05-19 じゃ、免許皆伝ですね、師匠
「師匠、んじゃ、帰りましょうか」
三振りの刀を肩に乗せて歌舞伎舞台の花道を颯爽と歩いてくる永久。
解はそれを逞しくなったなと思う。それはそれ、今、大切なのは……。
解は帝都トキオと五つの城塞都市のチンピラたちを映し出していた六枚の巨大ディスプレーを見上げて呟く。
「欲しいな。しかし……、あのサイズ……、無理だよな……」
解の目は無限収納ファスナーのつまみとディスプレーの間を行き来する。
「あっ!」
巨大ディスプレーの向こうで眼球ドン開きの各城塞都市の親分たちと聖女アンナ・マレッサの弟子たち、和服姿の桜龍会女親分サキ。
あちら側にも歌舞伎男、妖の指示を受けるためのモニターがあるのか。
解は舞台に駆け上がってVサイン。
「皆さん、ダンジョンバトルの迫力いかがでした?皆さんも各城塞都市のダンジョンを使って配信ビジネスをして一儲けしませんか?今みたいな戦いを『見せ物』にできます」
六台の巨大ディスプレーに映り込む各城塞都市の親分たちと和服姿の桜龍会女親分サキは悪い顔を決める。
「ここにちょうど六台の巨大ディスプレーがあるんですよ!各城塞都市と帝都トキオに各一台ずつ出血大サービスで販売します。ただし、引き取りはお任せします」
「師匠、大出血ですよ!」
永久は舞台に駆け戻り、妖の返り血を浴びた血濡れの姿を披露。
「永久、よくやった。あれだけ派手なバトルをみたら、ダンジョン配信の魅力は十二分に伝わっただろ。彼らの請求書もこれでチャラだな」
解は永久の頭をナデナデ。
「師匠、もう褒めるのそっちですか。でも、まあ、グフフフ。丸儲けですね」
解も永久も二ヒヒと悪い顔。
「仕方ないですね。街の復興につながりますので目を瞑りましょう」
聖女アンナ・マレッサの言葉で巨大ディスプレーの後ろにいる聖女の弟子たちは見て見ぬふりをして部屋を出て行った。
「ところで聖女様、実は七階層、八階層の角付き化け物の処理がまだでして。魔蟲の処理だけ、『浄化』でお願いできないでしょうか?後は人狼ガルムと鬼女ベニ、ドラキュラ伯爵と花の竜女が何とかします。なっ、そうだろ」
人狼ガルムは口あんぐり。鬼女ベニは眼球半飛び出し。ドラキュラ伯爵は竜女の頭をナデナデ。花の竜女はポッと顔を赤くする。
解は永久が肩に乗せる妖刀三振りを受け取る。
「ほい」
妖刀『鬼神邪』を人狼ガルムへ、
「ほい」
妖刀『鬼神瘴』を鬼女ベニへ、
「ほい」
妖刀『鬼神妖』をドラキュラ伯爵へと投げ渡した。
「師匠、私にも一振りくださいよ」
不満顔の永久。
「永久、お前はもういらないだろ。属性ビーム砲の包囲飽和攻撃と怒髪天。もしかしたら俺より強くなったかもしれないぞ」
オタク強度アップしたことを褒めた解の意図をくみ取れない永久。
「でへへ。そうですよね。じゃ、免許皆伝ですね、師匠」
「いや、俺の我流六気操術、何一つ学んでないし……」
「グフフ、土蜘蛛戦で目玉を引っこ抜く、痛みの与え方を師匠から教えてもらいましたよ」
「そうか。永久も……容赦なくなってきたな」
「それ、師匠が妖獣『次元大蛇』を瞬殺した時に私が言った言葉じゃないですか。もう」
ぷくっと頬を膨らます永久。
「やっぱり、お狸神ですよね」
その顔をみてマユに耳打ちする聖女アンナ・マレッサ。
ワチャワチャとA級越えの実質S級ランク冒険者一行は七階層、八階層の掃討戦に向かうのだった。
残る都市は三つ。
水の街、城塞都市ヨーコ(現世気相:神奈川)
火の街、城塞都市コーフ(現世気相:山梨)
そしておそらく、
人の街、帝都トキオ(現世気相:東京)
新たな冒険が始まろうとしていた。
「師匠ー、チョコがまだ出てないですよ」
ジジー。
解は今日も、無限収納ファスナーを引く。




