04-03 かぼちゃパンツの隠し爆弾
一方その頃、剣術魔法学園で解とマユは帝都唯一の剣術魔法学園でアラン・グラント学長と入学に関する打合せをしていた。
観客席付きの闘技場、魔法実践練習場、戦闘訓練広場、学生寮群はもとより学生の為の商店、公園などを備えた広大な土地を囲む城壁。
現世の都市の中高一貫校と言うよりも、総合大学を超える規模の一つの街がそこにあった。
その全てを覆いつくすように張られた巨大な魔法結界。おそらく魔石をふんだんに使った魔道具、解はその財力に驚嘆する。
学部は、攻撃・防御魔法学部、武術・剣術学部、回復師などを育てる神聖学部の大きく三つ。
特筆すべきは、五大都市プラス帝都の六つのブロックごとに寮が完備されており、年に一回開かれる都市対抗チーム戦が闘技場で開かれることだった。
「と言うことで、君たちは金の街、城塞都市サーイのチームの一つに加わって五人でこの大会に参加してもらう」
「永久はまだ十四歳ですが……」
解の質問にアラン・グラント学長は笑顔を浮かべる。
「チーム構成は各都市のギルドのパーティや帝都騎士団と同じだ。基本的に年齢に関係なく能力のあるものが上に立つ、実戦形式で戦うんだ」
「先輩だとか、男女だとか、出身だとか、爵位とか一切関係ない完全実力主義と言うことですね」
世襲で選ばれる陰陽師の頭領とか、先輩風を吹かす明菱高等学校の生徒、金でマウントを取ってくる政治家などに悩まされた現世とは大違い。
「わかりました。望むところです」
解はニヤリと笑う。
「大切なことは個人の実力でないと言うことだ。部下や仲間の能力、気質、嗜好の全てを把握する知恵と心を鍛えるのが学園のモットーでな。と言うことで君たちのリーダーはマユ君だ」
「えっ、私ですか?でも……。私、戦闘力も無いです……」
マユはいきなりの指名に戸惑いを浮かべて解を見る。
「解君の方が力もあるし、頭もいいし適任かと……」
「マユ君、君は生まれてから受け身の人生を歩んできたのだろう?だからこそ、人の上に立てる。弱さを知らない者に人の心は動かせない」
「でも……」
「解君はどちらかと言えば戦力だ。戦力は時として暴走する。その手綱を引くのは、また、別の力だ」
「マユさん、受けてみたらどうだ。君なら必ずできる」
解はマユの瞳を真っすぐ見つめてほほ笑む。マユの瞳の奥に、現世で共に過ごした幼い孤児、吉澤繭の勝気さを認める。
「分かりました」
マユはコクリとうなづく。
その時、学長室の扉が勢いよく開いて永久が飛び込んでくる。
「遅くなってすみません。てへへ。話、終わっちゃいました?」
ペコリと頭を下げて悪気も一切ない童女を見つめるアラン・グラント学長。
……十四歳?全く見えない。何歳サバ読んでんだ?いや、この零れだす老齢な気。自分さえ足元にも及ばない……混乱する学長。
「ちょっと栄養不良で成長が遅れてまして。俺の責任です。えっとー、でも、食い意地は人の数倍ありますのでいずれ追いつくと……」
解は苦笑いする。
「そっ、そうだな。では、三人そろったところで。残りのチームメンバー二人を紹介しよう」
「「お願いします」」
解とマユは頭を下げる。
「師匠、後で何のことか教えてくださいね。あっと、それと街の掌握、バッチリです」
小声で裏組織の下僕化を解に伝える永久。
「……街の掌握?」
更に混乱するアラン・グラント学長。
「あっ、迷子になって街の地理に詳しくなったってことで、なっ、永久」
「えっ、そうです。旨いもの店もばっちりです」
学長に向けてVサインを決める永久。見た目は孫と言っていい可愛いらしい童女……。分からん。
この童女がかなりの実力者であることをガンダール・サーイ伯爵卿から聞いていたが本人を目の前にするとにわかに信じがたい。
……少なくとも、伯爵は誇張するような男ではない。だが……目の前の姿と結びつかない。
ちょっとした、やんちゃレベルだろう記憶の隅に追いやる。今の時点での問題はそこじゃない。
「まあ、いい。そこで君たちに紹介するメンバー二人だが、この時期に同郷のチームに加われていない者たちでな。一癖も二癖もあるから承知してくれ」
「関係を深めろってことですね。どこまで許してもらえますか?」
「ここは帝都の最高研究施設でもある。魔医も何人か教師をしている。死ななければって程度かな」
「捻じ曲がった根性と自尊心をピーンとするってことですね」
「心は折るなよ。城塞都市サーイの伯爵令嬢と男爵のご子息だ」
ガンダール・サーイ伯爵卿の……娘さん……。かぼちゃパンツの策士野郎、面倒爆弾を隠してやがった。
「俺、女子は苦手ですから」
意味深な会話を続ける一生徒と雲の上の学長。マユの不安は募るばかりだった。




