06-07 ぷっく、ぷっく、ぷっく
「っ……。柔らかいのに斬れない。なんだこいつ」
解は何度も妖刀『鬼神解』で斬り付ける。
が、ふわりと受け止められて傷すらつかない。
「お師匠、俺らも!」
人狼ガルムは妖刀『鬼神邪』で、鬼女ベニは妖刀『鬼神瘴』で切りかかる。
「「「!?」」」
三振りの妖刀をもってしても、ふわりふわりと受け止められて傷一つつかない。
「ぷく、ぷく、ぷくー!」
そればかりか斬り付ける度に、可愛い声を発して大きく膨れていく。
最初はこぶし大だったのに今では人間サイズ。
「ヤバいな。このまま、部屋サイズに膨れられたら俺達、ハリセンボンの針で串刺しだぞ!」
解はマユを守っているドラキュラ伯爵と永久に目線で船室から出るように合図。
ギー、パタン。
「師匠、ドアが勝手にしまって……」
永久は慌てて月花丸(三日月剣)でドアを斬り付ける。
「っ……。師匠、強力な結界の魔法で傷一つつきませんよ」
「ぷく、ぷく、ぷくー!」
そうこうしている内に、ハリセンボン型魔物はどんどん大きくなって既にゾウサイズ。
「ヤバいな。財宝に目がくらんでまんまと敵ボスの罠にはまったみたいだな。眷属化を試してみる」
ドラキュラ伯爵はハリセンボンの針を避けてマルッとした首にカプッ!
「解さん!ダメですね。押し返されて牙が刺さんないや」
「ぷく、ぷく、ぷくー!」
益々巨大化するハリセンボン型魔物は刃物が効かず、沈没船の内壁は結界魔法。
遠距離魔法攻撃をすれば、仲間を巻き込んで自滅する狭小空間。
八方ふさがりで、今や剣サイズとなったハリセンボン型魔物の針が迫りくる絶体絶命。
「ぷく、ぷく、ぷくー!」
ハリセンボン型魔物は可愛い声を上げながら徐々に大きくなっていく。
「ふわー、プクちゃん。そんなに怒ったらダメですよ。宝は取らないから小さくなってね」
マユが白い光を包まれた手で、ハリセンボン型魔物をナデナデ。
プシュー。
ハリセンボン型魔物は栓の抜けた風船みたいに元のこぶし大に縮んでいく。
「「「「「?」」」」」
解も、永久も、ドラキュラ伯爵も、人狼ガルムも、鬼女ベニも唖然。
「何はともあれ助かったな」
解と共に一同、ホッと一息。
「ぷっく、ぷっく、ぷっく」
小さくなったハリセンボン型魔物はマユの手の上で、気持ちよさそうにコロコロしている。
「師匠、もしかして『ぷっく船長』って誤字じゃなくてこいつのことじゃないですかね」
永久は豪華な椅子に横たわる朽ち果てた右手が義手の頭のない骸骨を見やる。
「マユに懐いているみたいだし、沈没船の宝に手を出さなければ襲ってこないみたいだな。ダンジョン配信の目玉になりそうだし、ここの宝はあきらめるか」
解は骸骨の前に落ちていたドクロマークの海賊帽を拾い上げる。
「ぷっく、ぷっく、ぷっく」
ハリセンボン型魔物は空中を泳いで、帽子の中に納まった。
恨めしそうな永久の視線を認めてハリセンボン型魔物はちょっと『どや顔』風の瞳をのぞかせた。
「それより、船長の椅子の脇に地下扉があるぞ。やつはきっとこの下だな」
解は、ドクロマークの海賊帽をそっと椅子の上の骸骨の膝上に置いて、床にある扉をゆっくりと引き上げた。




