06-02 モノマネは良くないから
水の街、城塞都市ヨーコ(現世気相:神奈川)ダンジョンの入り口は海上にある。
潮が引いた時に道が生まれる場所で、カモメが飛び交う小さな島にポカンと空いた穴が入り口だった。
「師匠、今回のダンジョンアタックはサーイの髭マッチョからの依頼なんですよね」
永久は真っ先に上陸して笑顔。久しぶりのダンジョンでテンションが高い。
「そうだ。城塞都市サーイのギルド長が正式に城塞都市ヨーコのギルドから受けた討伐依頼で目的はダンジョン配信用の魔眼カメラを設置だ」
解は成り行きを説明する。
「師匠のダンジョン配信構想が軌道に乗ってきましたね」
二人は異界に追放されて色々なことがあったが、少しずつこの世界に馴染んできている。
「まあな。港町城塞都市ヨーコは商人の街だから、こっちの自警団も前回の城塞都市ミートダンジョン配信で欲が出たらしい」
解は帝都トキオの自警団、桜龍会女親分サキと永久との出会い、強欲商人ゴウと意外ななれそめ、それらが現世の気相と繋がってこの世界を導いているのを感じる。
「強欲商人ゴウはウハウハですね」
「ああ、俺らもな。今日は貸切状態にしてもらったから、他の冒険者への能力バレを気にせずに気楽にやれる」
「いいですね!ところで今回のダンジョンは攻略されたことがあるんですか?」
「いや、無いらしい。六階層の中ボスまでだ。だから内部構造の把握、マップ作成。大ボス退治と盛りだくさんだな」
「ぐふふ。じゃ、報酬も半端ないってことですね」
二人が振り向くとマユ、人狼ガルム、鬼女ベニ、ドラキュラ伯爵が追いつく。
六人は岩穴を通ってダンジョンの内部に踏み入った。
水の街、城塞都市ヨーコのダンジョンは不思議な空間だった。
「師匠、足元が砂で歩きにくいですね。岩壁は海藻でヌメっているし、サンゴに触れたらそれだけで怪我しそうですね」
バシッ!
金槌のような腕を振り上げた一メートル近い巨大なカニ、ハンマー・クラブを、永久は三日月剣『月花丸』で一刀両断。
「永久、そうだな。水中みたいな景色なのに呼吸ができるってのが不思議だ。ってか、こいつら何で空飛んでんだ?」
解はこのご都合主義のアニメみたいなダンジョンの存在自体が現世の願望が生み出したものだと確信する。
ズサッ!
触手から放電しながら迫る半透明なビリビリ・クラゲを、解は愛刀『鬼神解』で瞬殺。
「そうですよね。わっ!師匠、剣がいっぱい飛んできた!」
バシッ!バシュ!
「ああ、これソード・フィッシュって言うらしい。帝都トキオ剣術魔法学園の図書館から借りた本に載って……、って、うざいなこいつ」
砂の中に隠れていたアタッカー・シェルと言う、二枚貝のような魔物が集団で飛び出してきて解に体当たりを仕掛ける。
ズサッ!ズサッ!
「ろくに見もしないで、出会い頭にバッサリだもんな」
「二人にとってC級以下の魔物は眼中にさえ入れないって感じだね」
後ろを歩く人狼ガルムと鬼女ベニは、相変わらずの無双ぶりに呆れまくり。
ホワホワとマユが魔石を拾う。
ドラキュラ伯爵は今回も雑用係、目玉状のダンジョン配信用の魔眼カメラを設置して回る簡単な仕事をそつなくこなす。
ダンジョンが変わってもピクニックのようなワチャワチャ会話は続く。
そこにボクサースタイルの人間サイズの海老、パンチ・シュリンプ登場。
鉄の剣では傷すらつかない固い甲羅、素早いステップ、目にも止まらぬパンチを繰り出す城塞都市ヨーコダンジョンの固有種。C級魔物のファイターである。
それがダンジョンに二列に並んで行く手を塞ぐ。
「師匠、美味そうですね」
「そこが残念。魔物は死んだら魔石だからな」
「師匠、いいこと思いつきました。パンチ一発でどれだけ倒せるか競争しましょうよ」
永久は三日月剣『月花丸』を尻尾にしまって駆ける。
ズガン、ズガン、ズカン!
片方の列のパンチ・シュリンプが次々と吹っ飛んで魔石に変わる。
「っ……。永久、無双系アニメのパクリだろ。モノマネは良くないからデコピンにしようぜ」
解は愛刀『鬼神解』を腰に納めて砂煙を上げて消える。
パチン!パチン!パチン!パチン!パチン!
海老の目玉の間を眉間と言うか知らないが、パンチ・シュリンプのそこを狙ってデコピンで一殺。
「ガルム!もう、意味わかんないんだけど。」
「うーん。パンチを見切ったつもりが、そこから指が飛び出してくる。リーチのトリックを使った必殺技。さすがお師匠、やっぱ、すげえなベニ」
人狼ガルムと鬼女ベニは、常識外の二人の無双っぷりにただ唖然。
魔石量産機となった二人を先頭に淡々と攻略されていく城塞都市ヨーコのダンジョン。
そしていよいよ中ボス部屋、六階層へと到達する。
六階層の中ボスはフライング・シャーク。空飛ぶ巨大サメ。
港町ヨーコのダンジョン固有種のB級魔物である。
「ガルム、ベニ。初見だろうけど六階層の中ボスはヨーコの冒険者ギルドのA級冒険者で攻略されたことがある。二人で行けるか?」
「もちろんですよ。うずうずしてたとこなんですよ」
人狼ガルムは持つものを戦闘狂にする妖刀『鬼神邪』をかざして見せる。
「私も抜かりなしです」
鬼女ベニは触れるだけで全てを腐らせる妖刀『鬼神瘴』を引き抜く。
砂の地面を蹴って走る二人にフライング・シャークの巨大なサメの顎が迫るのだった。




