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大震災の元凶、地龍を倒して日本を救ったのに異界に追放されたので我流六気操術で無双します。  作者: 坂井ひいろ
第2章 城塞都市サーイ

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02-01 旅は道連れ世は情け

解はキビ村のはずれに魔眼カメラの量産工房を作り、村人数人を雇い入れた。


意外だったのは村の警備リーダーの筋肉もりもり男ことタキ、鍛冶屋で手先が器用だったので採用し工房主にすえて助手にする。


「ゲン村長、それじゃ出発します」


白ひげのキビ村村長に礼をして、解と永久は村出入りの商人の馬車に乗り込む。


「お世話になりました。みんなも元気でキビ村を盛り上げてくださいね!」


手を振って道沿いに集まった村人千人と別れる永久。


「師匠、タキさん。うまくやってくれそうですね」


「ああ、村警備リーダー兼任ってのがちょっと心配だけどな」


「式神、焔花えんかを置いてきたから。まあ、大丈夫でしょ」


永久は名残惜しそうに八本になった尻尾を撫でる。


「街に着いたら一番にギルドで護衛の冒険者を雇って派遣するからそれまで我慢してくれ」


「街って城塞都市なんですよね。なんかこうギルドとかもう、アニメみたいでワクワクです」


「だな……」


言葉少なく黙り込む解をみて続ける。


「師匠、ところでマユさんのことは良いんですか?」


「ああ、あまり干渉して『気』の流れや質が乱れたら現世の彼女にどんな影響がでるかわからないからな」


「でも、不思議ですよね。パラレルワールドって言うんですか。しかし、地球人口八十億人もこっちの世界にいるんですかね」


永久は殺風景な平原が続く景色を眺めながら問う。


「ああ、おそらく村長の言う『魔物モンスター』だな」


「えっ、じゃ退治しちゃったら、『気』で繋がっている現世の誰かが……死んじゃうとか」


「おそらくだが輪廻転生。こいつが鍵だ」


解はファスナーを引いて妖獣『次元大蛇』のなれの果てを取り出す。


「魔石ですね」


六気操術ろくきそうじゅつでは妖気・創気・闘気・瘴気・解気・邪気があり『気』は移りゆく」


その時、木の陰から黒い塊が街道に飛び出してくる。


頭は牛、体はゴリゴリマッチョの人型。牛の尻尾がプランプラン、手には錆びた戦斧。


「なんで、人の生活圏にダンジョンの中ボス、B級魔物!ミノタウルス……、終わりじゃ」


商人兼 御者ぎょしゃが慌てふためき、泡を吹いて意識を失う。


解と永久は馬車から飛び出す。


「師匠、ベタにテンプレな姿の魔物ですね」


「ああ、確定だな。人が想像できないものは存在できない」


「で、退治しちゃって大丈夫ですか?」


「ああ、気相は『邪気』がメインの集合気。特定の現世人のような思念が感じられない」


「師匠、了解です。それじゃ遠慮なく」


永久は尻尾を展開し、その一つを引き抜いて投げる。


「式神、金属性・月花げっか召喚。変化へんげ、月花丸」


クル、クル、クル。


バシュ!


B級魔物と呼ばれる強者のミノタウルスは一振りも戦斧を振ることなく光の粒となる。


解は後に残った小石大の魔石を拾い上げて、こぶし大の妖獣『次元大蛇』の魔石と合わせる。


二つの魔石が呼吸するように光る。


「『気』同士が引き合うってことか。なるほど。ってことはB級魔物が現れた理由は……」


あっちゃー、師匠、また、自分の世界に引きこもっちゃった。


ひとり、せっせと商人兼御者の蘇生をする永久だった。


そんなこんなで、ようやく城塞都市サーイの城壁が見えてくる。


日本語を話す和風チックな世界なのに、平安時代から生きている永久には違和感満載の完全ヨーロッパ調。


アニメなどではテンプレでも、実際に目にすると高さ約三十メートル、現世のオフィスビルの十階に相当する城壁は壮観なものがあった。


「師匠、そろそろ着きますよ。いつまで魔石とじゃれてんですか」


「おう」


集中している所に水をさされた解はちょっと不機嫌。


「おぉー、やっぱりそうきたか。うんうん。そうだよなー」


が、窓の外をみて上機嫌で納得している。


「何が、うんうんなんですか?」


「おれが作り出した我流六気操術がりゅうろくきそうじゅつ理論が正しいってこと」


「自慢話ですか……。それでこれから良いことあります?」


「あり、あり、大あり。世界のことわりは全て人の創造を超えないって話」


「奇人以外の凡人には理解できないってことですね。メリットだけ、お願いします」


「そうだな。アニメと漫画の知識で無双できるぞ」


「えっ、これからもテンプレライフってことですか。勉強いらずですね」


顔を突き合わせて二ヒヒと笑い合う二人を見て商人兼御者は不気味なものを感じ、早々と逃げ出す算段を頭の中で巡らした。


「おい、最後まで付き合ったらS級魔物の魔石をあげてもいいんだぞ」


解は次元大蛇のなれの果て、卵大の魔石をチラ見せする。


「っ……。だんな、心を読まないでくださいよ。もう、どこまでもお付き合いしますよ」


S級魔物の魔石なんて、ダンジョンボスを倒した高額年収なみの所得。一個で城塞都市で店を借りれるじゃん。どこで拾ったか知らないが、こいつら価値分かってんのか?


二ヒヒと笑い合う三人。


あやしさ満載の三人に城塞都市サーイの城門を取り仕切る審査官の顔が曇る。


「通行証と身分証を提示してください」


「ほいよ」


解はついさっき手に入れたミノタウルスのB級魔石を審査官のポケットに忍ばせた。


審査官はポケットに手を入れて、その重さを量る。くっ……。三ヵ月分の給料を超える魔石。


二ヒヒと笑い合う四人。


解と永久はすんなりと城塞都市サーイへ入場したのだった。


商人兼御者は確信する。ミノタウルスのB級魔石を、門番なんかの賄賂に使うのは破格すぎる。絶対に価値を理解していない。


「で、お前、名前なんてったっけ?」


商人兼御者は自分がモブだったことを宣告され、ちょっぴり凹むのだった。

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