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大震災の元凶、地龍を倒して日本を救ったのに異界に追放されたので我流六気操術で無双します。  作者: 坂井ひいろ
第3章 城塞都市チーバ

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03-10 師匠、メチャカッコいい!

城塞都市チーバの主城、謁見の間。


領主カッペーノ・チーバ伯爵卿は玉座に座りひたすら貧乏ゆすりをしていた。


「くっそ、どうなっているんだ。死霊使ネクロマンサーショウはどこに行った。おい大臣ども早くつれてこんか」


脇に置かれた剣を振り回して暴れ出すのは時間の問題と大臣たちは戦々恐々。項垂れて嵐が過ぎ去るのを待つ。


「これだけ、雁首揃えて誰一人奴の居場所を知らんとはどうなっているんだ」


ついにカッペーノは刀の柄に手をかけた。


そのタイミングでダンジョンから逃げ出した一匹の蛾がカッペーノの首の後ろに張り付く。


それに呼応するかのように彼の首の中に寄生している一匹の虫がうごめき出す。


蛾はゼンマイのように巻かれた口をストローのように伸ばしてカッペーノの首に突き刺して中の寄生虫と繋がった。


「ぐあああああ」


狂ったかのように声を上げるカッペーノ・チーバ伯爵卿。が、途端にイライラは収まり目がすわる。


「おい、晩餐会の準備はできたか」


大臣たちはホッと胸を撫でおろす。


「はい、整っております。後はコンの街城塞都市サーイのA級冒険者、解様と永久様がチーバのダンジョン見学からお戻りになるのを待つばかりです」


筆頭大臣が彼の前に跪き答える。


「遅い、定刻は過ぎておる。始めるぞ」


「はぁ?主賓をお待ちしないのですか?」


「所詮サーイの田舎者。A級冒険者と言っても力だけで礼儀を知らん。ガンダール・サーイ伯爵卿がいれば十分だ」


「かしこまりました」


-----


こうしてドラキュラ城とその一党討伐の成功を祝う晩餐会が始まる。


カッペーノ・チーバ伯爵卿は満面の笑みで杯をかかげる。


ガンダール・サーイ伯爵卿、エレーナ・チーバ伯爵令嬢、大臣たちは豪華な料理の並んだテーブルの前に立ち杯をかかげる。


「それではドラキュラ一派壊滅を祝して乾杯!」


全員がグラスに注がれたワインを一気に飲み干す。


コルクの小さな欠片に似せた蟲の卵と一緒に。


「くくくくっ」


カッペーノ・チーバ伯爵卿は小さくほくそ笑む。


「街城塞都市サーイのA級冒険者、解様と永久様お戻り~」


執事の声に合わせて扉が開き、解と永久が会場に入る。


「おお、ドラキュラ一派壊滅立役者、解君と永久君。待ちわびたぞ」


カッペーノはニヤリと笑って迎え入れる。


「それでは関係者が揃ったところで私から余興をひとつ」


カッペーノが手を叩くとドアが開く。


物々しい戦闘服に身を固めた近衛兵に引き立てられるエレーナ・チーバ伯爵令嬢の学友達を含めた反乱組織の若者たち。


「お父様……」


エレーナ・チーバ伯爵令嬢は小さく震える。


カッペーノ・チーバ伯爵卿はワインのボトルを持って立ち上がる。


「この者たちにも事前に祝いの酒を振舞ってある。さーて、どうなるかな」


「「「「「うぐっ」」」」」


若者たちは喉を搔きむしり泡を吹いて痙攣しだす。


「くくくくくくっ。反逆者の末路は惨めなものだ」


カッペーノの声を受けて大臣たちが慌てふためく。


「毒を盛ったのか?我々の酒にも……」


「盛った盛った、お祭りらしく盛大にな。だが、毒など心優しいものだ。死ぬだけだからな」


カッペーノ・チーバ伯爵卿はワインボトルのラベルをはぎ取って天に突き上げる。


照明を受けてボトルの中の異物がキラキラと舞う。


瘴気虫しょうきむしの卵だ。これが羽化すれば私のようにショウ様の最強の死兵となろう」


「お父様……」


エレーナは隠し持っていたナイフをカッペーノの横腹に深々と突き立てた。


カッペーノの首がガクリと前に倒れる。しかし、頭の後ろからもう一つの頭が立ち上がる。


一瞬にして会場全体が紫色の瘴気の霧に包まれる。


「くっ……死霊使ネクロマンサーショウ


その不気味な姿に一同息を飲む。ショウの口が言葉を引き継ぐ。


「さて我流六気操師がりゅうろくきそうし天乃解あまの かい。お前に人だったものとやり合うだけの正義はあるのか?」


「っ……」


カッペーノの体にのっかるショウの頭が嗤う。


「フハハハハ。最強が聞いて呆れる。どんなに強くても振るえない刀など滑稽にしかならない」


カッペーノだったものは体に突き刺さったナイフを引き抜き、


「さあ、天乃解あまの かい。誰に首を跳ねられたい。んんんんー。お前の体は私が有効活用してやるから安心しろ」


自分の首を切り落とす仕草をする。


「瘴気神、一柱ひとはしら建立こんりゅうやみ


解が丹田に力を込めると、六芒星ヘキサグラムが、大理石の床に浮かび上がり「病」の文字が光る。


その文字から赤黒い光の柱が立ち上ぼり、消えた後に赤黒いローブを纏ったカーリーヘアの女児。


やみ、瘴気を上書きしろ」


赤黒いローブを纏ったカーリーヘアの女児はコクコクと頷き、赤黒いローブを翻す。


たった、それだけで会場を満たしていた紫色の瘴気の霧が赤黒く変わっていく。


「さて、死霊使ネクロマンサーショウ、貴様の瘴気は無害化した。残念だがやみと貴様では格が違うんだよ」


ジジー。


解は無限収納ファスナーを引き下げて、中から妖刀鬼神瘴きじんしょうを取り出す。


カッペーノの体にのっかるショウの頭がポトリと腐り落ち、光の粒となって妖刀鬼神瘴に吸い込まれていく。


「青臭いかもしれないけど、人だったものを斬らずに済むように俺は最強を目指すんだ」


「師匠、メチャカッコいい!」


「だろ」


解は一言だけ告げて照れ隠しに永久の頭を撫でた。

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