02-11 しっ、師匠ぉぉぉぉ
ドサ。
ピエロ男が膝から崩れ落ち、出来立ての円形石舞台に沈む。
横たわる邪の『右胸』に突き刺さる妖刀『鬼神解』
解はピエロの仮面を剥がしとる。自分の背中に隠れて永久にそれが見えない位置を取りながら。
「やっぱりな……」
仮面の下の顔は解と瓜二つだった。
我流六気操師として感じた自身の『気相』が導く運命。
「影……、鏡像……」
解は顔をしかめる。
小学生時代に宣告された心臓が右胸にある特異体質。
如月創と言う名の存在。
解は戦いの刹那に全てを受け入れて邪の右胸を貫いた。
ピエロ男は浅い息を繰り返しているがまだ意識がある。
「自分の心臓が右側だってことを知らなかったのか?それとも……。顔を隠すくらい影であることを、心の底では認めたくなかったのかい」
仮面の下のピエロ男は答えない。しかし、その顔は『邪気』が取れて穏やかだった。
「楽しいゲームだった……。お前もだろ?」
ピエロ男は解に同意を求めた。
「さあな」
解は答えず、はぐらかす。
「人間がいる限り『邪気』は生まれる。次のゲームが楽しみだ」
「あぁ、今度は『邪気』に飲まれるなよ」
「『邪気』を使いこなすなんてな……、考えてもみなかった……」
死の間際に運命に抗うことを知った邪の体は光の粒となる。
解の左胸に突き刺さる妖刀『鬼神邪』に吸い込まれていく。
解はその妖刀『鬼神邪』を引き抜き、傷とは別の右胸に手を当てる。
心臓の鼓動が、ドクン、ドクンと手に伝わる。
誰にも気づかれないように呟く。
「親父……。生き残ったぜ」
妖刀『鬼神邪』の白刃に、ピエロの涙の仮面が重なり鞘となった。
「しっ、師匠ぉぉぉぉ」
永久は涙を隠すことなく解に向かって走る。
骸骨となった観客達が立ち上がり、カタカタと拍手しながら砂となって消えていく。
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ダンジョンからの帰り道。
「師匠、あのダンジョン、これからどうなるんですかね」
「現世の人間の欲望がこの世界を作っているとするなら、魔物はいずれ復活するんじゃないか」
「そうですよね」
「それより、強欲商人ゴウ。お前、ちゃんとダンジョンフロアに魔眼カメラを仕込んだんだろうな」
「そりゃうもう。あっし、登場回数メチャメチャ削られてましてたんで……」
「地下技場まで一直線の縦穴。縦穴にそって進む各フロア。街はこれからダンジョンスタンピードの魔石特需……」
ゴウの強欲顔が珍しくゆがむ。
「そうそう、俺な。村の防衛用に結界魔道具を作ったんだ」
「だんなに一生ついていくって言ってしまってますから……」
「行動を共にするだけが『ついていく』ことにはならないと思うがな」
「だんな!わかりやした。これを使って、あっしにダンジョン地下技場向けの強力な結界魔道具を一個作ってください」
ゴウは無限収納袋の中からキマイラ四体が残したこぶし大のS級魔石四個を取り出す。
「いい心がけだな、ゴウ。一個は村の結界魔道具用にもらう。残りの二つはエレベーターとかダンジョン開発にでも使うんだな」
「師匠、良いんですか?」
「ああ、こちの世界にも『邪気』を解消する娯楽が必要だし、それにな……」
解は声を潜めて永久の耳元でささやく。
「金ヅルは太ってもらわないとってな」
永久と解はゴウの顔を見つめ、二ヒヒと笑い、悪い顔になった。




