04-05 城塞都市チーバの手助けに専念したいんだけど
アラン・グラント学長の事態の収束に向けて考えを巡らす。
複数の厄介ごとの解決の基本は処理可能な問題から先に処理して、一番難しい問題を解決する時間を確保することだ。
それには状況把握と分析。気になるのはA級剣士なのに魔石が反応しない解君。
剣士は身体に魔力を巡らして強化。防御と攻撃力を補強して戦う。
「解君は剣士、ボブ君は拳闘士。次は模擬戦をしてもらう。ただし、解君は木剣、ボブ君はグローブをつけてもらう。いいな」
帝都トキオ剣術魔法学園の魔力練習場の中央に立つ解と男爵家次男のゴリラ男ボブ。
ゴリラ男ボブは思考を巡らす。相手は魔力ゼロのキビ村のカッペ。
あのチョイイケ顔を俺の拳で元に戻らないくらいボッコボコにする。
ビビったあいつは俺の舎弟。俺の強さに伯爵令嬢もマユと言う娘もメロメロ。学園生活は両手に花じゃないかー。完全脳筋思考のボブ。
ゴリラ男ボブは全力で全身に魔力を巡らす。
「ぬ、ぐぐぐぐうー」
ビリ、ビリ。
筋肉が肥大化し、剣術魔法学園指定のブレザーは無残に破れ、コング仕様のゴリラ男が解と対峙する。
一方、解は静かに目を瞑って腰を落とし、居合斬りのスタンスで木剣に手をかけて闘気を練り上げる。
「はじめ!」
アラン・グラント学長の合図とともにゴリラ男は走る。必殺パンチが解の顔面を捉えたかと思われた瞬間。
シュン。
解の木刀が目にも止まらぬ速さで空を駆け、ゴリラ男の腹部を一撃。
ドサッ。
崩れ去るB級拳闘士ゴリラ男。瞬殺である。
「約束だから死なないように手加減した。数日は動けないと思うけどさ。後、よろしく、アラン・グラント学長」
解はアラン・グラント学長に向かってニヤリ。
「っ……」
まったく見たことない構え、S級の眼力を持つ学長ですらおぼろげにしか見えなかった一瞬の剣筋。
アラン・グラント学長の状況把握と分析の目論見は瞬時に潰えた。
こっちもマユに相当する破格の問題児。穏便に退職できるのだろうか……?学長の背中に一筋の冷や汗が流れる。
マユが気を失うゴリラ男に駆け寄り抱えて手をかざす。白く発光する彼女の手。全快して目を覚ますゴリラ男。
「えっ、何があったんだ。ウホッ」
マユの顔を見てデレデレのゴリラ男はハートマークを浮かべる。
「発情したゴリラだな。後で師匠にバナナでも用意してもらうから寝てな」
ザン。
永久の肘がゴリラ男の溝内に食い込む。
「マユちゃん。回復魔法使えるんだ。すごいね」
マユに笑みを向ける永久。
「あっ、えっと。聖女アンナ・マレッサ様に少しだけ教えてもらいました」
照れ笑いを浮かべるマユ。
違う、違う。そうじゃない。魔法は詠唱が基本。いきなりの無詠唱とか規格外……。
アラン・グラント学長は気が気じゃない。城塞都市サーイの問題児の二人の心を折るなと約束したが……。
まさか自分の心が折れ欠けるなんて……。
三人を推挙した白いタイツにかぼちゃパンツを着こなすガンダール・サーイ伯爵の顔が頭に浮かぶ。
時代の変革を感じ、繰り上げ引退して土の街、城塞都市チーバの手助けに専念したいんだけど……。
「んじゃ、今度は私の番だよね。魔導士同士でいいんですよね、学長」
「そっ、そうだな」
大丈夫。そう、きっと大丈夫だ。発達不良の孫みたいな可愛らしい童女。アラン・グラント学長は気を取り直す。
「ぐふふ。A級になったばかりの小娘!魔導士としての格の違いを教え上げるわ」
十本のロングネイルに仕込んだ魔石があればB級でもA級レベルを引き出せる。
それに自身がB級となったのは一年前。実戦経験も積んできた、今ならB+でも十分いける。
ロングネイル型魔道具の魔石を光らせて、ピンクの縦巻き髪少女は笑うのだった。




