04-08 俺は悪目立ちしたくないんで智謀知略だな
帝都トキオ剣術魔法学園に入学して一週間がたった。
授業形式は現世の大学に近く、学年と所属学部はあるが個人の特性に合わせて攻撃魔法、防御魔法、武術、剣術、回復の専門分野から自由に選択して受けられた。
年齢別のクラスも存在するがイベントがメインで、授業はギフトによる影響で能力差のバラツキに最適化した形となっている。
午前中は座学、午後は実技。放課後は部活の代わりにチーム活動といった感じである。
「だいぶ学園にも馴れたし、そろそろ、秋の都市対抗チーム戦に向けた修練を始めたらどうかな」
解は空き教室で車座になるチームメンバーに切り出す。
「夏休みの合宿もあるし、私も準備は早い方がいいと思うわ」
マユは役割分担の紙を配る。
前衛 ボブ 拳闘士、切り崩し担当
前衛 解 剣士、戦略担当
中衛 アヤ 攻撃特化魔導士、主力攻撃担当
中衛 永久 防御特化魔導士、魔法タンク担当
後衛 マユ 回復師、魔導士、身体強化付与担当兼リーダー
「ウホッ、アタッカーかよ。むふふ」
ゴリラ男ことボブ・アーレン男爵子息、C級拳闘士は自分が前面で活躍する姿を想像してほほ笑む。
「くっ……。五属性魔法が使える永久さんが攻撃特化の方がよろしいのでは……」
ロングネイルのピンクの縦巻き髪の少女、アヤ・サーイ伯爵令嬢、B級魔導士は戸惑い顔。
マユは二人の反応を確かめて続ける。
「アヤさんには都市対抗チーム戦までに現在の金だけでなく、木、土、水、火。五属性攻撃魔法を全て獲得してもらいます」
「無理っしょ。魔法は一属性を磨くのがセオリーって言うか。器用貧乏とか……」
「全てA級までお願いします」
マユはシレッと言ってのける。
「はぁっ?意味わかんないんだけど」
解が割って入る。
「その魔石仕込みのチートロングネイル。けっこうおもしろいと思ってな」
解はアヤ・サーイ伯爵令嬢の指先を見詰める。
「はっ……。バレてたの?ちょっとズルくない」
バツが悪そうに両手を引っ込める。ちょっと顔を赤らめているのを解はスルーする。
「で、金の街、城塞都市サーイの武器防具屋にこれを作ってもらったんだ」
解は帝都トキオ剣術魔法学園のジャケットのポケットから小さな箱を取り出す。
「師匠、も私もサーイの武器防具屋の共同経営者ですもんね。それで超優秀商人のゴウさんを呼びつけてコソコソしてたんですね」
「まっ、そんなとこだ」
「「っ……。城塞都市サーイの唯一の武器防具屋の共同経営者……?」」
解は同時にハモる二人。仲のいいことである。その驚愕もスルーして小箱を開ける。
「五属性の魔石を埋め込んだロングネイルだ。基本的に使用者の魔力の変換機能しかないから魔力切れは対応できないけどね」
解は魔力の元となる妖気を分解して再構築する研究を進めていた。
「で、特別講師を呼んである」
「「「「「ジャジャーン」」」」」
土の街、城塞都市チーバのA級魔導士、木のウルちゃん、土のアヤちゃん、水のノアちゃん、火のヒヨちゃん、金のスズちゃん。
五人組の登場である。因みにこの五人は帝都トキオ剣術魔法学園の卒業生。
帝都トキオ剣術魔法学園、都市対抗チーム戦の三期連続常勝チームである。
「「ぐっ……。学園の伝説、土の街A級魔導士チーム」」
実力も財力も、知合いさえも半端ない。なんなんこの三人組!驚嘆を超えて怯える伯爵令嬢と男爵子息。
「死ぬ気で学べ」
解は悪い顔になる。
「大丈夫です。魔力切れの回復は任せてください」
マユはにっこりとほほ笑む。
こっ、こいつら。魔力切れを繰り返すほど体内の魔力蓄積量は少しずつ上昇する。
しかし……。魔力切れ独特の深酒のような吐き気と頭痛、その気持ち悪さは魔導士全員が体験するトラウマなんだけど……。
B級魔導士の不満顔は置いておいて、解はC級拳闘士に向かい合う。
「で、づぎ。C級拳闘士ボブ・アーレン男爵子息くんは……」
解は木刀を取り出す。
「俺が相手してやる」
「えっ、俺専用チートアイテムは?」
「魔法の身体強化は常時鎧を着ているようなもので効率が悪いからなー。俺の我流六気操術は気を瞬間的に高めるから効率も出力も段違い。闘気の使い方を体に叩き込む」
「えっ……。死んじゃいます」
顔を青くするブレザーはっつんゴリラ男。
「大丈夫です。骨折しても内臓破裂しても回復は任せてください」
マユはにっこりとほほ笑む。こうして二人の役割と目標は決まった。
「私は身体強化付与を学びます。永久ちゃんは防御魔法を学んでんださい」
マユは淡々と話を進める。今から学ぶには相当な努力がいる納得の内容である。
ピンクの縦巻き髪の少女とゴリラ男は、残りの一人、剣士、戦略担当が気になってならない。
戦略担当は理解できる。しかしラウンダーって何?本番では何もしなそうなオーラを発している。
「「解様は……、何を学ばれるんで?」」
口をそろえて尋ねる。
「俺は悪目立ちしたくないんで智謀知略だな。それと……」
解は闘気を高めて空き教室の入り口を睨む。
「おい、のぞき見とは感心しないな」
ドアの陰で聞き耳を立てている男に向かって呼びかけた。




