04-15 探し物の行方
誰もいない生徒会室の中、解はあるものを探していた。痕跡を残さないように机やロッカーの中を探っていく。
各種大会のトロフィーや文化祭の看板。会計資料や学内新聞の原稿。雑多にモノが押し込まれた空間は思いのほか雑然としていた。
解は部屋の中で一つだけサイズの異なる会長机の一番大きな引き出しを引く。中には何も入っていない。
ここでも無いか……。妖気の痕跡は感じられるが……。
散らかっている部屋の机の中が書類や文具もなく空っぽなのは引っかかったが、解はそっと引き出しを閉じた。
ガチャリ!
入り口のドアノブが回転する音。
解は妖学迷彩マントのフードを被って姿を消す。
「解様。まずいことになりました」
桜龍会女親分サキがドアから顔を覗かせて小声で解を探す。
「っ……。透明マント!?」
妖学迷彩マントのフードを取り姿を現す解。生首の突然の出現に女親分サキは思わず口を押えてから小声で言った。
「悪い……。で、どおした」
「生徒会長と数名がこちらに向かってます」
「わかった。こちらへ」
ジジー。
解は無限収納ファスナーからもう一つのフード付き妖学迷彩マントを取り出して女親分サキに渡す。
「っ……。無限収納ポケット!?」
「解様、どんだけ高額アイテムをお持ちなんですか?」
「質問は後だ」
解と女親分サキはマントを被って生徒会室の隅で姿を消す。
一瞬の静寂。廊下を駆けてくる複数の足音。生徒会室のドアが開き生徒会長と生徒会幹部二人が入ってくる。
ジャケットのエンブレムは帝都。胸のバッジは生徒会長、生徒会書記、生徒会会計。
「ヤニ・マリファ会長、本当にアレを使うつもりですか?」
生徒会書記バッジの男子生徒が尋ねる。
「皇帝ケン・ムラーイの指示だ。さすがに逆らえないだろ、べリス・コカ書記」
生徒会会長バッジの男子生徒が憮然とする。
「しかし、皇帝ケン・ムラーイは……。信用が……。置けないというか……」
生徒会会計バッジの男子生徒が口ごもる。
「ドク・タイマ会計、めったなことは言うな。俺たちにできることは指示に従うことだ」
生徒会会長バッジの男子生徒が声を潜める。
生徒会長ヤニ・マリファは帝都トキオ侯爵家次男、生徒会書記べリス・コカは帝都トキオ伯爵家次男、生徒会会計ドク・タイマは帝都トキオ子爵家三男。
何れも家督を継げない彼らにとって帝都トキオの高位役職に就職するには上の言葉は絶対である。まして現皇帝ならなおさらである。
「開けるぞ。三人同時じゃないと開かないからな」
生徒会バッジの男子生徒三人は先ほど解が開いていた会長机の一番大きな引き出しを開く。
何もない引き出しの中に三人そろって手をかざす。
魔法陣が浮かび上がり、消えるとそこに人一人がやっと通れるくらいの階段が現れる。
三人は会長の椅子を踏み台にして中に消えた。
「っ……。アニメかよ」
やっぱり、国民的アニメの人気は侮れない。気相でつながる異界の願望。
「……アニメ!?」
女親分サキの疑問をスルーする解。
「いくぞ」
「えっ?」
「現場を確認するのが一番だ」
「しかし、魔法陣が閉じたら……」
「大丈夫、この部屋の気相は把握した。閉じても戻れる」
ジジー。
解は無限収納ファスナーを引いて見せる。
「転移石板と原理は一緒だ。便利だろ。みんなには内緒な」
女親分サキは息を飲む……。何者なんだ、こいつ。ただ者ではないのは知っていたが、戦闘以外でももはや底が見えない。
二人は妖学迷彩マントで姿を消して三人を追って階段を下りた。
階段を下りた先で二人が見たものは魔石の貝殻を背負った魔蟲の飼育容器。
震える手で保育器に手を伸ばす生徒会書記べリス・コカ。
「気をつけろよ。取りつかれたら鬼になっちまうからな」
ガラス容器を持って待ち構える生徒会長ヤニ・マリファ。
「こんなものでA級魔人デーモンと同じ力が得られるなら……」
二人の作業を見守りながら生徒会会計ドク・タイマはゴクリとつばを飲み込む。
「で、ヤニ・マリファ会長、どのチームに渡すんですか」
「ああ、城塞都市ヨーコチームだ。べリス・コカだって帝都の親戚を人体実験にはしたくないだろ」
「それじゃ、第三回戦で帝都トキオチームが敗退しまうのでは……」
「ドク・タイマ。お前、子爵家三男だろ。ヒーロー気取りの長兄チームなんてクソくらえって言ってなかったか」
「そっ、そうですけど……」
「皇帝ケン・ムラーイは所詮小物、影の組織に操られる傀儡だからな。これを機会に帝都に蔓延しだした鬼病の矛先を城塞都市ヨーコに擦り付ける姑息な作戦さ。城塞都市ヨーコチームは既に鬼病中毒者だからな。今更助からん」
妖学迷彩マントで姿を消した解と女親分サキは、生徒会長ヤニ・マリファが五匹の魔蟲をガラス容器に収めるのを見届けてから、三人に気付かれないように階段を上った。




