07-13 これっぽちも興味なんてありませんよ
地龍の魂を吸った鬼神解、ピエロ男邪の魂を吸った鬼神邪、黒ローブの男瘴の魂を吸った鬼神瘴、歌舞伎男妖の魂を吸った鬼神妖、白武道着姿男闘の魂を吸った鬼神闘、そして今、草薙剣の中で火龍の魂を吸った鬼神創。六振り、六魂揃い組の力を得た神器、草薙剣。
見た目はただの鉄の剣だが、我流六気操術を生み出した天乃解は、草薙剣を握った瞬間理解した。
「いける。これなら繭の全身に転移したガン細胞を消せる。俺の六気がそう告げている……」
解は瞳から零れ落ちる熱い涙を隠さなかった。
「師匠……。良かったですね。本当に……、世界が師匠の神の力をどんなに忌み嫌おうとも……師匠について行きますよ」
永久は尻もちをついて項垂れる陰陽師達を見回す。
「解、終わったのか」
富士山の地下大空洞の溶け固まった鉄扉の上に息を切らして立つ冨士岡総理。その横にちょこんと立つ吉澤繭。
「ああ、これから始まるんだ。おいで繭……。繭、蝶になる時がきたぞ」
解の涙顔は養護施設で繭にだけ見せた意地っ張りの幼い顔そのものだった。
吉澤繭は解の元へ駆け寄り飛びつく。
解は両手を広げてそれを迎え入れる。
「我流六気操術、六神、六柱建立」
神器、草薙剣を繭の背中に回して抱き合う解と繭の足元に六芒星の光がはしる。
立ち上る、薄桃色、白、赤、赤黒、黒、紫の光の柱。
妖気神、月夜の桜の着物を纏ったショートカットの女児、化が笑顔を浮かべる。
創気神、純白のレースドレスを纏ったストレートヘアの女、児天が笑顔を浮かべる。
闘気神、深紅のチャイナドレスを纏った二つ団子ヘアの女児、仙が笑顔を浮かべる。
瘴気神、赤黒いローブを纏ったカーリーヘアの女児、病が笑顔を浮かべる。
解気神、漆黒のワンピースを纏った前髪パッツンの女、児凪が笑顔を浮かべる。
邪気神、紫のゴスロリ衣装を纏った縦巻き髪の女児、狂が笑顔を浮かべる。
「最終形。我流六気操神」
ただの鉄の剣だった神器、草薙剣が優しく光り、繭の背中で蝶の羽と化す。
ふわり、ふわり。
神の羽に包まれて繭の全身に広がる黒い闇、彼女をむしばむガン細胞が消えていく。
ふわり、ふわり。
富士山の地下大空洞に広がる光の鱗粉。
気力を使い果たして尻もちをついて項垂れる陰陽師達の力が戻る。
コツン。
コツン。
コツン。
コツン。
コツン。
コツン。
役目を終えた草薙剣は六振りの妖刀に戻って床に落ちる。
「永久、繭。戻るぞ、火の街、城塞都市コーフダンジョンの十一階層『奈落』の隠し部屋へ」
解はちょっと照れた顔で繭を抱きかかえていた両腕をほどく。
「師匠、律儀ですね。妖刀 鬼神創を如月創に返すんですね」
永久は苦笑い。
「借りたものは返すのが大人の基本だぞ」
解は六本の妖刀を拾い上げながら告げる。
「師匠。師匠の真面目な顔はけっこう男前ですよ。ふふっ」
永久はニッコリとほほ笑む。
解はその言葉、土蜘蛛の前に聞いたのを思い出す。
「永久、お前に俺の我流六気操術を伝授してやろうか。陰陽師の式神の術だけじゃ世界を救えないぞ。火龍と戦って理解しただろ」
解は永久の瞳を見詰める。
「えっ、私、師匠の我流六気操術に、これっぽちも興味なんてありませんよ。陰陽師の大家、安倍晴明の娘ですからね。千年かけて磨いた陰陽道は、まだまだ先があるんですよ」
永久はニヤリと笑う。
「そっ、そうなのか?じゃ、何で俺のこと師匠で呼ぶんだ。俺の我流六気操術を習いたいからじゃないのかよ」
解はちょっと焦る。
「あっ、それですね。師匠は私のラノベとアニメ、オタク道の師匠ですから。尊敬を込めて『師匠』って呼んでるんですよ」
永久はケラケラと笑う。
「……」
解は黙り込む。
「解君。解君の負けですね。一本取られましたね。ふふふ」
解と永久。そんな二人のじゃれ合いを微笑ましいと思う繭だった。




