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大震災の元凶、地龍を倒して日本を救ったのに異界に追放されたので我流六気操術で無双します。  作者: 坂井ひいろ
第3章 城塞都市チーバ

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03-05 謁見の間は探り合い

城塞都市チーバに近づくにつれ、粗末なテントから人々の生活感が伝わってくる。


やけど傷を抱えてつちを振るう鍛冶屋。


ぼろ雑巾と見誤るような服を着てあかぎれで荒れた手であでやかなドレスを洗濯する女。


都市から出た残飯を食らう子供たち。


「ガンダール・サーイ伯爵卿。死霊ゾンビ奴隷を使わないのはなぜですか?」


解は尋ねる。


「金が集まるところには人は湧いて出る。どんなに排除しても人と言う生き物は夢を追わずにはいられない」


「「……」」


「それに、死霊ゾンビ奴隷は水に手を入れたり火を使うような細かい作業が苦手でね」


「不死でも水分で腐ったり、燃えちゃったらおしまいですものね」


永久が軽口で話を閉めると、ちょうど城門の警備兵が慌ただしくこちらに向けて動き出した。


スラム街を抜け城門を抜けるとそこは別世界だった。たった一つの壁で仕切られた先。


城塞都市チーバの主城に向かうメイン通りは城塞都市サーイが恥ずかしいと思えるほど煌びやかだった。


帝都トキオと比べても劣らないくらいの贅をこらしたブランドショップが立ち並び、中央公園には噴水が踊っている。


運河が作られ、花に彩られたボートの上で演奏会が行われている。


「師匠、さすが本家ですね。もうこれ、もう東京チューチューランドのまんまですね。チーバだけど」


十本の指は全て巨大な宝石を埋め込んだ指輪が指の肉に食い込んでいる。


三センチはあるぶっとい金のネックレスはまるで犬の首輪。


絹のドレスで着飾った淑女レディーの横を通り過ぎるとキッツイ香水の匂いに鼻が麻痺する。


人間に比べ人間に匂いに敏感な永久は、鼻をつまんで顔をしかめる。


「籠の鳥さ……。彼らは壁の外には出ようとしない」


「「……」」


ガンダール・サーイ伯爵卿は無表情で語る。


「チーバの冒険者ギルドには寄らないで行こう。我々は眷属とは言え彼らの仲間を跡形もなく消し去った極悪人ってことになっている」


「「そうですね」」


解と永久はうなづく。


城の周りに張り巡らされた城壁を抜けると、そこは、また一段格上の別世界。


謁見の間まで続くフカフカの赤い絨毯の上に散らされたバラの花。


何十人と並ぶドレスの女性とタキシードの紳士。彼らが三人を拍手で出迎える。


解は祝賀の拍手に混じる異質な瘴気を受け流す。


その先に豪勢な椅子に座るカッペーノ・チーバ伯爵卿が満面の笑みを讃えて座っていた。


「おお、よく来てくれた。ガンダール・サーイ伯爵卿とA級冒険者どの」


「カッペーノ・チーバ伯爵卿、お久しぶりです」


二人の伯爵は軽く会釈して話を続ける。


「友の依頼を快く引き受け、吸血鬼とその眷属の処理の手際、評判ですぞ」


「日を追うごとに立派になる城塞都市チーバ。まことに感服の限りです」


微妙な言い回しの皮肉を交えた褒めちぎり合戦が始まる。


解と永久は片膝をついてガンダール・サーイ伯爵卿の左右に控える。


解は目を閉じて会場の気相を探って、永久に視線を送る。


柱の陰に隠れていた黒ローブの男が逃げるように立ち去る。


永久は事前召喚して蝶に変化させた式神、蝶花ちょうかを使って男の後を追わせた。


「で、ガンダール・サーイ伯爵卿、今回のお礼の件、まだ取り決めてなかったですな」


「カッペーノ・チーバ伯爵卿。友の助けにお礼など無用でございます」


「晩餐会まで時間がある。それでは、いい機会だから城下を見物してはどうでしょう」


カッペーノ・チーバ伯爵卿はポンと手を叩く。


ピンクのドレスをまとった少女が控えの間から現れてカッペーノ・チーバ伯爵卿の横に立つ。


「我が娘、エレーナだ。至らぬところはあるが案内をさせよう」


エレーナと呼ばれた少女はドレスの裾を上品に持ち上げて一礼する。


「城下のブランドショップにはおふれを出してある。好きなものを好きなだけ土産として持ち帰るとよい」


「ありがとうござます。ここに控える二人の冒険者も喜んでおります」


ようやく終わったかと苦笑いする解。可愛らしいエレーナを一目見て心を躍らせる永久だった。

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