03-11 人数分のカップラーメン、出してください!
「さてと。毒の進行と蟲の成長を止めるためにやつの瘴気の上書きをしたけど根本的な治療をしないとだな」
「永久、晩餐会会場の人々を並ばせてくれ」
「師匠、了解しました。簡易診療所を作るんですね」
「創気神、一柱建立、天」
解が丹田に力を込めると、足元に六芒星が浮かび上がり「創」の文字が光る。
その文字から白い光の柱が立ち上がり、消えた後に純白のレースドレスを纏ったストレートヘアの女児。
「天。順番に、邪気を祓い毒を中和と体内の蟲の除去をよろしく」
女児は、コクコクと頷き、一列に並んだ人々を時間をかけて治療していく。
会場に彼女の奏でるフルートの曲が静かに響き渡る。
「天の力は基本的にあるべき元の姿に体を再生することだ。記憶を消したり再編するものじゃない」
解はため息を吐く。
「トラウマまでは消せないと……」
「ああ、乗り越えるのは自身の気の力だな」
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三時間近くかかってようやく治療が終わりフルートの音が止まる。時計の針は深夜を示している。
その間、目を瞑って天に気を送り続けていた解の気力もだいぶ落ち、表情に力がない。
「天、ありがとう。ゆっくり休んでくれ」
解は椅子にもたれながら純白のレースドレスを纏ったストレートヘアの女児の頭を撫でる。
彼女はコクコクと頷きながら六芒星の中へと帰っていった。
「さてと、後始末は明日にしたいところだが、そうもいかないだろうな」
解は首を項垂れて一言も声を発することのない玉座の男に声をかける。
「カッペーノ・チーバ伯爵卿、反逆者の若者たちをどうする?」
大臣たちの顔に冷や汗が垂れる。
城塞都市チーバ領主はナイフで破れたわき腹の穴を指で押さえた。
傷は癒えても刺された記憶は一生消えないだろう。
「すまん……」
カッペーノ・チーバ伯爵卿は娘、エレーナ・チーバ伯爵令嬢の前に膝まづき泣き崩れた。
「おい、お前らはどうするんだ!」
解は大臣たちに向かって叫ぶ。発せられた怒気だけで彼らの膝は崩れた。
「と言うことで大臣たちは領地を自主返納して、全員隠居するそうだよ。領主エレーナ・チーバ伯爵卿」
「解さん……」
エレーナは戸惑いの表情を浮かべる。
「と言っても志だけでは、この病んだ領地は復興できそうもないし……」
反乱を企てた若者たちが俯く。
「師匠、私たち、戦闘専門ですもんね。髭マッチョでも呼びつけますか?」
「永久、お前なー。空気読んで言え。髭マッチョにこれ以上仕事を押し付けたらストレスで日本が滅ぶわ」
「ですよねー」
二人は乾いた笑いを浮かべる。
「ガンダール・サーイ伯爵卿、頼めないか?」
解は白いタイツにかぼちゃパンツを着こなす男、金の街、城塞都市サーイの領主に頭を下げる。
「私が統治すればチーバの領民感情が収まらんだろうな」
ガンダール・サーイ伯爵卿は首を横に振る。
「が、帝都トキオの剣術魔法学園の現学長は私とカッペーノ卿の恩師だ。そろそろ引退しようかと言っていたし、エレーナ伯爵卿の教育も含めしばらく面倒を見てくれないか頼んでみよう」
ガンダール・サーイ伯爵卿は項垂れるカッペーノ卿を見つめる。
「それは有難い。カッペーノ卿、自分て蒔いた種くらい刈り取れるよな」
解の発する怒気にカッペーノは震えあがった。
若者が泣き崩れ、大臣たちは床に座り込んだ。
「これにて一件落着ですね。師匠。んじゃ、人数分のカップラーメン、出してください!」
「永久、お前……」
「美味しいものは世界を平和にするっていつも言ってるじゃないですか。夜食、食べなかったら、私、帰りませんよ」
テーブルに並ぶ冷え切った料理を眺めてねだる永久。
ジジー。
解は無限収納ファスナーを引き下げた。
この後、魚介だしに養豚、養鶏、小麦栽培とカップラーメンが城塞都市チーバの主力産業の一つに育ち、スラム街が消えていくことを二人はまだ知らない。




