05-01 ドドドドド。バヒューンー!!
ここは帝都トキオを守る城壁の外。早々たるメンバーが解たちの旅立ちを見送るために集まっていた。
彼らの前に解と永久、マユの三人が立っている。
「色々とご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。これからもご迷惑をおかけしますので、よろしくお願いします」
剣術魔法学園アラン・グラント学長に向かって、旅立ちメンバーを代表して解はペコリと頭を下げてにっこりと笑った。
この期に及んで、まだ問題ごとを投げ込むつもりかよと学長の胃はキリリと悲鳴を上げる。
「っ……。学園の生徒会問題と城塞都市チーバの件は了解した。君たちのお陰で若い芽がどんどん育ってきておる。わしも年でなそろそろ引退だな……」
「学長、グフフ。私、戻ったら復学しようかなー」
永久がニッコリ。学長の胃はその瞬間、よじれた。もう、無理!解以上の問題児。帝都の裏社会を掌握した童女なんて聞いたことない。
「うぐっ……、永久君。君に教えることは、まったくもって、絶対、不可逆的に尽きたんだよ。何なら最優秀学生修了書をこの場で発行してもいいんだよ。ハハハ」
乾いた笑いしか出てこない学長を追い込む永久。
「それ、食べれますか?」
くっ、ほらきた。意味わからん。食えるわけないだろ。そっ、その顔、童女のウルウルの瞳。やめてほしい。何度、騙されたことか。
桜龍会の女親分を酔い潰したって聞いているんだよ。酒樽三つ空にして……。
「そ、そうだな。私が悪かった。今度、私の秘蔵のブランディでもな……」
「グフフ。子供にお酒を進めるなんて教育者としてクズですね。いただきます!」
その横で聖女アンナ・マレッサとマユはペコペコ、ペコペコと別れの挨拶一割、世間話九割の会話をしている。
桜龍会女親分サキと強欲商人ゴウは酒盛り。
城塞都市サーイ領主ガンダール・サーイ伯爵と新領主エレーナ・チーバ伯爵は真剣な顔で領地運営の相談。
身バレを防ぐ仮面の元城塞都市チーバA級魔導士少女五人組とアヤ・サーイ伯爵令嬢は美容談義。
一人泣き崩れるボブ・アーレン男爵子息。
カオスと化す見送り部隊を眺めて、現世ではボッチライフを過ごしていた解は不思議なものだなと感じた。
そういや現世では永久もマユも孤立しがちだった。
「気相の力か……」
解はそっと呟く。
「お師匠様、お別れですね。次に会うときはお師匠様の足手まといにならないくらいには強くなってますから……ミートの街をご案内できなくてすみません」
木の街、城塞都市ミートのヤンガ村出、勇者ギフトを持つノヴァは涙をこらえて唇を噛む。
「よろしくな」
解は大きな手でノヴァの頭をワシャワシャとする。ノヴァの後ろにはミートチームの仲間たち。解はメンバーに軽く礼をする。
いつまでたっても終わりそうにないので、解は全員を見回してから強欲商人ゴウに声をかける。
「ゴウ、鍛冶屋のタキに頼んでいた例のものが出来たんだってな」
桜龍会女親分サキと酒盛り中の強欲商人ゴウはニヤリと笑う。
バシュー、ヒューン、ドッバーン。
彼はポケットから取り出した魔力照明弾を上げる。
帝都城壁の陰から躍り出た何かが二本の土煙を上げて迫りくる。近づいてくるにしたがって鮮明になる姿。それはタイヤのないバイク。
バヒューン、ドドドドド。
解たちの前に止まり、揃って片手を挙げたのはA級変身ベルトで、お揃いのミヤマクワガタヒーローに変身したギルド長ヨウと元露出度ガン高受付嬢の妻。
口をあんぐりと開けてフリーズする見送り部隊。
「師匠、浮かんで走るなんて、これアメリカの超有名SF映画のパクリですよね」
永久は解の肩を叩いて周りに聞こえないようにそっと耳打ち。
「いや、変身ベルトにはやっぱりバイクな。ウィンド・バイクって名付けた。魔石を仕込んだ風魔法を使ってホバークラフトみたいに浮く仕掛けでな……。うんぬんかんぬん……」
ぐっ……。師匠の技術説明は長ったらしくて、その上、難解。
ゲッソリするので、必要事項を勝手に類推してぶった切りにかかる永久。棒読みのセリフで先回り。
「三人だから一台はサイドカー付きなんですね。これなら橋があまりないこの世界でも川を突っ切れますね。ラノベやアニメじゃ語られないけど馬車じゃ遠回りばっかりでしたから、でしょ!」
「……」
意気揚々と永久に向かって説明し始めた解は残念そうな顔で口をパクパク。
「すっ、すんげー。かっちょいい」
さっきまで一人泣き崩れていたボブ・アーレン男爵子息の瞳はキラキラ。
男子だけでなく仮面のA級魔導士少女五人組とアヤ・サーイ伯爵令嬢、女親分サキの瞳もキラキラ。
なぜか、何かと引退をほのめかすご老体、剣術魔法学園アラン・グラント学長の瞳もキラキラ。
解は強欲商人ゴウに耳打ちする。
「あいつらに割賦販売で売ってやれるか?」
超久しぶりに、強欲商人ゴウの頭の中の強欲レジスターはフル回転。
チーン!
「そりゃー、もちろんですとも」
「師匠、借金で人を縛り付けて言うこと聞かせるんですね。グフフ」
三人は久しぶりに悪い顔になった。
なんやかんやで時間だけが過ぎていく。
「そろそろ行こうか。マユ」
解はマユをサイドカーに乗せてウィンド・バイクにまたがる。永久も狐飾りのついたウィンド・バイクに跨る。
解、マユ、永久の三人はウィンド・バイクに乗ったまま、見送り部隊の面々と次々にグータッチして別れた。
ドドドドド。
荒野を目指し、三人は風と共に去っていく。
バヒューンー!!




