02-02 ギルド嬢は定番のお色気タイム
城塞都市の中、レンガ造りの堅牢な建物が立ち並ぶ。
中央通りの先にはもう一段の城壁をへてヨーロッパ風の城がそびえる。
「師匠、これって、まるで東京チューチューランドじゃないですか!千葉のくせに……」
「永久、お前、埼玉県民だろ」
「……」
「まあ、既視感満載であんまり感動しないな」
解は城塞都市サーイに現世の埼玉の気相を感じ取り、人の欲望と言うものは因果なものだなと思った。
「ほれっ。約束の駄賃だ」
空気と化している商人兼 御者ゴウに雑にS級魔物、次元大蛇の魔石を投げ渡す。
「あのー、お二方のお泊りの場所はいかが……」
「あれっ、まだいたいの?」
「そんな。そりゃーいますよ。どこまでもおともしますよ」
モブ・オブ・モブ。
「よかったらあっしの馴染のホテルでもお連れしましょうか」
「泊まる場所はあるから」
ジジー。
解がレンガ塀に何故かついている不自然極まりないファスナーを引く。一流ホテルのような部屋がチラリ。
「くっ……」
なっ、何と無限収納ポケット!しかも見たことない最新式かつ住居タイプ。
A級冒険者ですら持っている人は少ない超貴重、超高級品。「ダンジョン内でもお泊り安全安心かつ快適」のムフフアイテムである。
B級魔物ミノタウルスを瞬殺してたし……。ことによると「帝都トキオ」にしかいないS級冒険者?英雄クラス!こんなガキと童女が……。
商人ゴウの頭の中のレジスターはフル回転。
チーン!
お抱え商人の気配なし。高位魔石をポンポン振りまく価値知らず。極アマ甘ちゃん。鴨ネギ中の鴨ネギ。
何処から来た何者なんてどうでもいい。死んでも食らいつく。
「そっ、それではだんな。この街のギルドへ案内いたしやす」
「ハエみたいで。気持ち悪いですよ、そのもみ手。ハハハ」
「はぇっ…」
この年になって童女ごときに格下扱いされるとは……。
「『ハエ』って珍しい名前だな。ハエ、よろしく頼む」
「だんなー。もう、さっきあっしの名前はゴウって伝えたじゃないですか。ほんま、お願いしますよ」
「あっ、そうだった。強欲商人のゴウな」
くっそー。力があったら殴ってやりたい!だが、押さえろ、あっし。一世一代のチャンスだ。
「金で動く商人ってのは、金さえあれば裏切らんからな。逆に信用できるから好きなんだ」
ニコ。
ほほ笑む解。
ガキのクセに道理を知っている。冷静さを取り戻してゴウは城塞都市サーイのギルドへ二人を案内する。
カラン、カラン。
ドアベルを鳴らしてギルドの中へ。昼間とあって冒険者はまばらだった。
「うほっ!師匠、ほんとにクエストの張り紙が貼ってあります」
トップクエストは、しばらく貼られているのか日に焼けて紙の色が少し違う。
しかも、文字はガチな日本語。漫画やアニメのテンプレ通り。
ご都合主義もここまで行くと呆れるが、解は気相の因果とむしろ納得。
クラス:B級魔物
案 件:廃墟城に巣くうハグレサラマンダー退治
要 件:A級冒険者パーティ以上、水魔法士必須
報 奨:金貨百枚+魔石買取金貨百枚
「師匠、B級だって。ミノタウルスレベル!楽勝じゃん」
大声ではしゃぐ永久に、ギルド内の冒険者は童女連れのガキの見学かと顔をしかめる。
「永久、冒険者登録が先だぞ。って……」
カウンターにはギルドの女性職員がズラリ。
暑くもないのに定番のお色気タイムよろしくの露出度ガン高コーデ!
顔を赤くして目を逸らす純情少年、解。
すかさず割って入る強欲商人ゴウ。
「お好みなら一声かけて頂ければ、今晩そちらの無限収納ホテルに……」
ゴウはニヤニヤと下品な笑みを浮かべる。
「そっ、そんな制度なのか」
「師匠、そこは子供も観るアニメやラノベでは……、ほら、なんじゃないですか。大人の事情ってやつですよ」
二ヒヒと笑う童女、永久。
「いや、俺は一人をだな。そのあ、い、う、え、おぉ……。と、とにかく古風でいいんだよ」
しどろもどろで拳を握り下を向く解。
全てにおいて解に負け続けの永久の意地悪心が爆上がり。マウント取って無双できる初チャンスに得意顔。
「また、またー。私、この目で見てきましたから言いますけど、古風って江戸の大奥も吉原もそりゃーもうお盛んでしたよ。戦国時代なんてなんでもあり。明日、生きてる保証のない世界なんですから」
くっ、なんだこの童女。かなりスレてる。ヤバオーラに一歩後退する強欲商人ゴウ。
「まあ、まあ。永久さん、落ち着いて。冒険者登録試験に行きましょ」
先導して『欲の世界』で絡めとるつもりが、なだめ役。
と言うことで、仕切り直してお決まりの冒険者登録試験。
相手は絶対に完全破壊できないという超魔力強化の案山子
A級:深傷
B級:10cm傷
C級:かすり傷
D級:なで傷
E級:無傷(薬草取り、ポーター他雑用のみ許可)
「では剣士登録希望の解さんからお願いします。はじめ!」
スチャ。
妖刀『鬼神解』を鞘に納める音が微かに響く。
「解さん、はじめていいですよ」
露出度ガン高受付嬢を真っすぐ見れない解はおろおろ。下を向いて、
「もう、終わりましたが……」
「はあ、では無傷ですのでE級登録からスタートです……」
露出度ガン高受付嬢は、ちょっとイケメン、もしかしたら将来有望だったりしてと期待感爆上り。
「囲って私色に育てたい!」なんて夢に水を差された感じ。
まあ、所詮ガキだものなって心の中でつぶやく。
ガタン!
「えっ……」
これでもかと言うくらい気持ちよく案山子、真っ二つ!
「案山子、一つしかないみたいだし、私、魔導士希望なので、このままやりますね」
「えっ……」
露出度ガン高受付嬢、永久の言葉に意味不明。
連れの童女も冒険者希望だったの!?まあ、冒険者登録には年齢制限はないけど、常識ってものが……。
「式神、雷属性・雷花召喚。スキル、獄雷」
ドッゴーン!
一瞬の稲光と共に案山子、完全消失。灰すら残らない。
「えっ、えぇーー」
聞いたことも見たこともない化け物級に怯えまくる露出度ガン高受付嬢。
こうして二人はめでたくA級になったとさ。
何とか名前を覚えてもらって、ほとしてトイレを借りに行った強欲商人。
小用を終えてカウンターへと戻って両手をフキフキ、モミモミ。もみ手が癖のゴウ。
「試験会場、込んでます?」
「もう終わったけど」
「へっ……?」
ゴウを置いてギルドを出ていく二人。
「師匠、明日はサラマンダー退治に行きましょうね」
なんかこの世界、メッチャ、チョロイと思う永久だった。




