06-05 言わなくて良かったとちょっと苦笑い
くうー、くうー。
「おー。よし、よし。こいつデカいけど可愛いな」
ドラキュラ伯爵に鼻を摺り寄せて懐く巨大クジラ型魔物。
「ふわー、大きくてほんとに可愛いです」
マユが巨大クジラ型魔物のザラザラの鼻先に手を添えてスリスリ。
巨大クジラ型魔物は目を細めて気持ちよさそうだ。
くうー、くうー。
「師匠、完全に懐いてますね。ドラキュラ伯爵さん。クジラさんの背中に乗ってみたいです!」
永久の目はキラキラ。
「ドラキュラ伯爵、そいつに乗って九階層まで下りたいんだけど、できるか?」
解は淡々と聞く。
「おお、聞いてみるな」
ドラキュラ伯爵は巨大クジラ型魔物に向かってゴニョゴニョ。
「っ……。眷属化した魔物と会話してる?」
鬼女ベニは驚愕。
ダンジョンの七階層の螺旋階段状の道に頭をつけてプカプカと浮かぶ巨大クジラ型魔物。
くうー、くうー。
「もう、このパーティーメンバー、チートすぎて俺ら霞むな」
しょげる人狼ガルム。
「まあ、私らだってそれなりじゃん」
それを励ます、鬼女ベニ。
「ドラキュラ伯爵。眷属化の条件はあるのか?」
解は今後の為に確認する。
「そうだな。俺の眷属は洗脳じゃないから、まず、素直な娘じゃないと。あと、目が綺麗な奴だな。意外と少ないんだよね」
ドラキュラ伯爵の顔は真剣そのもの。
「意味わからないけど……、そうか。運が良かったってことだな」
解は巨大クジラ型魔物の目を見て苦笑い。
解にとっては幼い時に養護施設で現世の繭と読んだ絵本、桃太郎のキビ団子の方がしっくりするのだが……。解はマユの横顔をチラ見する。
「ハート美人って事ですね、ドラキュラ伯爵。じゃ、私、名前つけますね。体が青いからアオちゃん」
永久は仲間が増えて笑顔。
くうー、くうー。プシュー!
空飛ぶ巨大クジラ型魔物は潮を真上に高く上げる。
「ふわー、永久さん。クジラさん喜んでる!」
マユの笑顔を見ながら、クジラだから『くー子』とか考えていた解は言わなくて良かったとちょっと苦笑い。やっぱり女子のセンスにはかなわない。
まあ、後で城塞都市ヨーコのギルドが正式な種族名を付けてくれるだろう。
と言うことでパーティー、一行は『アオちゃん』の背中に乗ってダンジョンの九階層へと降り立った。
九階層には海藻が生い茂り、中央にドクロマークの海賊船が横たわっている。
そしてそれを守るかのように触手をうごめかす、これまた巨大タコ状魔物A級魔物ブラック・クラーケン。
その周りにはヨーコのダンジョンの固有種C級魔物のソード・フィッシュ、パンチ・シュリンプなどが回遊している。
こちらは、解が読破した帝都トキオ剣術魔法学園の図書館の魔物図鑑にも記されており、ダンジョン以外の海でも生息し往来する船を襲う厄介者である。
「師匠、あれがダンジョンボスですかね」
永久は式神月花を召喚し、月花丸(三日月剣)に変化させて身構える。
「いや、A級魔物だから、おそらく別だな。襲ってくる気配がないから内部の何かを守っているのだろう」
解は冷静に分析する。
「グフフ、沈没した海賊船と言えば、やっぱり、内部は金銀財宝ですよね」
永久のやる気ががぜん上昇。
「この世界が現世の欲望でできているならそうなるな」
解と永久は顔を見合わせて久しぶりに悪い顔をした。




