07-03 師匠、チョコレート工場もお願いします
火の街、城塞都市コーフ(現世気相:山梨)の街は、あちらこちらで魔鉱石を打つ槌が響き渡り火花が工房の窓を照らしていた。
「金の街、城塞都市サーイが工業都市だとすると、この火の街、城塞都市コーフは職人都市なんだ。荒くれのドワーフ族が多いが、腕は格段にいい」
城塞都市サーイ領主ガンダール・サーイ伯爵は、せわしなく行きかうドワーフ族を眺めて説明する。
「ドワーフ族は寿命が長いから、手わざを極めるのに適しているんですね」
解もドワーフ族を眺める。背は低いが発達した筋肉と騒音にも負けない大声。ガサツではあるが頼もしい。
「そうだな。城塞都市ミートに多いエルフ族も寿命を活かして創薬の研究に励むが、いずれも城塞都市サーイには少ないからな」
サーイ領主であるガンダール伯爵は少し残念そう。
「グフフフ。師匠の長ったらしいウンチクに対抗できてる!?」
永久はドン引き。そして退屈。
「解さん、魔眼カメラもウィンド・バイクも魔力で動く魔道具なので魔鉱石を使えばもっと耐久性も性能も上がりそうなんですけどね」
眼光ギラギラの鍛冶屋のタキが指をくわえている。
「変身ベルト含めて城塞都市サーイの特産品だからな。技術の流失はできるだけ押さえたい」
ガンダール伯爵は悩ましそう。
「グフフ。師匠、今の日本は他国のパクリを笑ってますけど、昭和の日本はパクリ大国だったんですよ。良くて、安くて、勇気のしるし。バブル企業戦士……ですね」
永久は解に耳打ち。
「パクリ尽くして気が付けば、無理な個性教育。追う立場より追われる立場の方がストレスがたまるからな。異界の気相が歪む……か」
解は少し考え込む。
「よし、じゃあ……。ガンダール伯爵。魔眼カメラもウィンド・バイクも俺のアイデアは全部公開することにします」
解の突然の宣言に、永久と繭を除く全員が目が点。
ドラキュラ伯爵はもとより、さすがに経済に疎い人狼ガルムと鬼女ベニでも察しが付く。
「いや、解君。そんなことをしたら莫大な利益を失うことになるんだぞ」
額を押さえる白いタイツにかぼちゃパンツを着こなす男、ガンダール伯爵。
「スパイ合戦で疲弊し、技術を囲い込むほど世界の歪みが広がるなら……、スパッと公開して技術進化を競争原理にゆだねた方が社会全体の為だろ。ネタはいくらでもあるし」
解の悩みは一気に解決。顔は晴れ晴れ。
「それではサーイの優位性が一瞬で崩れる!サーイの領主としては認められない」
たった今、『技術の流失はできるだけ押さえたい』って言ったばかりなのに。至極もっともなガンダール伯爵の大人の見解。
「で……、ネタとは」
プンスカしながら、そででも続きが気になるガンダール伯爵。
「とりあえず、城塞都市ヨーコのダンジョンで手に入れた空中に浮く海藻を研究して、空飛ぶ乗り物だな」
解の瞳はキラキラ。
それを聞いた鍛冶屋のタキの技術屋魂はメラメラと燃え上がるが体は燃えカス。
「それから光魔法を使った通信魔道具。冷蔵庫に、電子レンジ、エアコンもないからな。全部魔法の応用で作れそうだ」
「「「「それっ!!」」」」
現世の最新の日本文明を知っている永久と繭、五年前に陰陽師に追放された人狼ガルムと鬼女ベニは大興奮。
「師匠、チョコレート工場もお願いします」
解の上着の裾を引いてねだる永久だった。




