06-06 『戦いは知恵』だって学びました
目の前の敵は海の黒い悪魔と呼ばれる魔物。
巨大な触手で航行する船舶に巻き付き、ひねり潰して海底に引きずり込むタコ状生物。
「お師匠、俺たちに腕試しさせてくれないか」
人狼ガルムは鬼女ベニと並んで解に尋ねる。
「いいけど、なんか策があるのか?ブラック・クラーケンは魔物図鑑によれば目が八つ、八本の足を独立して動かせるから死角がないらしい。二人じゃきつくないか」
解は思案する。
「力じゃ敵わないけど、知恵で勝つ。そうでしょ、解さん」
鬼女ベニはニヤリと笑う。
「それで、城塞都市ミートの薬屋で買った『化けの葉』を二枚分けてほしいんだけど」
ジジー。
解は鬼女ベニの言葉を受けて、無限収納ファスナーを引き、時空の狭間から『化けの葉』を二枚取り出す。
「いいよ。ほい」
それを受け取った二人は、『化けの葉』を頭に乗せて、
「「忍!」」
ボワッ!!
唱えて、ソード・フィッシュに化けて、ゆらゆらとブラック・クラーケンの元へと泳ぎ行く。
「師匠、魔物に化けて近づくんですね」
「そうらしい。お手並み拝見だな」
解と永久はニンマリ。
二匹のソード・フィッシュはブラック・クラーケンの胴体の近くで、人狼と鬼女に戻って妖刀『鬼神邪』と妖刀『鬼神瘴』をそれぞれ一閃。
ズサッ!
シュビッ!
いきなり八本の足の内、二本を失ったブラック・クラーケンは苦痛と怒りで墨をはいて防御しようとするがすでに遅い。
ズサッ、ズサッ、ズサッ!
シュビッ、シュビッ、シュビッ!
猛スピードで砂を駆ける人狼ガルムと鬼女ベニ。
ブラック・クラーケンの足はあっという間に刈り取られて、丸い頭に特徴的なロート、巨大なひょっとこ顔となる。
奇襲作戦成功である。
ブラック・クラーケンの丸い頭はあっという間に人狼ガルムと鬼女ベニに切り刻まれて光の粒となって鶏卵大のA級魔石となる。
二人が残りのヨーコのダンジョンの固有種C級魔物のソード・フィッシュ、パンチ・シュリンプなどを掃討している間に解は考え事。
クジラ型魔物『アオちゃん』もそうだが、ソード・フィッシュ、パンチ・シュリンプも、城塞都市ヨーコのダンジョン魔物は空中を泳ぐことができる。
この仕組みを解き明かせば、空飛ぶ魔道具が作れそうだ。時間が取れたら研究したいと思う解だった。
「師匠、終わったみたいですよ」
永久は砂の上をのほほんと歩いてドクロマークの沈没船へと向かう。
「ふわわわわ。ガルムさんもベニさんも忍者みたいですね」
「なかなかいい作戦だったな」
マユとドラキュラ伯爵は後に続く。
解はユラユラと空中に揺れる海藻をむしり取って手を放す。
海藻は吹き抜けとなったダンジョンの七階層へフラフラと浮かんでゆく。
「なるほど。魔物だけじゃなくても、重力に反する力が働いているってことか」
ジジー。
解は無限収納ファスナーのつまみを引き、時空の狭間に海藻を数本切り取って収めた。
パーティーメンバーに合流する解に人狼ガルムが尋ねる。
「お師匠、どうでしたか。俺らの作戦」
「解さんから『戦いは知恵』だって学びました」
鬼女ベニの顔も得意げ。
「悪い。ちょっと考え事していてあまり見てなかった」
「「っ……」」
人狼ガルムと鬼女ベニはがっくりとうなだれる。
「まあ、信頼してたから。次もよろしく」
解は二人の肩をポンと叩いた。
ダンジョンの九階層に横たわるドクロマークの海賊船に侵入する一行。
中には推し量ったかのように金銀財宝と魔石の山でキラキラ。
そして豪華な椅子に横たわる朽ち果てた右手が義手の頭のない骸骨。
胸の金のネームプレートには『ぷっく船長』と刻まれている。
「しっしっしっ、師匠もう、メチャ、テンプレですよ。でも、『フック船長』が『ぷっく船長』になってます。誤字ですかね」
「たぶんな。それにしても、笑えるくらいのご都合主義だな」
永久と解はニンマリ。
永久が財宝に手を伸ばそうとすると、一匹のこぶし大の小さな魚が寄ってくる。
「師匠、フグですかね」
「いや、ハリセンボンだな。体中に棘がある。っ……。永久、離れろ!そいつがラスボスだ」
解は俊足で永久の元に走り、妖刀『鬼神解で切りつける。
「「!?」」
ハリセンボンのような魔物はぷくっと膨れて、二回り大きくなって全身の棘を広げた。
こうして唐突に水の街、城塞都市ヨーコのダンジョンのボス戦が始まるのだった。




