07-02 勇気のしるし
火の街、城塞都市コーフ(現世気相:山梨)の城壁は、他の四都市と違って魔石と鉄を混ぜた魔鉱石と言う特殊な結界金属でできていた。
少し離れた場所でウィンド・バイクを解の無限収納ファスナー、時空の狭間に収納した。
「師匠、なんか城って言うよりも軍艦みたいで威圧感が半端ないですね」
永久は城門を見上げて言う。
「ああ、コーフのダンジョンは奈落と呼ばれている。幻魔系の半精神魔物だから、石やレンガなどの物理的な城壁では守り切れない。ダンジョンスタンピード対策は結界しかないからな……。それでな、うんぬんかんぬん……」
解は頼りになるけど直ぐに知識マウントを取ってくるのがたまにきず。
「繭ちゃん、いこっか」
永久は繭の手を取ってスタスタと歩き出す。
「「「っ……」」」
ドラキュラ伯爵、人狼ガルム、鬼女ベニの三人は話足りなそうな解の顔を見ないようにコソコソと永久と繭を追う。
取り残された解は魔鉱石でできた城壁を見上げてため息を一つ。
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城門前で待っていたのは城塞都市サーイ領主ガンダール・サーイ伯爵とキビ村の鍛冶屋のタキ。
強欲商人ゴウと女親分サキに休暇を取らした分、ビジネスの方の遅れが気になる。
会いに行く時間が取れないので、鍛冶屋のメッカ、火の街、城塞都市コーフで仕事を進めることにして、城塞都市コーフを出るときに伝書鳩を放って事前にサーイの街から二人を呼んでいた。
「解君、久しぶりだね。行く先々で随分と活躍しているらしいじゃないか。サーイの街でも噂が絶えないよ」
ガンダール伯爵は相変わらず、白いタイツにかぼちゃパンツを着こなす紳士っぷり。
「解さん、永久さん、ご無沙汰です。お陰様で忙しくさせてもらってます。毎日、興奮の連続で寝る暇も食事の暇もありません」
対する鍛冶屋のタキはもはや別人。筋肉もりもりだった体はすっかりやせ細り、目の下はクマで凹み、眼光だけがギラギラの妖怪フェイス。
「「っ……」」
解と永久は絶句。ダンジョン配信の魔眼カメラに、ウィンド・バイクの開発、量産とムチャぶりのしわ寄せがここに!完全な仕事中毒。
「ふわー、たいへん、たいへんです」
繭は癒しの手でタキの体をペタペタ。みるみる生気を取り戻すタキ。
「まっ、マユさん。お元気でしたか。ずっと心配してました。村人全員、反省してます。土蜘蛛の贄なんて本当にすみませんでした……」
感極まって、膝をついて泣き出す始末。その背中に手を当て癒しの光を注ぐ繭。
感情が収まるまで、しばらく泣かしておこうと思う解。
「ところで解君、今、サーイの街は魔眼カメラとウィンド・バイクを起点として工業化とダンジョン観光インフラ整備でとんでもなく賑わっているよ。お陰様で庶民の生活は日を追うごとに豊かになっている。解君の銅像をサーイの城門に設置する話がだな……」
ガンダール伯爵は苦笑い。
「お断りします。ムダ金はやめて、冒険者ギルドの孤児院支援に回して下さい」
解は即答する。
「そうだな。そういうと思ったよ。本人がいらないって言ってるなら、これで議会の貴族を説得できるよ」
「それより、新しくパーティーメンバーになった。ガルムとベニです」
「くおっ……」
ドラキュラ伯爵はチーバの一見以来、親しくしているが、人狼に鬼女……。人の姿をしていてもヤバい系の人外ばっかり!
城塞都市サーイ領主ガンダール・サーイ伯爵、切れ者。ギフトは『魔眼』。人の才能を見抜く力を持っている。
「そっ、そうか。頼もしいな……」
「「お世話になります。よろしくお願いします!!」」
ニコニコしながら手を差し出す人狼ガルムと鬼女ベニ。
ガンダール伯爵は引きつった心で、世話はしたくないなと思いながら手を差し出す。
「師匠、ガンダール伯爵、顔が白くなってますよ」
永久は苦笑い。
「ところで、伯爵。そろそろサーイの街も人材難になりそうなんで、人事改革が必要だな。城塞都市チーバみたいに無能な貴族は名誉職に上げて権利を剝奪。タキみたいに優秀な村人を発掘だな。『魔眼』持ちのガンダール伯爵にしかできない仕事だな」
「っ……」
自領の発展業務と城塞都市チーバの復興の指揮を執るエレーナ・チーバ伯爵令嬢の相談役、天手古舞なのに!
伝書鳩で有無を言わせず呼び出しといて、挨拶もなく立ち話で仕事をガンガン押し込んでくる。
しかも、正論だから余計に質が悪い。
ガンダール伯爵、ダジダジ。顔面は白から青へ。
五歩、歩くごとに一仕事のペースで仕事の指示をする解に眩暈を覚えるガンダール伯爵。
その肩をポンポンと叩くドラキュラ伯爵。
「ガンダール伯爵。城塞都市ミートのエルフ族の薬屋で手に入れた二十四時間戦えるいい薬がありますよ。私も時々お世話になってます」
「っ……」
不老不死の吸血鬼がエルフの薬に頼るほど疲労!?
「黄色と黒は勇気のしるし、二十四時間戦えますか!リゲイン、リゲイン、ぼくらのリゲイン……」
永久が腕を振りながら突然、歌い出す。
「ふふふ、楽しい歌ですね。何て曲ですか?」
「勇気のしるし。バブル企業戦士のお薬の宣伝ソングだよ。グフフ」
いい時代だったと懐かしむ千年妖狐だった。




