05-10 ミートの冒険者の悲鳴が聞こえてきそう
翌日、ドラキュラ伯爵を先導する形で、解、永久、マユ、人狼ガルム、鬼女ベニの六人のパーティーは木の街、城塞都市ミートのダンジョンアタックを開始した。
解はダンジョン内に取り付けられた見覚えのあるもの、サーイのダンジョン配信用に作った魔眼カメラを発見してニヤリと笑う。
……監視されているか。帝都トキオ剣術魔法学園の都市対抗チーム戦といい、鬼族の村といい、用意周到さは今までの敵とは違う。
解は出発前にホテルで行った打合せの内容を避けて、おそらく敵側が把握している内容についてドラキュラ伯爵に尋ねた。
「ドラキュラ伯爵、金の街、城塞都市サーイの冒険者ギルドでA級のライセンスを取ったんですか?」
「ああ、暇だったしね。悪目立ちしたくないから適当にね」
解の問いにトランシルヴァニア公国出身のイケおじ紳士風黒マント男は牙をちらりと見せて流暢な日本語で話す。
「「っ……」」
現世から追放された人狼ガルム、鬼女ベニでも知っている伝説の妖魔。本当の力量がA級に収まるはずない。
「師匠、このダンジョン、サーイやチーバと全然様相が違いますね。石壁の迷路なんて雰囲気ありますね」
バシッ!
「ああ、遺跡系のダンジョンだ。罠が多いと聞く。気を付けるんだぞ」
ズサッ!
「壁から仕込み矢とか飛んできたりして」
バシッ、バシッ!
「通路いっぱいの巨石が転がってくるとかな」
ズサッ、ズサッ!
「ちょっとお二人さん。早すぎですよ。ダンジョン魔物を視認する前に倒すとかどうなってんですか」
「そうですよ。魔石を拾って歩く私らの方が遅れるって、規格外すぎますよ」
一応、木の街、城塞都市ミートの上位のA級冒険者人狼ガルム、鬼女ベニは形無しである。
永久は式神月花が変化した三日月剣『月花丸』で、解は愛刀『鬼神解』で飛び込んでくる植物魔物を一刀両断しながら進む。
ポイズンプラントは即死性の毒を吐く間も与えられず、人食いフラワーは蕾を開いて自慢のアギトを見せる暇もない。
巨大ツタの怪物やら、トゲトゲの歩くバラとか多種多様な植物魔物が現れるが完全モブ扱い。
マユはチョコチョコと後ろをついて歩く。
不規則に壁が動いて袋小路が戻り道なったり、道が突然塞がってガス室になったりするようなダンジョンを最短コースで迷わず進めるのは、ドラキュラ伯爵の蝙蝠の特技を生かした超音波空間把握のおかげ。ミートの冒険者を悩ます崩れる床も、四方から槍が突き出るトラップも一度も遭遇しない。
「おっ、宝箱だ!」
人狼ガルムの声に鬼女ベニの顔が緩む。
ズサッ!
すかさず前衛の解が一刀両断。
宝箱に化けていたミミックは瞬殺されて魔石へと変化。
「師匠、こっちにもありますよ」
バシッ!
「あれれ、ミミックじゃなくて本物でした」
「気にするな。どうせ低階層だし、大した価値もない」
いやもう、売れば数日は暮らせる金貨になるんだけどなー。なんてミートの冒険者の悲鳴が聞こえてきそうだ。
ズサッ!
バシッ!
「師匠、もうこれ、草刈りと変わんないですね。草刈り機とかないんですか?」
「うーん。庭付きの家にすんだことないからー」
のんびりと会話を楽しむイカれた連中、解と永久。
「なんか最強パーティーすぎで俺ら霞むな」
「これもう、ダンジョンアタックじゃなくてダンジョンピクニックだわ。河原で石拾っている子供の気分」
人狼ガルム、鬼女ベニはドン引きしながらマユの後方警備をしながら魔石を拾って歩く。
こんな調子で一階層、二階層、三階層、四階層と踏破して階段を下りる。
ミート冒険者ギルド始まって以来の、五階層到達最短記録を作り出したのだった。




