04-18 剣術魔法学園アラン・グラント学長、涙す
いよいよ残りの対戦ガードは二枚。
これを勝ち抜けばトキオ剣術魔法学園の年に一回開かれる一大イベント、都市対抗チーム戦の勝者が決まる。
第四回戦、第一回戦勝者サーイチーム対第二回戦勝者ミートチーム。
回復師マユ率いる金の街、城塞都市サーイチーム。
城塞都市サーイの問題児と城塞都市サーイ領主ガンダール・サーイ伯爵に押し付けられた新参者チーム。知名度もなく、前回は暴力的圧勝で観客のドン引きをまねていてる。
一方、勇者ノヴァ率いる木の街、城塞都市ミートチーム。
城塞都市ミートの期待を一身に背負って、勇者枠で入学したにも関わらず魔力蓄積量が増えずに虐められっ子となったノヴァと虐められ役に落とされるのが嫌で虐め役回っていた新入生チーム。心は弱いがポテンシャルはピカ一。
闘技場を見詰めるトキオ剣術魔法学園アラン・グラント学長の感慨はひとしおである。
アラン・グラントの視線を受けて貴賓席の白いタイツにかぼちゃパンツを着こなす男はニヤリと笑った。
「それでは、第四回戦、対城塞都市サーイチーム対城塞都市ミートチーム戦、始め!」
剣術魔法学園アラン・グラント学長の開始の合図と共に各チームの五人は礼をしてかまえた。
最初に動いたのは勇者ノヴァ。闘気を全身に巡らせてサーイチームの前に立ちはだかる。
全身を覆う古傷が、かつての少年の弱弱しさを払拭し、勇者の格を示している。
城塞都市ミートの応援席は息を飲み、ノヴァを虐めていた先輩たちの足は震えた。
解は飛び出そうとするゴリラ男ことボブ・アーレン男爵子息の肩を押さえた。
「ボブ、悪いな。役割を破って悪いがここは俺に任せてくれ」
ボブ・アーレンは静かに頷き、回復師マユを先頭にサーイチームの面々は一歩後退した。
我流六気操師、六芒星の一つ『闘気』を使った初の一騎打ち。手出し無用の師弟対決である。
勇者ノヴァは城塞都市ミートチームの四人の仲間に向かって振り向く。彼らは無言で頷き一歩下がった。
「ノヴァ、いい顔になったな」
解は木刀を構えてニヤリと笑う。
「お師匠、胸を借りさせていただきます」
小さな少年は負けずと木刀を構えて笑い返す。
二人はふっと息を吐き、同時に丹田に力を込める。
ズバッ!
バシュー!
ガキン!
一瞬にして両者相手の間合いにはいり、振り下ろされる木刀。
闘気で強化された木刀が交わり、はじけ飛ぶ闘気が観客席の防御結界を揺らす。
両社の足元の石床にヒビが走り、欠けた石が闘気に呼応して宙を舞う。
力と力のぶつかり合い。
一瞬でも目を離したら大切な何かを見逃したと感じさせるそんな戦いに観客たちは息を飲む。
ズバ、ズバ、ズバッ!
バシュ、バシュ、バシュー!
ガキン、ズッゴーン!
解と勇者が木刀を振るたび、交えるたびに揺れる闘技場。
「っ……。ノヴァのやつ、仲間から気を貰っているのか」
勇者ノヴァの背後で祈るミートチーム四人のヘソの辺りからキラキラと光る気があふれ出し、陽炎のように揺らめきながらノヴァのヘソから丹田に吸収されていく。
ズバッ!
バシュー!
ガキン!
再び木刀を交えて向かい合う二人。
「ノヴァ、いい仲間を手に入れたようだな」
「今はまだ、お師匠のチームには及びませんが、この先は分かりませんよ」
二人は木刀越しに笑い合う。
解は後方に飛びノヴァとの距離をとる。木刀を腰に納めて居合斬りのポーズ。
すかさずノヴァも後方に飛びのき、同じように居合斬りのポーズ。
ズバッ!!
二人同時に闘気を木刀に乗せて放つ。
ガギーーーーン。
解の発した刃状の闘気が、ノヴァの発した刃状の闘気を切り伏せて進む。
解の刃状闘気は軌道がズレ、ノヴァの右頬をかすめる。
気をノヴァに供給しつくした城塞都市ミートチームの四人の仲間は石床に膝をつく。
「お師匠、まいりました」
ノヴァは右頬の傷から流れ出る鮮血を拭うことなく礼をして仲間の元へと戻っていた。
パチ、パチ。
剣術魔法学園アラン・グラント学長は目に涙を浮かべ、気が付いたら立ち上がって拍手していた。
パチ、パチ。パチ、パチ。パチ、パチ。パチパチパチパチ、パチパチパチパチ……。
観客席から湧き上がる鳴り止まぬ歓声すら忘れてしまう拍手の渦の中、城塞都市ミートチームの五人は互いに肩を支え合って去っていった。
「第四回戦、勝者、城塞都市サーイチーム!」
剣術魔法学園アラン・グラント学長は厳かに宣言した。
こうして、帝都トキオ剣術魔法学園の都市対抗チーム戦は決勝戦を残すのみとなった。
皇帝席に座る帝都皇帝ケン・ムラーイはニヤリと笑い、城塞都市ヨーコチームの観戦席に座っていたアイドル風細マッチョイケメン五人組は無言で席を立ち控室へと戻っていった。




