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大震災の元凶、地龍を倒して日本を救ったのに異界に追放されたので我流六気操術で無双します。  作者: 坂井ひいろ
第4章 帝都トキオ 学園編

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04-19 熱々イベントを見て見ぬふりをする

優勝候補の帝都トキオチームが敗退し、最終決戦は城塞都市ヨーコチームと城塞都市サーイチームとなった。


黄色い声に包まれる城塞都市ヨーコチームに対して、城塞都市サーイチームは意外にも男性陣から熱い視線を注がれていた。


解の活躍もあったが、原因は圧倒的にマユである。


サーイチームは全員、帝都トキオ剣術魔法学園のブレザーと目立たない格好をしていたが、それでも圧倒的に輝いているのだから仕方ない。


野太い声の応援が飛び交い、勘違いしているアヤ・サーイ伯爵令嬢はピンクの縦巻き髪をクルクルしている。


「グフフフ。師匠、うかうかしてらんないですね」


永久は解に耳打ちする。


「解は知るか」


解はちょっとすね気味である。


当のマユはキョトンとしながら手を振る始末。


ゴリラ男、ボブ・アーレン男爵子息はマユへの熱い視線を拳で撃ち落とそうともがいている。


とても残念な城塞都市サーイチーム。


対する城塞都市ヨーコチームは場慣れしている。まるでグラビアの写真撮影のようにさり気なく映えするポーズをクールに決めている。


その度に黄色い声援が津波のように沸き起こる。


「酔っているな。休憩時間を入れて既に一時間以上、蟲の毒に侵され続けている。永久、リミットがどこにあるか分からないが暴走する覚悟をしておけ」


「了解です。師匠」


二人は真面目な顔になって頷く。


「それでは、決勝戦、城塞都市ヨーコチーム対城塞都市サーイチーム戦、始め!」


剣術魔法学園アラン・グラント学長の開始の合図と共に各チームの五人は礼をしてかまえた。


最初に動いたのは城塞都市ヨーコチーム。


迎え撃つ、ゴリラ男の猛ラッシュパンチを華麗な体さばきでいなし、気を拳に乗せて打ち込んでくる。


悪役伯爵令嬢のオホホ魔法攻撃も派手なだけで一向にあたる気配がない。


しかし、キャパ限界で何度も死にかけては再生するという地獄の特訓を受けた二人のタフネスさも半端ない。


物量攻撃で前線をキープしている。


そんな中、解は冷静にヨーコチームの気相の変化を探っていた。


最初は解と同じ闘気と永久と同じ妖気が拮抗していた。


しかし、次第に我流六気操術がりゅうろくきそうじゅつで言う六芒星ヘキサグラム上で闘気は対極となる邪気へ、妖気は瘴気へと変化していく。


「永久、来るぞ」


「師匠、ガッテンです」


解と永久は、ゴリラ男と悪役伯爵令嬢の前に躍り出て二人をマユの防衛に回らせる。


対する城塞都市ヨーコチームの五人は麻薬患者のようにいびつな顔をしていた。涙と鼻水を垂らし、舌が垂れだしている。


やがて眉は吊り上がり、口が裂けて牙が覗く。黒目は上に持ち上がり白目が深紅に染まっていく。


頭の魔石角が紫色に発光し、浮き上がって額の血管の中で魔蟲の触手が蠢く。


肌は紫色に染まり、筋肉がパンパンに膨れ上がる。骨が軋む音が響き、腕が伸びて爪が肥大化する。


オーガ化である。


鬼爪シャドーネイルが二人に襲い掛かる。


解は闘気を纏わせた木刀で、永久は狐火を纏った拳で応戦するが能力を絞った戦いでは分が悪い。


解も永久も生傷が増えて次第に押し込まれる。その中で、解は冷静に時間を気にしていた。


生身の人間では耐えられない邪気と瘴気の奔流。戦いの中でそれを引き出すことで気の枯渇を狙う。


「今だ、マユ。よろしく」


「分かりました」


マユは静かに両手を合わせて高く上げる。


「神の御霊よ、光となりて彼らを救い給え。『浄化ピュリフィケーション』」


回復師ヒーラーの最上位魔法が水平な光の輪となって衝撃波を伴いながら広がり走る。


眩い光に観客たちは目を閉じる。


光の輪が晴れた闘技場の石舞台の上で城塞都市ヨーコチームの五人は眠るように横たわっていた。


ヨーコチームの五人が次々と目覚める。


額の上に張り付いた貝殻のような角型の魔石がポトリと落ちる。


ヤドカリのような足をもがき動かす蟲はみるみる干からびて角型の魔石と共に粉になって消えた。


「あれっ、ここどこ?俺達、何してたんだっけ……?」


立ち上がって顔を見合わせる城塞都市ヨーコチームの五人。戦いの記憶も蟲を植え付けられた記憶もないらしい。


「っ……。完璧完全、不可逆的なフツメン。モブ・オブ・モブ」


悪役伯爵令嬢ことロングネイルのピンクの縦巻き髪の少女アヤ・サーイはガクリと首を落とした。


観客席の女子生徒は急ごしらえの応援団扇をポトリと落とし、黄色い歓声もプツリと途絶える。


どうやらオーガ病中毒者には人外の力を得るだけでなく、イケメンになれるという現世男子の欲望がつまった世にも恐ろしい副作用があるらしい。


解はマユの肩を叩く。


「マユ、ありがとな。聖女アンナ・マレッサ様の特訓に耐えてくれて」


「みんなの為ですから」


マユは魔力を使い果たして解の肩にもたれかかった。それを優しく受け止める解。解はマユをお姫様抱っこして救護室へと向かう。


アヤ・サーイ伯爵家令嬢がA級魔導士少女五人組と特訓を積み重ねる横で。


ボブ・アーレン男爵家子息と勇者ノヴァが解と特訓を積み重ねる横で。


マユは一人、聖女アンナ・マレッサ様に指導を受けて壮絶な精神修行を積み重ねていた。


ひとりチョコを食べながらノ・ホホーンと桜龍会おうりゅうかい女親分と駄弁ダベっていた永久は、解とマユの熱々イベントを見て見ぬふりをするしかなかった。


帝都トキオ剣術魔法学園の都市対抗チーム戦の決勝戦に相応しい拍手喝さいの中、帝都皇帝ケン・ムラーイと取り巻きの生徒会三役は無言で席を立ち消えた。


その後を追う一人の影。身バレを防ぐため仮面を被って観戦していたドラキュラ伯爵である。


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