03-03 マウントを取るならこの手で
質素ではあるが綺麗に整えられたドラキュラ城の中。
「何なんですか、これ?無茶苦茶、美味いです!」
木のA級魔導士ウルちゃん。
「ありえないです。ありえないです。ありえないです」
土のA級魔導士アヤちゃん。
「くっ……。死んじゃう。もう、死んじゃう」
水のA級魔導士ノアちゃん。
「ほふ、ほふ、ほふ、ほふ、ほふ、ほふ、ほふ」
火のA級魔導士ヒヨちゃん。
「こうばしい香りに包まれたほろ苦さと甘みの競演。これはもう世界です」
金のA級魔導士スズちゃん。
A級魔導士、五人組の少女たちが奏でる歓声と共に宙を舞う銀座で話題のショコラティエ特製超高級板チョコ。一枚一万円の大盤振る舞い。
元お祖母ちゃんだった眷属の美人お姉さん、総勢五十人も加わってもはやブランド品のバーゲンセールさながら。
解は無限収納ポケットの中を見つめため息をつく。
本物の味に触れたことない児童養護施設の子供たちに寄付する予定だった、それ。
養護施設育ちは保証人もなく就職が難しい。特に結婚して外に出てしまう女子は男子に比べて引き取りても少ない。
厳しい現実を一人で生き残るための手段。パティシエやすし職人などは腕さえあれは勝ち残れると食育を進めていた。
まあ、いいか。有効活用だな……。あいつら元気かな。
「師匠、稼ぎましょうね。トホホ」
「永久、仲間に加わらないのか?」
「あんな顔見たら無理ですよ。美味しいものはやっぱり世界を幸せにするんですよ」
しょんぼりとする二人を見ながらドラキュラ伯爵は悪いやつらじゃないと思った。
見た目はガキと童女だけど、厳しい世界で前を向いて生きてきたそんな強さを感じる。
「悪いな。気付かないうちに彼女たちに逃亡者の田舎生活を強いていたのかもしれない」
無農薬健康野菜も悪くない。質素な田舎ライフも悪くない。しかし、若さはそれだけでは生きられない。
美味しいものはやっぱり世界を幸せにするんですよ……永久の言葉がドラキュラ伯爵の決断を促す。
「君たちに全力で協力しよう」
ドラキュラ伯爵に長く生きることで忘れてしまった心の若さが灯った。
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ドラキュラ伯爵城の広場。
ドラキュラ伯爵と偽眷属のA級魔導士。対峙する解と永久。その後ろに控える城塞都市サーイの城主。
「ガンダール・サーイ伯爵卿。各国の間者はどうですか?」
「予定通り、あちこちに隠れているよ」
「それじゃ、派手に始めますよ」
解はウインク一つしてドラキュラ伯爵と眷属に向けて広場を駆ける。
眷属とみせかけた五属性A級魔導少女達は悪い顔を浮かべ、作り物の牙をチラ見せしながら魔法を唱える。
「ファイア・ボール」
「アクア・バレット」
「アイアン・エッジ」
「ストーン・ランス」
「ヴァイン・ウィップ」
火球が飛び交い、水の弾丸が弾ける。岩槍が大地に突き刺さり、鋼鉄刃が草木を刻み、蔦鞭がうなりをあげる。
解はそのすべてをかわし、かいくぐって進む。
ズサッ。
妖刀 鬼神解が空を切り裂く。
ゴゴゴゴゴゴゴ。
ドラキュラ城、一刀両断。土煙を上げながら崩れゆく城。
永久、参戦。
「式神、雷属性・雷花召喚。スキル、獄雷」
尻尾を一つ摘まんで青空に投げる。
途端にモクモクと黒雲が生まれる。
ピシャ。ドーン、ドーン、ドーン、ドーン、ドーン。
稲光が走り、稲妻が五属性A級魔導少女を襲う。
「「「「「ギャー」」」」」
断末魔の声を上げながら五人の魔導士は予め解から預かった妖学迷彩マントを頭からすっぽりと被る。
ガンダール・サーイ伯爵卿、参戦。
「いくぞ!変身」
腰に巻かれたぶっといベルトの中央に設置された魔石の中で風車が回る。
城塞都市サーイのギルド長、髭マッチョ、ヨウから借りたA級変身ベルトが風を切る。
全身ミヤマクワガタコスチュームのガンダ・サーイ伯爵卿は、家宝の刀を握りドラキュラ伯爵の横を駆け抜ける。
ザン。
胸から上がズレ落ちるドラキュラ伯爵。蝙蝠の姿になって地に身を隠す。
「くははははは。みたか、不死者をも滅する我がサーイ家、宝刀の威力を!」
ドラキュラ城とその一党は派手に壊滅した。
解の横に立つ永久。
「師匠、ガンダール・サーイ伯爵卿、ノリノリですね」
「ああ、城塞都市チーバのカッペーノ・チーバ伯爵卿にマウント取れるもんな。変身ベルトの広告宣伝も完璧だな」
「あの演技力ならダンジョンランドに採用ですね」
「それは、ちょっと、さすがにな」
苦笑いする解。
その後、髭マッチョにA級変身ベルトをガンダール・サーイ伯爵卿がねだったことを二人は知らない。




