05-08 エルフ族のお姉さんは顎が外れないか心配です
カラン、カラン。
解と永久、マユの三人は鬼女ベニに案内されて大通りに面する小さな薬屋に入った。
「いらっしゃいませ」
出てきたのは透き通るような真っ白な肌の背の高い細身の女性、両耳が長く尖っているのが特徴の綺麗な人だった。
「しっ、師匠。あの人、もしかしてエルフ族!?」
永久は解の手を引いて耳打ちする。
「永久、失礼だろ」
解は永久の頭をポンポンと叩く。
すると店員の女性が目を丸くして永久のところにやってきて屈みこむ。
「あらっ、あらあら。なんて可愛らしいお狸さんでしょう。初めて見ました。これ、プレゼントです!」
にっこり微笑んで永久の頭に葉っぱを乗せる。
「っ……。狐なんですけど!」
「えっ!えぇぇぇぇぇぇぇぇ。お狐さん!?」
綺麗なお姉さんは口元に手を当てて驚く。
「で、この頭の上の葉っぱは何なんですか!」
「両手を握って、人差し指を出して合わせてください。そう、そうです。そしたら『忍』って唱えてください」
綺麗なお姉さんの真剣な表情につられて永久は真面目な顔で指示に従い忍者ポーズ。
「忍!」
ボワッ。
白い煙と共に永久は小さな葉っぱを頭に乗せた緑のカエルになっていた。
「ゲロゲロ」
「あららららら。可愛いカエルさん」
綺麗なお姉さんはカエルの頭に合わせて小さくなった葉っぱを取る。
ボワッ。
白い煙と共に元の永久に戻る。
「この葉っぱは頭にのせてポーズをとって『忍』って唱えると、三十分だけ願った通りのモノに化けることができるんですよ」
綺麗なお姉さんはニッコリとほほ笑む。
「永久、お前、カエルになりたいのか!?」
「へっ……。何でだろ?なんでカエル……?師匠、自分のことが分からなくなってきました」
ポカンとする永久をよそに、解は葉っぱに興味津々。
時間制限はあるがメチャクチャ便利なアイテム。偵察やら身代わり、周辺のモノに化ければ身を隠すこともできる。
昔話の狸の変身アイテムっぽいところが笑えるが、シンプルな使い勝手は解好み。構造や仕組みも気になる。
「化けの葉っていいます。一回しか使えないのでお安くしときますよ」
ニッコリ笑う綺麗なお姉さんは商売上手。すかさず五十枚も大人買いする解。
「師匠、金遣い荒っ!」
永久とマユ、鬼女ベニの三人は口をあんぐり。
「でもまあ、この店は小さいけど商品の質はピカ一だから……」
鬼女ベニは苦笑い。
「ところで回復師向けの回復ポーションはあるか?」
「ありますけど……。ちょっとと言うかエルフ族特性なのでかなりお高いです」
綺麗なお姉さんは顔をしかめる。冒険者にしてはかなり若い三人、しかも童女連れ。
「仕方ないな。聖女アンナ・マレッサ仕込みのマユを回復するとなると……並みじゃ足りないし……」
「えっ、えぇぇぇぇぇぇ!聖女様のお弟子さん」
「ちっ、違います。ちょっと縁があって浄化を教えて頂いただけです」
マユはペコペコしながら顔を赤くする。
「っ……。回復師の最上位魔法!」
「グフフフ」
マユにだけいい顔はさせられない。永久はポケットをゴソゴソ。
ポト。
「お嬢ちゃん、何か落としましたよ。って、うそ……。A級ギルド証!」
狐耳の可愛らしい童女がA級冒険者、何者なんだろう。この人たち。
「そのエルフ族特製の回復ポーションをあるだけ」
ジジー。
解は無限収納ファスナーを引いて革袋を取り出す。ウィンド・バイクの特許料として強欲商人ゴウからせしめた金貨が入っている。
っ……。無限収納ポケット、しかも見たこともない新式!
ドスン。
木製の机が音を立てて凹む。
「金貨千枚ある。足りないか?」
金貨千枚は現世の日本円に換算して約一千万円。
エルフ族のお姉さん、綺麗な顔がアホ面になって残念な顔になっている!永久、ビックリ。
「じゃ、欲しいものは手に入ったし、ホテルとれたかな」
「師匠、ちょうどガルムから連絡来ました。いま、スピーカーに切り替えますね」
永久は耳につけてたインカムを外す。
『解さん、城塞都市ミート、一番の最高級ホテル手配できました!』
人狼ガルムの声が店内に響き渡る。
見たことない魔法通信機に最高級ホテル!?エルフ族のお姉さんは驚きすぎて顎が外れないか心配になって手で押さえた。




