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大震災の元凶、地龍を倒して日本を救ったのに異界に追放されたので我流六気操術で無双します。  作者: 坂井ひいろ
第1章 辺境の村キビ

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01-05 幼き日の記憶

その晩の話。


「ところで師匠、今回の件、師匠は持ち出しばかりで何一つメリットないですよね」


「永久ちゃん。何言ってんだよ。マユってが土蜘蛛に食われたら寝覚めが悪いだろ」


「顔、赤くして何ぬかしてんですか。師匠、現世の高校ではオタク&陰キャで非モテでしたよね」


「そっ、それは我流六気操術の探求と国家公務員としての守秘義務で能力を隠すためのれっきとした仕事でだな……」


「あっ、吉澤繭よしざわ まゆちゃん!」


「えっ、どこ?」


「師匠のクラスメイトが異界にいるわけないじゃいですか。それともあのマユっては師匠の憧れのと何かつながりがあるんですか。顔も背格好も、そっくりでしたよ」


「くっ、まだ良くわからんが、万物には手相みたいに『気相』ってのがあってな。マユって娘の『気相』が同じだったんだ」


解と同じ養護施設で育った吉澤繭よしざわ まゆ。彼女の中で満たされなかった家族を求める思いが異界のマユに繋がっているのかもしれない。


「『気相』?じゃ、この世界の住人は元の世界と『気』のエネルギーで繋がっているってことですか」


「おそらく、こちらの世界であのマユってが死ねば、元の世界の吉澤繭よしざわ まゆも……」


「師匠。師匠の真面目な顔はけっこう男前ですよ。ふふっ」


プーン、プーン、プーン。


ゾロ、ゾロ、ゾロ。


村人が用意してくれた冒険者テントの中。


無数の蚊が飛び交い、蟻が隊列を作ってやってくる。しかもなんか、現世の倍以上のサイズでデカくてキモイ。


アニメやラノベでは語られないが、未発達の文明レベルは現代の生活に慣れてしまうと想像を絶する過酷さなのである。


「もう、こいつらほんと、うざいです。式神、氷属性・雪花せっか召喚。変化、虫スプレー」


永久の頭に狐耳が飛び出し、お尻には九本の尻尾。


その一本が蜘蛛退治用に売られているホームセンターのスプレー缶に変わって永久の右手に。


シュ、シュ、シュー。


巨大蚊も巨大蟻も一瞬でコチンコチン。


「ざまあみろ。千年妖狐、永久様を襲おうなんて百年早いわ」


永久はどや顔で解を見詰める。


ジジー。


解は無限収納ファスナーの摘まみを引く。


空間が布のように裂け、その内側に、マンションのようなゴージャス空間がチラリとのぞく。


「俺、こっちで寝るから」


「師匠、私も師匠の衛生的で、エアコンバリバリの快適ホテルで寝たいです」


「式神、雪花スプレーがあるじゃん。あれ、冷凍スプレーだろ。自分に使えは暑さもへっちゃらだな」


「一晩中、妖気を使っていたら寝れないじゃないですか。お肌荒れ荒れ、目の下クマだらけじゃ明日の作戦にも響きますよ」


「しかしなー、ベッドは一つしかないからな」


「私、師匠を襲ったりしませんよ……」


口ではそういいながらも、手で口から出るよだれを隠してグフフと笑う永久。一世一代のチャンスである。


「……。そっ、そうだ。永久、お前、妖狐になれ。これなら問題ないだろ」


「それならぐっすり眠れる……って、師匠、もしかして私のモフモフ九本尻尾。狙ってます」


「いや、先日、アニメで見た、あれ、ちょっと気になっててな」


その後、二人は会話のバトルを繰り返したが、二人とも家庭を知らずに育った身。


体温を感じながら眠る誘惑には勝てなかった。


妖狐の九本のモフモフ尻尾に囲まれて眠る解。


その安心しきったおだやかな表情を見つめて、三メートル級の妖狐となった永久はちょっと母性本能をくすぐられながら眠りに落ちた。


外敵や緊急出動にそなえて浅い眠りしかとったことなく、普段はほとんど夢を見ない解。その日だけは違った。


-----


解の夢の中。


粗末な部屋で雑魚寝する児童養護施設の子供たち。小学校低学年を過ぎれば里親もほとんど現れない厳しい現実。


年端も行かない子供たちに毛布を掛けて回る天乃解あまの かい吉澤繭よしざわ まゆ


二人とも小学校五年生となり、施設の職員も養父のつてを諦めていた。


特に吉澤繭は、目立ち始めたその美しさが逆に災いして夫婦の里親候補から敬遠された。


「繭ちゃん……、俺、やっぱ冨士岡おじさんのところ、行きたくない」


「解、ダメだよ。解にとっては最後のチャンスなんだから。お金持ちで政治家」


繭は解の両肩を掴み、真っすぐ解の瞳を見つめる。


「保証人になる親がいない私たちは、どんなに頑張って高校を卒業してもまともな会社は雇ってくれない。一生負け組なんだよ」


「……。でも、俺は繭ちゃんとずっと一緒にいたいんだ。繭さえ守れれば……。好きなんだよ」


小学校五年の天乃解が、精一杯背伸びして吉澤繭という女性に告白した瞬間だった。


「解……。ありがと。私も解のこと、大好き」


繭はすぅーと息を吸ってからゆっくり告げる。


「でもね、解は頭もいいし、運動も天才的。それに能力を与えられた人間はちゃんと自分の役目を果たすべきだと思う。解にはその力があるんだよ」


この時、解は既に『気』を感じるという特殊な能力に目覚め始めていた。


後に日本の内閣総理大臣に上りつめる冨士岡洋ふじおか ようは目ざとくその芽を見つけ出していたのだ。


その後、天乃解は数奇な運命を経て我流六気操術がりゅうろくきそうじゅつをあみ出す。


「繭ちゃん……。俺、お金をいっぱい貯めて偉い人になって、ここのみんなも、繭ちゃんも絶対に幸せにして見せるから。だから……」


-----


解の夢の外。


「繭ちゃん……。モゴ、モゴ……」


寝言を言いながらこっそりと狐耳の人型に戻った永久の尻尾に抱きつく解の顔は涙にぬれていた。


「師匠……。師匠が金に固執するのは、ちゃんと理由があるんだ……」


師匠が転校し、吉澤繭とクラスメイトとして再会する経緯いきさつを知っている永久は解をきつく抱きしめた。


「師匠……、世界がどんなに残酷でも私は師匠の見方だよ」


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