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大震災の元凶、地龍を倒して日本を救ったのに異界に追放されたので我流六気操術で無双します。  作者: 坂井ひいろ
第5章 城塞都市ミート編

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05-18 あのイライラ、何だったんだろ

歌舞伎男、妖(キョウ)の体から妖気が溢れ出す。


お茶らけた空気は影を潜め、妖気の質が変わっていく。


穴だらけだった体も歌舞伎衣装も徐々に修復されていく。


が、逆に顔の歌舞伎調の隈取(くまどり)は消え、素顔が現れる。


その顔は解と瓜二つ。


「ふん。化けの皮が剥がれてるよ。いいね。やる気出てきたじゃん。今、ちょっとその顔、ぶっ飛ばしたい気分なんだよね」


永久は歌舞伎男 妖(キョウ)の顔を見てニヤリと笑う。


「ほわっー、解さんが二人!?」


マユは不思議顔。


「「「なっ……聞いてねえよ」」」


人狼ガルムと鬼女ベニのハモりに加わるドラキュラ伯爵。


「あらまっ。ご兄弟!?」


聖女アンナ・マレッサは解と妖(キョウ)の顔を交互に見比べる。


「ああ、六つ子らしい」


解はサラリと言ってのける。


「また、また。私にはわかりますよ……。影ですね……、そうですか。影でしたか……、フフフ。私は解さんの方が二枚目だと思いますよ」


聖女アンナ・マレッサはうんうんと一人、納得顔。


「はい、解さんの方が素敵です」


何故か解に変わって答えるマユの顔はポッと赤くなっている。


戦闘中でもそんな会話が聞こえてしまう地獄耳の永久。いつもなら妖狐であることを呪うが、今日は心のイライラに火を注ぐ。


「ぐぐぐっ……。師匠の偽物風情が、酒呑童子(シュテンドウジ)の名を名乗るなんて片腹痛いんだよね」


永久の八つ当たりの罵声を浴びる歌舞伎男 妖(キョウ)。


「ほわっー、偽物ー」


ポンと手を叩く、マユ。


天然かよ!と永久のイライラメーターは上がっていく。


「「「妖(あやかし)」」」


人狼ガルムと鬼女ベニのハモりに加わるドラキュラ伯爵。


妖魔は化(ば)けるのが得意!名前も妖(キョウ)。なるほどーと納得する三人。


説明がややこしいしので、ほっておくことに決め込む解。


邪気のピエロ男、邪(ジャ)、瘴気の黒ローブの男、瘴(ショウ)、歌舞伎男、妖(キョウ)、そして影の元となる男、如月 創(ソウ)。自身の名、解(カイ)。


我流六気操術(がりゅうろくきそうじゅつ)の六芒星(ヘキサグラム)を構成する六気、妖気・創気・闘気・瘴気・解気・邪気。


いずれこの先、闘(トウ)と創(ソウ)、二人のそっくりさんが立ちはだかる。


そんな事を考えている間も、永久の煽りは続く。


「酒呑童子(シュテンドウジ)も、茨木童子(イバラキドウジ)も鬼族の階級称号。現世で全国各地の逸話、時代や場所、出身がズレるのがその証拠だよ」


歴史の生き証人、永久の言葉に歌舞伎男、妖(キョウ)は黙り込む。


「憧れるのはわかるけどまだまだ全然だね。増して師匠と並び立つなんて千年早いよ」


永久の侮蔑(ぶべつ)は続く。


「フハハハハ。九尾永久(きゅうび とわ)、減らず口もそこまでだ。お陰様で全快できた」


歌舞伎男、妖(キョウ)は一気に妖気を開放する。


「「「っ……」」」


その迫力に空気がビリビリと震え、ハモり組は一歩後ずさる。


「その痛覚麻痺の残念チート、どこまで続くか試させてもらうよ。生きる痛みを知らない残念な奴だから魔蟲なんてクズな発想が生まれるんだ」


永久の全身から、妖(キョウ)の発する妖気を上書きするような妖気が立ち昇る。


対峙する二人の頭は怒髪天(どはつてん)。立ち上る妖気で心なしか髪が金色に輝く。


あぁー、これもう。国民的大人気アニメキャラのスーパー……だな。と、現世から流れ込む気相の恐ろしさを感じる呑気な解。


「十分待ってやったから行くよ」


永久が爆ぜる。妖(キョウ)が爆ぜる。


刀を交える二人が発する衝撃波がダンジョンのボス部屋を地震のように揺らす。


ズズーン!!


ドッパーン!!


バシューン!!


グッガーン!!


飛び交い相殺し合う、妖(キョウ)の魔弾と永久のビーム攻撃。


ガギン!!


ズザリ!!


ゴギン!!


A級冒険者の目でも追えない激しい剣戟(けんげき)。


その余波が聖女アンナ・マレッサの結界魔法を揺らす。


互いに致命傷を避けながら、攻撃を重ねる消耗戦。


一瞬の隙が死を招く均衡が、三十分以上続いた。


攻防戦の後(のち)に立っていたのは永久だった。


妖(キョウ)の右胸に突き刺さる永久の持つ妖刀『鬼神瘴(きじんしょう)』


ゴブッ。


妖(キョウ)は大量の吐血と共に膝をつく。


「えへへへ。残念。弱点、知ってたんだ。エセ酒呑童子(シュテンドウジ)さん」


邪気のピエロ男、邪(ジャ)、瘴気の黒ローブの男、瘴(ショウ)そして師匠の解(カイ)。


如月創(きさらぎ そう)の影は全て心臓が右にあることを戦いを通して永久は知っていた。


「ぐがっ!」


妖(キョウ)の黒目が痛みで上にあがる。いわゆる白目。


断末魔の痛みが伝える死の恐怖。ピクつく肉体。全てが初めての体験。


「痛いだろ。弱点の心臓が『鬼神瘴(きじんしょう)』の力で腐っては再生する無限地獄。あの世で死者に詫びな」


永久は妖気を『鬼神瘴(きじんしょう)』にタップリと注ぎ込んで、妖(キョウ)の右胸に押し込んだ。


光の粒となって散っていく妖(キョウ)の姿。


光の粒は集まって、妖(キョウ)の手にしていた妖刀『鬼神妖(きじんきょう)』へと吸い込まれていく。


コトリ。


歌舞伎舞台に一振りの刀が転がる。


「……終わりだよ。あぁーもう、あのイライラ、何だったんだろ」


永久はスッキリした顔で、自分の頭をワシャワシャと掻き撫でた。


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