04-22 居酒屋の領収書
学長室での話は続く。
解はアヤとボブにはちょっと荷が重いとは思ったが、剣術魔法学園内に不穏な者が残っていないとも限らない。
解は集ったメンバーに全員に都市対抗チーム戦の裏と表で進行している魔蟲を含めた今までの経緯を説明した。
自分たちとドラキュラ伯爵の身バレをしないように注意しながら。おそらく、この先の戦いは解も永久も力の出し惜しみはできないだろう。
ちなみにドラキュラ伯爵は蝙蝠となって既に偵察の為に木の街、城塞都市ミート(現世気相:茨木)へと旅立っている。
「魔蟲か。なるほど、恐ろしい話じゃな。それで三人は城塞都市ミートに向かうために退学すると」
アラン・グラント学長は驚きを隠せない。
「しかし、よりによってケン・ムラーイ帝都皇帝陛下が関与しているとは……」
城塞都市を監督する二人の伯爵にとっても厄介ごとである。
「帝都トキオを含めて各都市でも魔蟲による市民の鬼化が起きるかもしれません。市民の不安をあおらないように内密に対策をお願いします」
解の言葉で、その場の空気は一気に冷え切る。
「そうだ、対策チームを作るならメチャクチャ優秀で打ってつけの人がいます」
「解君の見立てなら間違いないだろう。で、その人は?」
付き合いの長い城塞都市サーイ領主、ガンダール・サーイ伯爵は頷く。
「城塞都市サーイギルド長ヨウです。脳筋を装ってますが有能です。それと超有能商人ゴウもつけます」
「むっ、むっ……」
ガンダール・サーイ伯爵は目を見開く。あの短期間でギルド長ヨウの才能に気付くとは。
解……、何者なんだ。絶対に十八歳の学生なんかじゃない。
ガンダール・サーイ伯爵はただの切れ者ではない。彼のギフトは『魔眼』。人の才能を見抜く力。そのギフトをもってしても解の底が見えない。
「師匠、じゃ。桜龍会サキ親分たちにも加わってもらいましょうよ。せっかく私の配下に加えたんですから」
「っ……」
アラン・グラント学長の頭の中で何かが繋がる。解とマユを面接した最初の日、遅れてきた永久が解に小声て伝えた一言『街の掌握、バッチリです』。
アラン・グラント学長は先延ばしにした案件に口をパクパク。
「桜龍会と言うのは?」
ガンダール・サーイ伯爵は桜龍会が帝都の裏社会を牛耳るヤクザ者と知っていて永久に尋ねる。
「えへへ。帝都トキオの庶民の平和を守る自警団です」
シレッと嘘をつく永久。ガンダール・サーイ伯爵の『魔眼』を使っても底が見えない輩がもう一人。しかも童女。わからん。
自分のギフトを使っても計れない存在。もう、どうにでもなれとサジを投げる。
そんなことになっているとは知らず、都市対抗チーム戦の観戦を終えたギルド長ヨウと元露出度ガン高受付嬢の妻、付き添い兼お世話役の強欲商人ゴウはのほほーんと帝都トキオ観光に繰り出していたのだった。
その夜、三人は帝都の居酒屋で出会った気っぷのいい女性、帝都トキオ自警団を名乗る桜龍会のサキ代表と朝まで宴会を繰り広げることとなった。
「お姉さん!無茶苦茶、あっしのタイプです」
ぐでんぐでんに酔っぱらった強欲商人ゴウはハニートラップにどっぷりとはめられていたのだった。
翌朝、ガンダール・サーイ伯爵はギルド長ヨウと強欲商人ゴウが差し出した居酒屋の領収書を無言で見詰める。
領収書には桜龍会代表サキの文字で、
『目が飛び出るほどの超ぼったくり料金』
『宛名:城塞都市サーイ領主殿』
『但し書き:帝都の平和維持活動費(飲み代)として』
と記されている。
ため息を吐き、逃げ切れない彼らに裏の仕事を依頼するのだった。




