02-04 資源は大切に!がモットーです
城塞都市サーイに戻って解と永久は連れたって武器防具屋へと向かった。
「師匠、なんかズンズン歩いてますけど、武器防具屋の場所、どこか分かるんですか」
「魔石の『気』が大量に集まっているからな。まあ、強欲商人ゴウが言うには『気』のことを魔力って呼ぶらしいがな」
「六気操術、便利すぎてチートすぎません」
「まあな」
「ところで師匠は自分を追放した冨士岡総理に恨みとかないんですか?」
「ないと言い切ったら嘘になるけど、まあ、こっちの世界も悪くないし、それにな」
解は悪い顔を浮かべる。
「ギルド長の髭マッチョ、あれなー、総理の願望の具現化だからな。邪魔してやれば現世の総理は欲求不満になるんだな。仕返しし放題ってな」
「くっ、それで髭マッチョのパーティ継続要請を即答で断るし、案山子の弁償は難癖付けて払わんし、新人だから知らんとか言ってクエストの報告書とかを押し付けて来たんですね」
「ネチネチと面倒を起こせば、ギルド長の責任になって現世の不満のはけ口はずか、むしろ重荷になるってね」
「ぐふふ。師匠、お供いたしやす」
永久に悪い顔が伝播した。
どうやら着いたみたいだそ。解は大通りに面したレンガ造りの店を示す。店には変身ベルトのマークを焼印した木看板がぶら下っていた。
カラン、カラン。
「いらっしゃいませ!」
「「っ……」」
強欲商人ゴウがハエのもみ手で店の奥から登場。お出迎えである。
「先日、思わぬ大金が転がり込んだもんで、この店を買収しやした」
次元大蛇のS級魔石を使ってチンケな行商人から、城塞都市の大踊りに店を持ついっぱしの商人になってる!?
と言うのが永久の感想。
「金、足りたのか」
「そりゃもう。A級ライセンスを持つ冒険者二人を上顧客に持つって言えば銀行なんてチョロいもんですよ」
後ろに並ぶ十人ほどの従業員の顔が引きつっている。おそらく前経営者を金の暴力で追い出して手に入れたのだろう。
「御用は変身ベルトですよね。そりゃもう色々とそろってまっせ。おい、説明して差し上げろ」
モブで使いっぱ扱いの小物が、パワハラ店主になってる!?
永久は眉を寄せて微妙な顔をする。
背中を押され、いやいやそうに前に出て説明を始める女性店員。
色々なベルトを巻いて変身ポーズを決める解と永久。意外と楽しい。
「昆虫系だけじゃなくて哺乳類系や海洋生物系なんかもあるんだな」
「師匠、タコとかもありますよ」
「っ……」
童女が持つそのベルトを見て女性店員、顔を赤らめて気まずい顔。
「どうかしました?」
解はタコの変身ベルトに興味津々。
「いえその、そちらは戦闘用と言うか、まあ、戦闘は戦闘用なんですけど、貴族の男性の夜の戦闘用で……」
女性店員消え入りそう。
「あぁ……、そういうこと。葛飾北斎やな。江戸で会ったことあるよ、私。あいつ、変態の妖怪だから」
千年妖狐、永久の江戸実体験爆裂。
「と、永久さん。解さん困ってますけど……」
とりあえず商売の邪魔と悟った強欲商人ゴウはタコベルトを取り上げて店の奥に。
気を取り直す解と永久。切り替えの早さに店員呆然。
「師匠、全身鎧でサイズ調整もないし、着替える必要もないから超便利ですね」
「ギルドの冒険者が軽装なのはこういうことか」
「パーティで変身をきめたら、もう特撮戦隊ですね。現世の中二病は涎たれ流しですね」
「永久様、こういったものもございますよ」
会話の流れが変わり、なにやら商品を褒められて嬉しくなってきた女性店員に笑顔が戻る。
「キラキラ魔杖!」
「こちらをおへその位置にかざして変身すれば、魔力が体内にチャージされます。魔導士や魔法使いはこちらが人気です」
永久はそれを借りて少女アニメの変身ボースを決める。
「師匠、ヒラヒラスカート!」
「火の魔力防御機能付きです。魔石をプラスすることで身体強化、聴力強化、毒耐性。様々な機能をお付けできます」
女性店員、すっかりどや顔。A級冒険者と言えど、所詮、なりたての田舎者。お上りさん相手は知識マウントがとれるので楽しいことこの上ない。
「なるほど。魔石の特性を合わせてカスタムできるってことだな」
「魔石強化した剣や盾などの単品もございます」
後ろに控えていた職人らしき男性職員が魔石をはめ込んだ剣を解に差し出す。
「およよ。変身がとけたです」
振り向くと永久の姿が元に戻っている。
「効能にもよりますが持続時間はE級魔石で約十分、D級で約百分、C級で十六時間と言ったところです」
職人男性が説明する。
「短いな。ダンジョン探検で魔力切れになったらどうするんだ」
「替えの魔石を持ち歩くか、魔物を倒して補充します」
「なるほど。B級やA級魔石を使ったものを見せてくれ」
「っ……」
職人男性は下を向いて答える。
「B級、A級は帝都トキオに持っていかれるので……。それにこの城塞都市サーイの冒険者ギルドでA級はギルド長だけですから」
解は目を閉じて、店内の魔石の気の流れを調べる。小粒なものだけだが量はそれなりにありそうだ。
「工房を見せてくれないか」
「素人の方にはちょっと」
「店長、おい、そこの強欲商人ゴウ、お前だよ」
「だんな、脅さないでくださいよ」
「銀行からチョロっと金を借りる時に俺らの名前を使ったよな」
「はい、申し訳ございません」
「なら、永久と俺はこの店の共同オーナーってことだよな」
「っ……」
強欲商人ゴウ、タジタジ。
「ってことで工房に案内してくれ」
解は工房に入ると勝手にズカズカと歩いて、魔石を収めた金庫を見つめる。
スチャ。
妖刀『鬼神解』を鞘に納める音が微かに響く。
鋼鉄の金庫、真っ二つ。
ザ、ザー。
中から小粒の魔石が流れ出す。
解は両手でそれをすくい取り、手を合わせる。
「んぐっ」
解の手から青白い炎が上がる。
コネコネ、ギュッギュッ。にぎにぎ。
「えっ!」
「ほれ」
押しつぶされて一つになったこぶし大の魔石を職人に投げる。
「次元大蛇のS級魔石はこんなもんだったよな」
クズ魔石がS級魔石に変わった瞬間だった。
「師匠、おにぎりじゃないんですから。無茶しいですね」
商人ゴウの頭の中の強欲レジスターは再びフル回転。
チーン!
これはもう錬金術と変わらない。帝都トキオの出店ももはや夢にあらず。
「くっ……」
解は額を抑えて作業テーブルに寄りかかる。
「師匠、闘気を使い過ぎました?」
「いや、魔石の中の気を固めたことでちょっとな。集合気の残留思念みたいな異物が流れ込んできて……。心配ない」
「誰かの残留思念ですか?」
「どうやらこの世界の魔石は自然発生的に生まれるんじゃなくて、意図的に作り出されている感じがするな」
「誰かが魔物を作り出してバラまいているってことですか」
「そうらしい」
解の瞳がギラリと光った。




