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大震災の元凶、地龍を倒して日本を救ったのに異界に追放されたので我流六気操術で無双します。  作者: 坂井ひいろ
第4章 帝都トキオ 学園編

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04-02 固めの盃は酒樽三つ

ここは桜龍会のアジト、演歌が流れる畳の部屋で上半身裸の本格入れ墨男たちに交じって洋風の貴族や街人が丁半博打に興じている。


くっ、ガンダール・サーイ伯爵卿はマフィアと言ったが、幕末かよ!まんま、任侠ヤクザの世界。


世界観崩壊しているけど、これも師匠の言う現世の願望なんだろうか?


それでも幕末を生きた永久にはこっちの方がベタでしっくり馴染む。


しかし、帝都の洋風様式を考えればせめてルーレットであってほしかった。


「さあ、丁か、半か。はった、はった」


威勢よく啖呵を切る片袖を脱ぎ、桜と龍の鮮やかな入れ墨をみせる、さらし姿の和服女。


っ……。ちょっとカッコいい。いやかなりカッコいい。膝の上でゴロンとしたい!


「親分……」


永久の感想は置いておいて、情けない声を発するもとコミカル顔の半端入れ墨男。


「おりゃー!」


永久は半端入れ墨男のベルトを掴んで投げ、気を吐く。子供が大人を投げる変な構図に一同唖然。


和服女親分はスクッと立ち上がり、永久のビンタで膨れた半端入れ墨男の顔を思いっきり足蹴にする。


「お客人。素人ではありまへんな。魔法がはびこるこの世界、子供と言えどもそれなりの挨拶をさせていただきますよ」


立ち上がった上半身裸の本格入れ墨マッチョ男たちを手で制する。


「この時の為の用心棒、ザ・トウイチさん、よろしくお願いします」


奥のふすまがガラリと開く。


仕込み刀を手に持つ盲目の老剣士が現れる。いきなりの真打、A級冒険者の登場である。


ザ、ザ・トウイチ……。そんなことより永久は名前に唖然。ベタすぎる。トキオの気相は現世の欲望……。


「キェー!」


ズサ、ズサ、ビュン、ヒュン、スン、ズバッ!


掛け声とともに目にも止まらぬ刀さばき。その全てを立ち位置を変えることなく躱す永久。


ズサ、ズサ、ビュン、ヒュン、スン、ズバッ!


ズサ、ズサ、ビュン、ヒュン、スン、ズバッ!


ハア、ハア、ハア。


「……なぜ、当たらん?ハアー」


ズサ、ズサ、ビュン、ヒュン、スン、ズバッ!


ズサ、ズサ、ビュン、ヒュン、スン、ズバッ!


ハア、ハア、ハア。


更に仕込み刀のスピードは加速する。


ズサ、ズサ、ビュン、ヒュン、スン、ズバッ!


ズサ、ズサ、ビュン、ヒュン、スン、ズバッ!


ハア、ハア、ハア。


が、かすりもしない。


「おじさん、スタミナ無さすぎ」


ストン。


永久の手刀がザ・トウイチの後頸部に入る。


「くがっ」


目をカッと見開いて崩れ落ちる盲目のA級冒険者。


「薄目開けてたじゃん。しょぼ。って、そんなことは置いといて、まだ刃向かう奴がいるか?」


永久はザ・トウイチの仕込み刀を拾って妖狐の気を開放する。


土壁はそれだけでボロボロと崩れ落ち、障子の紙はビリビリと唸る。


空気が鉛のように重くなり、配下の本格入れ墨マッチョ男衆の膝がガチガチと鳴り出した。


「参りやした。姉御あねご、これ以上の争いは、この首で一つでなんとかお納めください」


元B級冒険者の和服女親分は永久の前に跪き、首を差し出した。


「首は要らないが、桜龍会には少しばかり協力してもらうからな」


「お嬢が、我々の力になってくださるなら、なんなりと。いいな、みんな」


和服女親分は頭を上げて、血の気の多い本格入れ墨マッチョ男たちに睨みを利かせる。


「いいよ。親分、超カッコいいし。膝の上でゴロンさせてくれるなら」


A級冒険者を一瞬にして戦闘不能にする力。多少の無理を飲んでもお釣りがくる。


任侠ヤクザの世界は力が全て。最初の力比べで上下が決まる。江戸もこの異界も基本は変わらない。


一方、永久はこれで師匠と私がいなくても、街を出ない限りマユは安心。


便利な下僕を一度で得た永久と最強の用心棒を得た和服女親分。二人は共に悪い顔を浮かべた。


「ささっ、お嬢。野郎ども。固めの盃を用意しろ」


わずか十分で桜龍会は永久の配下となった。


子供と思って侮った桜龍会の男衆は千年妖狐、九尾永久きゅうび とわにことごとく酔いつぶされた。


和服女親分の膝を枕にしてゴロンと寝ころび酒を交わす永久。


「姉御、申し訳ありません。酒を切らすような失態、しかしさすが姉御、酒樽三つを飲み干されるとは……恐れ入りやした」


うぐっ。


顔面蒼白で口元を押さえる和服女親分。永久はそろそろかなと立ち上がる。


「んじゃ、また後で」


永久はケロリとしたまま、二時間で酔いつぶれ転がる本格入れ墨マッチョ男衆をヒョイヒヨイと避けながら桜龍会アジトを後にして外に出た。


太陽の光が眩しい。


「ありりゃ。剣術魔法学園のアラン・グラント学長との初面会に遅れたわ。まあ、私、堅苦しい挨拶苦手だし。ま、いっか」


永久は石畳の道を歩き出す。


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