06-08 では、一つ問おう
ダンジョンの階段と言うより、地下の隠し部屋へ下りる様な小さな階段。
木製の階段を下りるとそこは、今までの海中の景色とは全く違う様相を呈していた。
「まるで、日本の剣道や武道の道場みたいだな」
解は綺麗に磨き上げられた黒光りする木の床の上に降り立つ。
「師匠、陰陽師の稽古場もこんな感じでしたよ」
永久は解に続いて降り立ち辺りを見回す。
木造の壁には木刀や木の槍などが設置され、障子戸を通して柔らかな日差しが差し込んでする。
次々と順番に下りてくるパーティーメンバー。
人狼ガルム、鬼女ベニ、マユ、ドラキュラ伯爵は見慣れない光景に物珍しそうにキョロキョロ。
すると障子戸がすっと開き、日本庭園を背景に男が一人立っていた。
「待たせたな」
「「「「「「っ」」」」」」
解と同じ顔をした白い武道着姿の短髪の男。
男はスタスタと歩き、道場の真ん中まで歩くと襟元を正して正座した。
「如月創の最後の影、武の探求者、闘だ。俺の佩刀の名は妖刀『鬼神闘』、六 振の姉妹刀一つ。能力は特殊能力無効化」
白い武道着姿の男は腰に差した一振りを鞘ごと静かに抜いて手前に置く。
ゴトリ。
静寂の空間に質量のある音が鳴り響く。
ピエロ姿の狂戦士、邪。
黒ローブの死霊使、瘴。
歌舞伎装束の酒呑童子、妖。
今まで戦ってきた如月創の影、三人とは違って落ち着いた凛とした雰囲気を醸し出す。
刀を手前に置いたと言うことは、いきなりの戦闘はないと解は判断する。
「お前は顔を隠さないんだな」
解はどこか卑屈さを隠しきれなかった過去の三人と比べて言う。
「ふん。顔を隠すなど、己が存在を肯定できない愚か者だ。俺は正直、如月創なんてどうでもいい。武の道のその先、ただ、それだけを求めている」
武道着姿の男は短髪の頭を上げて、解を見上げる。
「そうか。では戦う理由がないな」
解の言葉を受けた武道着姿の男は自身に闘気を纏わせる。
静寂の空間に、そだけ熱い何かが宿り、緊張感がその場を支配する。
「貴公が手にした鬼神解、鬼神邪、鬼神妖の妖刀三振り。そして貴公の手にする鬼神解を賭けてもらう。もちろん、私が負けれは、この鬼神闘を俺の魂と共に進呈しよう」
武道着姿の男、闘は妖刀『鬼神闘』を両手で指し示す。
「わかった。少し話を聞かせてもらってもいいか」
目の前の男は静かに首を縦に振る。
解はできれば戦闘を避けたかった。この男に恨みもないし、見たところ悪意もなさそうだ。しかし、だからこそ察してしまう戦いを求める性が目の前にあった。
解は無言のパーティーメンバーを背に武道着姿の男の前に進み、同じように正座し、鬼神解を鞘ごと引き抜き、手前に置いて向かい合う。
カッコーン。
庭に設置された鹿威しが静寂を割る。
「六 振の姉妹刀の意味は?」
「六 振が揃ったとき、別れた力は一振りの刀となって神をも切り裂く。この場にある五振りと如月創の持つ妖刀『鬼神創』。この六振りが示す妖・創・闘・瘴・解・邪の六つが人の世の縮図。世界の理だ」
「我流六気操術を知っているのか?」
「別々の道を辿り、同じ真理に辿り着くことはよくあることだ。そうか、我流六気操術か。いい命名だな」
短髪頭の武道着姿の男、闘は爽やかに笑う。
「続けよう。如月創は人が辿り着いた神だ。人としてこの世界に転生し、勇者として魔族の大魔王プロトニを討ち神となった男。我らはその影」
カッコーン。
「……。そうか、これで確信が持てた」
解はニヤリと笑う。
「なるほど、気付いていたのか。我流六気操術、だったな。では、一つ問おう。人は何故戦う」
短髪頭の武道着姿の男、闘もニヤリと笑う。
「我流六気操術の『闘気』の根源は、戦い勝ち残り、相手を食らって糧とする。生の基本だ」
「……。話は尽きたな。では、闘り合うおう」
二人は目の前の刀を手にして立ち上がった。
「言い忘れていた。俺がこの刀を引き抜いた時、この空間では攻撃魔法も防御魔法も、身体強化魔法も全て無効化される。貴公の我流六気操術もな。あるのは己が純粋な闘気と身体能力。そして技。良いな」
「ああ、了解した」
スチャ!!
二人は向かい合って、それぞれの佩刀を引き抜く。
カッコーン。
庭から響く鹿威しの合図と共に如月創の影との最後の戦いの幕が開いたのだった。




