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大震災の元凶、地龍を倒して日本を救ったのに異界に追放されたので我流六気操術で無双します。  作者: 坂井ひいろ
第2章 城塞都市サーイ

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02-13 白いタイツにかぼちゃパンツを着こなす男

それから一週間が過ぎた。


今までが何だったのかと思うほど平和過ぎて冒険者の皆様は暇を持て余しているかと思ったらそうでもない。


魔物が優先されるあまりほったらかしになった街道の整備や街の補修、薬草の確保などそれなりに仕事が湧いて出るのは現世と変わらないらしい。


「解、永久!城塞都市サーイの領主ガンダール伯爵卿が、新しくA級となった二人にお会いしたいそうだ」


「師匠、あのくそデカイ東京チューチューランドのキャッスルに呼ばれたみたいですよ」


不謹慎な言葉を発する童女に頭を抱える髭マッチョのヨウ。


最近、良くわからないが眠りが浅い。


最初はダンジョン開発などで商人ゴウと夜遅くまで打合せしている疲れが溜まったのかと思ったのだがそれだけじゃない。


でっぷりと太った自分が知らない世界で、少なくなってきた髪の毛をむしって、ため息をつく夢をよく見る。


「解、今回ばかりは逃げるのはなしだぞ。それでなくともダンジョン魔物を一太刀で抹殺した人物ヒーローは誰だと市民の詮索が止まらない」


あまりにも一瞬の出来事でヨウを除く冒険者たちの誰一人として解のことを認識できなかった。


「それにだ。このギルド登録の申請書キビ村出身のカイとトワって取っ手付けの嘘なんだろ?」


ギルド長のヨウは二人の書いた書類を執務室のテーブルに乗せてニヤリと笑う。


「かまいませんよ。俺たちがやったってバラしても。ガキと小娘に助けられたなんて信じる人がいればですがね」


「お前ら……。俺の髪が薄くなってもいいのか」


「ギルド長らしい貫禄がついて良いんじゃないか」


「くっ……。かみさんがだな……、泣くんだよ」


ちなみに現世のファーストレディは首相と同世代の年相応の女性だが、髭マッチョの奥さんは二回りも年の離れた露出度ガン高受付嬢の一人である。


「グフフ、英雄色を好むですね」


永久の軽口に顔を赤くするギルド長。もうこの二人は自分じゃ手に負えない。


「とっ、とにかくだ。ガンダール伯爵卿だけは嘘をつけん」


「わかりました。色々と調べたいこともありますし、ギルド長が俺たちをガンダール伯爵とやらに押し付けたいというのなら従います」


破格の戦闘力に加え、心を読む能力でもあるのかといぶかしむギルド長ヨウ。


「そう言うな、解。ガンダール・サーイ伯爵卿はあれで結構できた領主だ。他の街の領主とは比べ物にならんくらいのな」


ギルド長ヨウは申請書をチラ見する。


十八歳か……。大人しくしていれば見た目も年齢相応。しかし、戦闘力も持っている知識もバグっている。


こんな男はもろ刃の剣。いつ何時、脅威に変貌するか分からない。手放すのは惜しいが早々に追放するしかない。


図らずも現世の内閣総理大、臣冨士岡洋ふじおか ようと同じロジック思考をするあたりは気相の力である。


こうして三人は東京チューチューランドキャッスルそっくりな伯爵邸の謁見の間に立つのだった。


「永久、埼玉県民の千葉県民に対する卑屈さは半端ないな」


解はメルヘンチックに彩られた豪勢な内装を見渡す。


「埼玉県民の願望が師匠のエンタメ化の後押しをしてますね」


「異界は現世のストレス解消だからな」


「それでギルド冒険者は着ぐるみ戦隊なんですね」


ゴニョゴニョと小声て話し合う解と永久。チンプンカンプンな内容に顔をしかめるギルド長ヨウ。


ドーン。


豪華な椅子の横に据えられたドラが叩かれる。


「ガンダール・サーイ伯爵卿のおなーりー」


赤と金に彩られた白いタイツにかぼちゃパンツ衣装の青年が現れて椅子へと座る。


笑っちゃいそうであるが意外にもイケメン青年。しっかりと様になっている。


「あれを着こなせる人間がいるとは……」


「解、失礼だぞ。膝まづくぞ」


ギルド長、解、永久は大人しく片膝をついてこうべを垂れた。


「ギルド長ヨウ。そしてA級冒険者解と永久。よく来てくれた。どうか頭を上げてくれ。堅苦しい挨拶は無しだ」


「ご報告が遅くなって申し訳ありません」


ギルド長ヨウはオズオズと顔を上げる。


「あれほどのダンジョンスタンピードだ。致し方ない。むしろアレを御した城塞都市サーイのギルドを誇りに思うぞ」


「はっ、ありがたきお言葉。冒険者一同、今後の励みといたします」


「師匠、堅苦しい挨拶ですね」


永久が小声で解に同意を求める。解は笑みを浮かべて答えない。


「っ……」


ギルド長ヨウは永久の頭を押さえて下げさせる。


「まあ、よいよい。冒険者に礼儀を求めるほど私も野暮じゃない。しかし、若いな。聞いてはいたが、こうして目の前に立たれると信じられない」


少年臭さを残した解の顔を眺め、童女と言っても過言ではない永久を眺める。


「キビ村出身というのは嘘だな。どこから来た。異世界か?」


ガンダール・サーイ伯爵は鋭い眼光を二人に向ける。

解は横に並ぶ髭マッチョの顔をチラ見してニヤリと笑う。


「っ……」


ギルド長ヨウの顔が曇る。


「そう解釈していただいて構いません」


あっさりと答える解。


「なるほど、伝説の勇者と同じってことか。通りで強い」


期待した応えに満足するガンダール伯爵。


ダンジョンスタンピード瞬殺だけでなく、キビ村の土蜘蛛退治も調査済みの白いタイツにかぼちゃパンツ衣装のイケメン有能伯爵。


「単刀直入に聴こう。二人の目的は」


「前の世界での職場がブラック企業でこき使われた上に捨てられたもので、田舎で自由にのんびりしたいのですが……」


解の脳裏に一瞬、辺境の村キビのマユの顔が浮かぶ。


「そうはいかなかったと言うことだな。こちらの世界にも事情がある。図らずとも八十年前の勇者と同じことを言うとは。よかろう、こちらの問題解決に協力するなら、こちらも協力しよう」


「ありがとうございます」


「それと商人ゴウに入れ知恵したのもそなたか?」


「ご想像にお任せします」


「そうか、目立つことは嫌いか」


「はい、さんざん利用された挙句、追放されるのはこりごりです」


「っ……」


ガンダール伯爵に丸投げして、追放しようとしたギルド長ヨウの胃がギュッとなった。

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