、鬼女ベニの六人はそれぞれ気合を込めて階段を下った。
こうして、火の街、城塞都市コーフ(現世気相:山梨)、奈落ダンジョンの中ボス戦が始まろうとしていた。




