04-06 師匠からは捻じ曲がった根性をピーンって
帝都トキオ剣術魔法学園の魔力練習場の中央に立つ永久とロングネイルのピンクの縦巻き髪の少女、アヤ・サーイ伯爵令嬢。
「金の街、城塞都市サーイ本家。アイアン・エッジ!」
鋼鉄刃が永久の髪を揺らしてかすめ飛ぶ。
「オホホ。ビックリしたでしょ。A級攻撃魔法よ。フフフ、頭と胴体が泣き別れになる前に降参しなさい」
眉を吊り上げてどや顔の悪役令嬢。渾身の一撃、唯一のA級魔法の隠し玉。
瞬時に軌道をよみ、当たらないと見切って立つ永久をビビって動けなかったと見誤る。
永久はニヤリと笑って連続A級魔法を連唱する。
「火のA級魔導士ヒヨちゃん直伝、ファイア・ボール」
「水のA級魔導士ノアちゃん直伝、アクア・バレット」
「金のA級魔導士スズちゃん直伝、アイアン・エッジ」
「土のA級魔導士アヤちゃん直伝、ストーン・ランス」
「木のA級魔導士ウルちゃん直伝、ヴァイン・ウィップ」
魔力練習場に火球が飛び交い、水の弾丸が弾ける。岩槍が壁に突き刺さり、鋼鉄刃が床を刻み、蔦鞭がうなりをあげる。
もちろん、直撃を避けての思いやり攻撃。
「ご、五属性持ち!うっそ、ありえない。魔導士は一人一属性なのに。しかも全てA級なんて死んじゃう」
……。おしっこ、ちびったじゃない。もう、なんなのこの童女、化け物じゃん。
縦巻き髪の少女、アヤ・サーイ伯爵令嬢の鋼の自尊心は崩れ去る。
「負けました」
「えっ、でも。師匠からは捻じ曲がった根性をピーンって……」
「うっ」
縦巻き髪の少女はバフッと土下座。もうその潔さは根性ピーン!
「ご三人様の師弟、いや小間使い、いえいえ、使いっぱでも何でもやらせてください」
ブルブルと震える悪役令嬢。
「永久、五属性の魔法なんていつ覚えたんだ?」
解は永久の頭をナデナデ。
「土の街、城塞都市チーバのドラキュラ戦でチーバギルドのお姉さんたちからちょこっと教えてもらいました」
解はポカーン。いつの間に……。
「でへへ、師匠、チョコください」
ニコニコ笑う永久。
「あっ、あのー。私もチョコください」
遠慮がちに解の制服の上着の裾を摘まむマユ。
くっ……。やっぱり、この童女も人外。
退職願を書こうと心に誓うアラン・グラント学長。人の街、帝都トキオ剣術魔法学園の最高権威の心はポキッてなった。
「アラン・グラント学長、これからよろしくお願いします」
首を垂れる解。
「フフフ、お願いします、です」
チョコで口をベタベタにした永久が首を垂れる。
「よろしくお願いします」
マユは手に持つチョコを、後ろ手に隠して首を垂れた。
「学園最強なって粋がっていた私がバカでした。再教育をお願いします」
金の街、城塞都市サーイ領主伯爵家長女、アヤ・サーイは頭を下げる。
「おっ、俺も見捨てないでくれ。学長、なにとぞよろしくお願いします」
金の街、城塞都市サーイの男爵家次男、ボブ・アーレンが頭を下げる。
くっ……。教育者として逃げ場を失う帝都トキオ剣術魔法学園の最高権威アラン・グラント学長。覚悟を決める。
「頭を上げてくれ。君たちは今日からチームだ。私も初心に戻って共に学ぼう」
アラン・グラント学長の顔は晴れやかだった。
「みんなもチョコ食べる?」
永久は現世の銀座で話題のショコラティエの一枚一万円越えの板チョコを割って配って回る。
「まじ、うますぎ」
「うまっ!なんだこれ」
「くっ……。この年で甘いものが心に染みる」
三者三様の反応にマユと顔を見合わせて幸せになる永久だった。
「ところで師匠、どんだけチョコ持ってんですか?」
突然の突っ込みに目を泳がせる解。
「ないしょ」
ウインク一つでごまかした。
こうして帝都トキオ剣術魔法学園始まって以来の最強チームが誕生した。
魔力を消し去った剣術魔法学園のブレザー姿の影が魔力練習場の柱の陰からそっと消える。
解はその痕跡を静かに目で追った。
帝都トキオ剣術魔法学園、新たな物語が始まろうとしている。




