07-12 ガルルルルルルルル、ルルル、ルル……。
富士山の地下大空洞へ向かう地下道の中を解と永久は戦闘モードの俊足で走る。
「永久、到着したら一気に制圧をかけるぞ。エルフ族特製の超高級回復ポーションで何とかしたが、我流六気操術の究極奥義、六神融合、須佐之男はここだけの話、ごっそり気を持ってかれる。もって三分だ。陰陽師の皆さんの気を分けてもらうのも期待できないしな」
「師匠、国民的特撮のアレと同じですね。あっちは説明が無くてイラっとしましたが、なるほど気ですか。納得です」
永久は頷く。
「戦闘に集中できるように、奴の動きを止めろ」
「了解です」
「冨士岡総理の鈍足に付き合ったら間に合わない。遅れて到着する繭には陰陽師達の回復を、冨士岡総理には事後処理お願いする」
「二ヒヒ、冨士岡総理を証人にして、報告書の山を押し付けるんですね。ギルド長の髭マッチョに、はぐれサラマンダー退治の報告書を押し付けたのと同じですね」
解と永久はニヤリと笑う。
「火龍の気が近い。六神、六柱建立。六神融合、須佐之男」
走りながら我流六気操術の究極奥義を発動する解。
足元に六芒星の光が浮かび上がり、並走する。
立ち上る、薄桃色、白、赤、赤黒、黒、紫の光の柱。
妖気神、月夜の桜の着物を纏ったショートカットの女児、化が、
創気神、純白のレースドレスを纏ったストレートヘアの女、児天が、
闘気神、深紅のチャイナドレスを纏った二つ団子ヘアの女児、仙が、
瘴気神、赤黒いローブを纏ったカーリーヘアの女児、病が、
解気神、漆黒のワンピースを纏った前髪パッツンの女、児凪が、
邪気神、紫のゴスロリ衣装を纏った縦巻き髪の女児、狂が、
解の丹田へ取り込まれて全身にみなぎる。
黄金色に輝く気を纏った須佐之男、天乃解。
解は神器、草薙剣を抜きはらう。
前方に見えてくる巨大鉄扉。
ズサッ!
草薙剣が煌めき、扉は真っ二つ。
須佐之男と化した解が扉を蹴り上げる。
ズッガーン!
厚さ三十センチの鉄扉が内側に倒れ込む。
舞い上がった土煙がゆっくりと晴れていく。
鉄扉の上に立つ解と永久。
「待たせたな」
解の言葉に力なく顔を向ける妖魔対策本部、陰陽師頭領 村井健。
「つっ、追放したはずの天乃解……。そんなバッ、バカなぁ……」
村井は後ずさる。
「お待たせ、火龍ちゃん。ネンネの時間だよ」
ニコッと笑ってから真顔になる永久。
妖気が揺らめき狐耳がピンと立ち上がる。扇のように広がる九尾。
「全式神、緊急召喚!変化、属性ビーム砲」
その瞬間、一本の尻尾を残した八本の尻尾が射出され、火龍を取り囲むように飛翔する。
「包囲飽和攻撃!」
木属性式神、蝶花が放つ毒霧ビームが、
土属性式神、豊花が放つ炸薬ビームが、
水属性式神、翡花が放つ高圧水ビームが、
金属性式神、月花が放つ水銀ビームが、
火属性式神、焔花が放つ獄炎ビームが、
雷属性式神、雷花が放つ電撃ビームが、
風属性式神、風花が放つ真空ビームが、
氷属性式神、雪花が放つ冷凍ビームが、
巨大な火龍の全身を突き抜ける。九尾永久、渾身の攻撃がさく裂した。
「っ……。体を貫いたのにデカすぎてかすり傷!?まっいっか。陽動だし」
永久は火龍に向かってあっかんべー。更に振り向いてお尻ペンペン。尻尾フリフリ。
グガアアアアアアアァー。
怒り狂う火龍の咆哮。
その巨大な口から吐き出されるマグマが永久たちの乗った鉄扉をドロドロに溶かす。
が、二人の姿はすでにそこにはない。
瞬時に横に駆けた永久の視界の先。
地下道の天井ギリギリまでジャンプした須佐之男こと天乃解。
「うりゃー」
両手で握る草薙剣が、神器の力を持って火龍の固い外角を貫き、眉間に突き刺さる。
ズブ、ズブ、ズブッ!
解は草薙剣を押し込む。
我流六気操術の妖気・創気・闘気・瘴気・解気・邪気が火龍の体に流れ込む。
ガルルルルルルルル、ルルル、ルル……。
火龍の巨大な瞳にやどった光が消えていく。
火龍は光の粒となってクルクル回りながら集約されて吸い込まれるように草薙剣の中へと消えた。
解と永久を異界へ追放した陰陽師達は、次々と力尽きてヘナヘナと床に尻もちをついたのだった。




